第4話

「ねえ、ひいばあちゃん、お嫁にきたころ、倒れた時、二階で一人寝かされていたって、本当?」

私はリビングにもどるなり、祖父母にたずねた。祖父母はしばらく顔を見合わせていたが、

「そうだよ。本当のことだよ。」

と、祖父が言った。静かな口調だったが、怒りが込められているような気がした。

「私がお嫁に来た時には、征史さん、お義父さん、お義母さん、征史さんのおじいさん、五人だけになっていたけど、昔は大家族で、大変だったと思うわ。」

祖母が控えめに付け加えた。

「確かに、農家の嫁としては役に立たなかったんだろうけど、だからと言って、母さんに対する扱いはひどかった。」

そう言うと、祖父は口をつぐんでしまった。

 それ以上、聞かない方がいいような気がした。その日の夜、母が迎えに来てくれると、私は母が運転する車の中で聞いてみた。

「ひいばあちゃんがね、お嫁に来た頃、よく倒れたんだって。それで、二階に一人寝かされていたんだって。ひいじいちゃんが、家族に内緒で樫の木を登って、ひいばあちゃんに会いに来たんだって。びっくりしたよ。本当のことなんだって。」

「おじいちゃん達にしつこく聞くんじゃないわよ。人にはね、つらい思い出があるんだから。」

母に釘をさされてしまった。








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