あさりとうしお

いりこんぶ

第1話


 随分、とおくまで来た気ィするわ。

 流れ流れてぇなんて、ええもんやなかったね。

 あっちこっちぶつかって、ぶつけられて、たまにぶち返して、ぶちのめされもして、なんかそんなんやったわ。今さら恨み辛み言うてもしゃあないから、そういうのは言うつもりもないねんけどさ。

 なんやろなァ。

 死ぬ前に、一回くらい他人に話したい話て、一つくらいあるやろ。

 普段はぽかんて忘れてるけど、たまに思い出して、自分に合わん高い座布団座ってる時みたいに、尻がムズムズする、どうも性の悪い……そういう。喉に小骨が引っかかったような話っちゅうやつや。

 まあ、しょうもない話やねんけど、怖い話と違うから、聴いてくれるか。

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