第23話
僕は何と声を掛けたらいいのだろうか。
霧姫さんの過去を聞いた。
どうして彼女が頑なに友達を作らないのかを理解した。けれど、僕は何と彼女に声を掛ければ彼女を救えるのか分からなかった。
「.........ご、ごめんなさい。泣いてしまって」
「.......い、いえ。大丈夫です」
「見損なったでしょ?こんな私の事を」
「そんなことは無いです。それだけは決して」
霧姫さんが悪いなんてことは絶対にない。
けれど、それを霧姫さんに言っても霧姫さん自身がそう思ってしまっているためそんなことを言ったところで何の解決にもならない。
それに、霧姫さんはその人たちを責めて欲しい訳でもないし犯人捜しをしてほしい訳でもないだろう。
僕は何ができる?彼女に何をしてあげられる?
「赤塚君、私はね…あなたのことが好きなの」
「…え!?」
急な告白に僕は驚いてしまう。
「だけれど、こんな私には優しいあなたには相応しくないから。だけれど気持ちだけは伝えさせてください」
「そ、そんなの…」
「自分勝手でごめんなさい。この告白も自己満足でしかないこともわかってるから」
震える手と溢れ出る涙を堪えてどうにか笑顔を浮かべようとしてくれている霧姫さんに胸がキュッと締め付けられる。
僕は彼女のことをどう思っていた?
最初は冷たい印象で何者も近づけさせないようにしているそんな印象だったけれど、接していくうちに彼女の優しさや、笑顔を見た。
プレゼントをあげれば喜んでくれたし、褒めれば恥ずかしそうにして顔を伏せたりもしていた。
彼女を知れば知るほど、普通の女の子のように見えたし、霧姫さんを知りたいって思うようになった。
僕は何て答えれば良い?僕は霧姫さんをどう思っている?
『冴姫を助けてあげて』
ふと、そんな声が聞こえた。誰が言ったのかも分からないし、幻聴かも知れない。
僕は…彼女を救うのではなく…寄り添う。
「霧姫さん、僕はあなたの事が好きです」
*************
「…え?」
彼の突然の言葉に私は固まってしまう。
「笑顔が可愛いのが好きです、恥ずかしそうにしている顔も素敵です」
「あ、赤塚君?す、少し待って。そ、それって本当なの?私の話を聞いて同情した訳では無くて?」
「はい。信じられないのならもっと言いましょうか?プレゼントをあげた時の嬉しそうな顔が…」
「分かった、分かりました。で、ですが私には…あなたと付き合う権利なんてなくて」
私は美亜を置いて幸せになることなんて…
『冴姫、もう、良いんだよ。もう良いの』
その時声が聞こえた。それはよく聞いていたあの美亜の声だった
「み、みあ?」
『あなたは、あなたの幸せを掴んで。私の分もあなたが幸せになってくれるのが私の望みだよ。ごめんね、冴姫』
「ち、違うの私こそ、ごめんなさい、気づいてあげられなくて、何もしてあげられなくて」
『貴方は十分幸せになる権利があるの。冴姫まで不幸になったらそれこそ私は嫌だな』
「みあぁ…」
『泣かないの、未来の彼氏の前でしょ?不細工な顔になっちゃってるよ?』
「私、いいの?」
『うん、良いんだよ。私はあなたの親友だからね。許してあげる』
姿は見えないけれど、美亜が茶目っ気たっぷりに笑った顔が想像できた
「みぁ、みぁ…」
『じゃぁ、もうこれで私は未練が無くなるし、消えようかな。冴姫、これからの人生、幸せに一生懸命生きてね。自殺なんかしたら許さないから』
美亜の声はそこから聞こえなくなった。
「霧姫さん」
「…うん」
さっき聞こえてきた声も都合のいいものかも知れない。
「僕と、付き合ってくれませんか?」
だけれど私は…
「はい、よろしくお願いします」
地獄でも天国でも死んでから彼女に無理やりにでも会って、目一杯怒られて話し合おうと思う。
私が幸せに一生懸命生きたお土産を持って。
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