第33話⁂山根の父親!⁂



 江梨子は、両親がこっそりと話していた、まだ確定した訳でも無い重要な秘密、小百合の父親で和尚さん所有の土地から男性の人骨が見つかった事と、小百合の母佳代が山根の母初枝を殺したらしい。


 この話をじわじわと山根に暴露しようと考えている。

 そして…山根と小百合を完全に引き離そうと画策している。

 

 江梨子もとんでもない娘。それだけ山根に夢中という事になるが、それだけではない。小百合にだけは絶対に負けたくない。


 もし山根と小百合が結婚する事にでもなれば、自分は女として小百合より劣っていた事になる。

 小百合より魅力が無かった事になる。


 プライドの高い江梨子は、あんな女なんかに負けて堪るか!負ける筈がない!そんな自信とプライドと自負があり絶対負ける訳にはいかない。



 ◆▽◆ 


 江梨子はアルバイト先のレストラン「涼風」でシフトが一緒になった山根に言った。

「今日帰り一緒に帰らない?小百合の事で重要な話があるの!」


「あぁ~良いヨ」


 仕事終わりに2人は、最寄り駅前の喫茶店で夕食を食べながら、問題の話を始めた。

 

「私ね?山根君が小百合と付き合っているじゃない?……でもね?……後で後悔するといけないから……話すけど……小百合の家の土地から……人骨が……見付かった事件知っている?……この事は公にはなって居ないのだけど?……心配だから山根君にだけは話すけど?」


「……何故そんな重要な事が世間に知られていないのさ~?可笑しいじゃないか?」


「だって~?うちの近藤建設だって、重要な取引先の大家さんを激怒させたくないじゃないの……そんなことしたら近藤建設の取引先を、失う事になるかも知れないからそんな事言わないのよ」


「なるほどね。俺だって小百合ちゃんの不利になる事は絶対に言いたくない」


「そうそう、この話は誰にも話さない方が良さそうね……あぁ……それから……これは絶対に話さなくてはと思ったのよ……実は…実は…小百合ちゃんのお父さんと山根君の母親と言われている初枝さんて人の間に生まれたのが、山根君だと言う事を聞いたのよ……だから……こんな事を言ってはなんだけど……異母兄妹って事でしょう山根君と小百合は?……だから……お付き合いは絶対に良くないと思って……」


「ワッハッハッハ~!ワッハッハッハ~!それは全然違うよ。でも?気づかいありがとね!」


「何よ~それ~?それから~?小百合の母佳代さんて人が、あなたの母初枝さんを殺害したってもっぱらの噂だったそうよ!」


「クッフッワッハッハッハ~!ワッハッハッハ~!母は生きてます。心配ご無用!」


「一体どういう事ヨ?」

   

 そこには人に言えない複雑な人間模様が隠されている。


 実は…小百合と江梨子が恋焦がれている『山根友樹』は、あの卑しい修行僧山根と初枝の間に生まれた子供だった。

 

 初枝の世話をするお手伝いさんが度々辞めるので、暫く寺の茶室でお世話になって居た初枝は、容態が思わしくないという事で、和尚さんが心配して読経にやって来ていた。

 その時に読経(おきょう)が効いたのか、茶室で眠り付いた初枝の布団敷きをしたあの夜の僧侶こそ『山根友樹』の父なのだ。


 まさかその様な卑しい行動を取るとは、夢にも思わなかった和尚さんはその時に、修行僧山根を大層怒って破門にした。

 仮にも仏に帰依する僧侶が、一番有ってはならない檀家さんに手を出すとは、到底許されぬ事。

 まぁ当然と言えば当然の事。

 

 だが、和尚さんも、『こんなきちがい』とは言っては見たものの、内心は魅力的な初枝が、茶室に来てくれることが何よりもの喜びだったのだ。

 その為、善意を装い初枝を茶室に寝泊まりさせていたと言っても過言ではない。


 それと嫉妬深い妻を、黙らせて美しい初枝を自分の身近に置く為に「あんな気の狂った女だが助けなくては!」その思いを前面に押し出して、妻の目をかいくぐって初枝を狙っていたのだ。


 そんな大事な女を、たかが修行僧如きに奪われた怒りは相当な物。

 怒り狂い修行僧山根を叩き出した。


 それでも…確か、あの時初枝は、修行僧山根の事を大層嫌がっていたのでは?

