エンドロール

佐々木は職員室に呼び出された。自分のデスクで回転椅子に腰掛けながらこちらを向く先生が言った。


「佐々木さん、今回のやつなんだけど。映画は良かったよ?東郷先生の意思もあったと思う。でもね、人の死ぬ瞬間を映画で流すってどうなの?これはフィクションじゃなくてノンフィクションでしょ?東郷先生の意思だってことはわかってるけどね。そりゃ先生たちが確認しなかったのも悪いと思ってる。でも、亡くなったと言うだけでもショックを受ける生徒がいたのに、その瞬間を流すとなるとショッキングすぎやしないかい?なんで流そうと思ったの?東郷先生の意思だから?」


「違います」


佐々木は、二つ返事で答えた。


「じゃあなんで?佐々木さん」


「私たちは映画を成功させなければなりません。単なる思い出作りの動画じゃないんです。映画で人を簡単に感動させいい映画だったと思わせる方法って知ってますか?日本だったら簡単にできます。」


「なに?」


「人なんて、ヒーローが悪者を倒すだけでは感動しません。そこにスパイスがいるんです。単純なことです。本当にたった一つ。それだけ。所詮、人なんか、」


沈黙が一瞬流れ佐々木は少し口元を緩め、目を細め、笑みを浮かべて言った。


「誰かが死ななきゃ感動できないから」




「カット!」

声が響いた。組み立て式の木製の椅子に座り背面には「director」とだけ書かれていた。その男の名は東郷と言う。






東郷健太 河野宮藤太


佐々木美羽 杏冬夜 由美


子守太一 鈴木タツ


吉川蘭 神宮寺若狭


松川カレン 伊藤しずか


石道光 大藤優


東郷真央 松本彩


東郷奈緒 新井菜緒


校長 ミヤモトケン


先生A 鳥島信之


医者 玉宮蓮次郎


看護師 田中まや


神崎先生 寺島昂


五島蘭 城野恵美




〈誰かが死ななきゃ感動できないから〉



fin

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰かが死ななきゃ感動できないから 〜または映画は手の中に〜 睡眠欲求 @suiminyokkyu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