元少年達の償い ④

 東間は、プラモデルを作っていた。

 144分の1スケールの人型機動兵器の物である。

 枠、専門用語で言うとランナーから、パーツを切り出し、その時の接続部分に出来る切断した跡、専門用語で言う所のゲート跡をヤスリで丁寧に消していた。

 夜にこれをやるのが東間の習慣だ。

 そんな時、机に置いてあったスマホがなる。


「んん……なんだこんな時に」


 東間が画面を見ると、それは碧だった。


「ああ、碧? どうかしたか?」


 電話から聞こえた碧の声はとても弱々しく、東間はすぐ、に異常を感じた。


「助け……て」

「碧? どうした?」


 碧からの返事は無い。

 東間は急いで外へ出て、自転車に乗る。。行先などは決めていない。とにかく、碧が行きそうな場所を探し回るしかない。

 東間は最初に、喫茶店サンライズに向かった。

 しかし、店内は暗く、誰かがいる様子でもない。

 東間はすぐに別の場所へ向かう事にした。

 次に着いたのは日向署。

 東間は途中他の警察の人に止められたが、そんなのを気にせずに刑事課の所へ駆け込んだ。

 そこには、野菜ジュースを飲んで作業をしている八尾の姿があった。


「八尾!」

「ふぁ〜、どした東間」

「碧はどうした?」

「ああ、帰ったよ」

「……後、あいつの行く所は」

「ん? どうしたの?」

「碧がヤバいんだよ。八尾さんも出来るだけ探してくれ、頼む!」

「えっ、ああああわかった! 署にいる奴ら全員動かしてみるわ」


 八尾は急いで残りの刑事を呼び、それを待たずに東間は日向署から出ていった。

 東間は自転車のペダルを全速力で回し、今度は日向塾に向かう。

 既に、東間の太ももは乳酸でいっぱいになり、息もハァハァと荒れている。

 深呼吸して、東間は日向塾のある4階へ向かった。

 鍵が開いていたのを見て、東間はすぐに碧が居ると考え、突入する。東間は教室を片っ端から開けて、中に碧がいないか探した。

 そして、最後の教室。

 碧が午前中、笹辺綾子の事情聴取をしていた所だ。

 そこには、碧が居た。


「碧!」


 碧の周りには、葉が散らばっており、先日起きた事件とほとんど現場が似ていた。


「おい、碧! しっかりしろ!」


 その時、後ろから殺気を感じ、東間は咄嗟に避けた。

 先程東間がいた所には、鎌が振り下ろされている。

 そして、目の前には剪定鋏と鎌を持つ黒い怪人の姿があった。


「あんたがこの事件の黒幕って所か」


 東間はすぐに影乃海賊に変身し、カットラスを構える。

 黒い怪人は東間が変身したのに驚いたのか、少し動揺をし、黒い怪人はすぐさま逃げてしまった。


「あっまててめえ」


 影乃海賊はすぐに追いかけるも、日向塾を出ると、黒い怪人の姿は無くなっていた。

 影乃海賊から変身を解いた東間はすぐに碧の元へ向かった。


「おい、碧! 大丈夫か!」


 東間は碧の肩を揺らすも、彼女からの返事は無い。

 東間はすぐさま八尾に連絡をする。


「八尾! 碧が居た。日向塾だ。早く!」


 すぐさま日向塾の前にパトカーが数台止まり、日向塾の周りは赤いパトランプの光でいっぱいになる。

 碧はすぐに病院に搬送され、東間はその場の状況を伝え、すぐに病院へ向かった。


「碧……」




 日向病院にて東間は廊下の長椅子でじっと待っていた。

 碧の容態を1秒でも1分でも早く知りたい。

 東間は不安でたまらなかった。

 すると、東間を呼ぶ声がした。


「……東間くん」

「北崎……」

「碧ちゃんは……」

「まだ検査中だとよ」

「そうか……」


 北崎は東間の隣に座る。


「東間くん」

「……どうした」

「そろそろ、君に話すべき事がある」

「なんだよ、こんな時に」

「実は僕……

「えっ……」


 東間はその衝撃的な事実に、手に持っていたスマホを落としてしまう。

 その事に気づけないほど、東間は唖然としてしまった。



 翌朝。

 東間は病院のベンチで眠ってしまい、朝になってしまったのに驚いた。

 北崎は居ない、おそらく帰ったのだろう。

 東間は病室に向かう。

 昨日看護師から聞いた番号の病室のドアを開けると、そこには、目が覚めた碧の姿があった。


 「碧!」


 東間はすぐに碧の元に駆け寄る。


「大丈夫か?! 怪我とかしてねぇよな!」


 碧は驚き、東間を怯えた目で見ていた。


「なんつー顔してんだよいつもムスッとした顔してんのに急にハムスターみてぇな顔」

「誰です?」

「え?」

「あの……誰ですか?」

「あ……碧」

「碧って……私の事……ですか?」


 南碧は、記憶喪失になった。




同時刻、日向塾のあるビルの路地裏。

北崎拓は、とある人物を呼び出していた。


「……御陵さんですね」

「北崎さんですか? 警察がなんの用で? 一応私は、事情聴取受けましたよ」


 御陵涼はカバン片手にやってきた。


「まぁそうなんですが、警察としてあなたに聞きたいことがありまして」

「そうですか」


そう言うと、北崎は懐に隠していた右手から、ある物を取り出した。


「おやおや、いきなり過ぎませんか?」

「黙れ、御陵涼……いや、影乃商人」

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SHADOW POLICE 椎茸仮面 @shiitakekamen

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