第14話 疑惑

「マッシュ、いるか~?」

 治療室の扉を開け、マッシュを呼ぶ。

「ま、マッシュ様はまだ治療中だ!」

「荒々しい真似をするな!」

 二人が立場を分かっていないようなので、軽く脅しておくことにする。

「うるせえ、ぶち殺すぞ」

 もう少し気の利いた脅し文句を考えておけばよかったかもしれないが、取り巻きにはこの単純な脅し文句が強烈だったらしい。

「「ひいいいいい‼」」

 取り巻きたちはジタバタと暴れだすが、構わず引きずってマッシュの前に突き出す。

「マッシュ、起きろ」

「んん……」

 軽く身体を揺すると、ゆっくりとマッシュは覚醒した。

「スペルビアか。どうした?」

「た、助けてくださいマッシュ様!」

「スペルビアに襲われました!」

 取り巻き二人は最後の悪足掻きに、俺に罪を擦り付けるつもりのようだ。

「スペルビアはそんな奴ではないし、何よりそんなことをする理由がない。そうだな? スペルビア」

 流石マッシュ。疑うようなら俺の記憶を魔法で見せてやろうかと思ったが、その必要はなさそうだな。

「そ、そんな!」

「我々より、スペルビアを信じるというのですか⁉」

「ああ。スペルビアはライバルだからな」

 好敵手と書いてライバルって奴か。マッシュさえよければ仲間に誘おうかと思っていたが、やめておこう。マッシュは嫌がるだろう。

「そうだな。俺たちは対等だ」

 おっと、大事なことを忘れるところだった。

「だが、仲間を傷つけたのは許さない」

「そうだな。すまなかった」

 マッシュは深々と頭を下げ、取り巻き二人は顔面蒼白だ。


 それからしばらくして、マッシュは取り巻き二人と縁を切ったと報告してきた。

「よかったのか? 仲間がいなくなったぞ?」

 俺たちは決闘場でレベルを上げ、経験を積み、そろそろ出発というときになって、マッシュのところに顔を出した。

「気楽でいいさ。それに、俺は一人でも強い」

「俺に一度も勝てないくせによく言う」

「それを言うなよ」

「ルビア、準備ができました」

 荷物を纏めていたカザリだが、準備が終わったようだ。

「いよいよだな。魔族領」

「ああ」

 懐かしいな。どれだけ発展しているか楽しみだ。

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