第13話 誘拐

 宿屋でしばらく仮眠をとり、起きると、まだ二人は帰っていなかった。

 妙だな。流石に遅すぎる。親馬鹿かもしれないが、保護者である以上は安全は保障しなければな。

「《探知》」

 探知で二人の場所を割り出す。普通ならそこまで細かくは分からないだろうが、二人は俺が作った魔法道具を装備している。それを探せば簡単だ。

 どうやら決闘場にいるようだな。だが、今日はもう戦わないと言っていたはず。

「《遠見》」

 魔法で二人の状態を確認する。どうやら縄で縛られ、猿轡をされているようだ。

 二人の視点にすると、マッシュの取り巻き二人の顔が見えた。

「これは、まさか……」

 二人の場所まで《転移》で飛ぶ。


 飛んだ場所は決闘場のまだ入ったことのない区画。檻がたくさんあることから、奴隷を扱う区画だろう。

「さて、二人は……」

 再び《探知》を使い、二人のより正確な場所を割り出し歩く。

「ヒヒヒ! さっきはよくもやってくれたな‼」

「観念しろ! 誰も助けになんて来ないぞ‼」

 調子に乗っている取り巻き二人の肩を叩き、俺の存在に気付かせる。

「な、なな……」

「なんでお前が」

「さて、とりあえず話し合おうか」

 俺の配下であるエルマとカザリがマッシュの取り巻きであるトリーとマキーに拘束されている。

 マッシュはこんなことはしないだろうから、おそらく決闘の際の逆恨み、それも取り巻きの独断だろう。

 幸い、まだエルマとカザリは傷付けられていない。今土下座で謝り、マッシュから賠償金をふんだくれるなら許してやろうと思っていたが。

「に、二対一だし、相手は丸腰だ! やれるぜ!」

「あ、ああ!」

 どうやら向かってくるようだ。腰に佩いていた剣に手をやろうとしたので、手を叩き折る。

「ぎゃああああああ⁉」

「そ、そんな馬鹿な⁉ 素手で⁉」

「おいおい、何か勘違いしてないか?」

 まだ無傷の方の取り巻きの顔に自分の顔を近づけ、頭突きをかます。

「二対一だろうが千対一だろうが勝つさ。勇者とはそういうものだ」

 いや、そういうものが選ばれるべきだ。

「遅れてすまない」

 エルマとカザリの拘束を解く。

「このこの、こいつ!」

 エルマは余程腹に据えかねたのか、取り巻きの頭をゲシゲシと蹴り付けている。

「さて、マッシュに責任問題を追及しに行くか」

 腕が折れて激痛にのたうち回るトリーと、頭から血を流しながら気絶するマキーの襟首を持って引きずって、マッシュが治療を受けている部屋まで向かう。

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