 良く受け入れてくれたものだが?


 イヤ!受け入れた訳では、絶対にない。

 一方的に山根が強引に抱いただけなのだ。

 

 ◆▽◆

 付きっ切りで初枝の世話をしていたのは誰有ろう、僧侶の山根なのだ。

 

 当然、魅力的な女性である事には変わりはないのだが、『それより何より男に翻弄され何とも気の毒に……』このような哀れな姿に最初は同情から、次第に魅力に取り憑かれていったのだ。

 

 それは始終一緒に居れば若い男だから、これだけ魅力的な女性を目の前に、ついつい我を忘れてとんでもない行動を取ってしまっても致し方ない。


 ✶統合失調症

 【急性期:幻覚、幽霊や怪獣が襲い掛かって来ると言って逃げる。幻聴が聞こえ、「悪口を言われている。薬と言って毒を飲ませ殺そうとする」この様な事を言って暴れまくる。

消耗期(休息期):何もやる気が起こらず、着替えから、お風呂に入る事まで出来なくなる】初枝は、薬物療法や心理社会的療法を行っている。

 

 急性期には、幻覚幻聴に悩まされ暴れ出し、消耗期(休息期)には、相反して何も出来なくなるので、この山根が付きっ切りで世話をしていた。


 こんな状態が続けば、おのずと目に触れないでおこうと思っても、美しい初枝の身体を否応が無しに見て触れてしまわなくてはならない。


 それはどういう事かと言うと、何もやる気が起こらず、着替えから、お風呂に入る事まで満足に出来ない。それを全て山根が面倒を見ている。

 

 若い男がいくら仏に帰依する立場でも有っても、目の前に何とも美味しいごちそう初枝の美しい女体を拝めさせられ続けたら、尋常な精神状態ではいられない。

 

 抑えきれなくなり、気の触れた状態の、まともな精神状態ではない初枝を、何度か欲望に任せて強引に抱いていたのだ。


 じゃ~いつ初枝が、お腹に身籠っている事が分かったのか?


 

 それはある夜の事、いつもの様に和尚さんが、初枝の様態を案じて茶室に行った時の事だ。

 真夏の夜の事、夜と言っても、蒸し蒸し寝苦しい夜の事だった。


 和尚さんが茶室に入ると、暑かったせいなのか、初枝が着物をはだけて何とも淫らな格好で、眠りに付いているではないか?


 夜の月明りに照らし出された青白い初枝の、余りにも美しいとろける様な綺麗な身体に、今まで制御していた欲望に歯止めが効かなくなり、とうとう初枝の身体を思わず興奮して身体の隅から隅まで舐め回してみた。


「ああアア良い女だ💛」


 その時、灯籠の陰に隠れて様子を伺っていた佳代が、慌てて茶室に忍び込み…………。

「あなた————————ッ!何をしているのですか!」


 鬼の形相で和尚さんの一部始終を恨めしそうに眺めていた。


「ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭この淫乱女、どれだけ男を誑かす気、許せない‼殺してやる!」

茶室に有った包丁を取り出して初枝目掛けて飛び付いて来た。


「オッオイ❕ヤッヤメロ————————ッ!」

 

 和尚さんが懸命に止めに入るが————

 佳代が初枝に飛び付いた時に、偶然着物がはだけてお腹周りが”バサ————ッ!”と見えた。

 その時に・・・何と・・・お腹が・・・かなり膨らんで


 これは大変!


 初枝はどうなるのか?















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