第8話⁂山根友樹は⁈⁂

 

 なんと憧れの通称『加賀王子』山根先輩と、アルバイト先が一緒だった江梨子は、

休憩時間等に大学も一緒なので、自然に話すようになっていた。


「私ね、山根先輩と同じテニスサ―クルの小百合ちゃんと、中学生の頃からズ~ッと友達なのよ」


 「今度さ~小百合ちゃんも誘って海に行こうよ。そうだサ―クルの一人でテニスの抜群に上手い北村も誘ってみるよ」


  こうして待ちに待った海に行く日がやって来た。


  若い4人組は、空と海の青さが一層濃くなる真夏の「千里浜なぎさドライブウェイ」を山根の愛車スカイラインで突っ走っている。


「キャッホ—」


「ウッフッフッフ—」


 愛車スカイラインのカセットテ-プからは、あの当時絶大な人気を誇ったカーペンタ-ズの「トップオブザワールド」が鳴り響いていた。


 ♪such a feelin,s comin………………♬🎶♪♪


 それでも…せっかくやって来たは良いが、雨にでもなれば残念な事と思いながら、ラジオに切り替えた。


 天気予報を聞こうとラジオに切り替えると、あの当時の絶世の美女である、それこそ昨今流行りの韓流スターも顔負けの美女あべ静江の「コ-ヒ—ショップで」がこんな真夏に到底相応しくない、上品で尚且つ、あの時代を象徴する、何とも昭和レトロな雰囲気を醸し出しながら流れてきた🎶♪♪


  ……海に付くと早速4人は、水着に着替え真夏の海に飛び込んだり、砂浜を散歩したり、カキ氷を食べたりと灼熱の太陽を背に、この真夏の海を謳歌している。



 その内に、どちらからともなくカップルらしきものが出来てきた。


 テニスの抜群に上手い北村は、一目見た瞬間から江梨子ちゃんがタイプだったらしく、強引に江梨子を誘い出して高台の景色を見に行こうとしている。


 江梨子にすれば迷惑な話、こんなに思い焦がれた山根先輩を目の前に、強敵小百合と2人切りにしておけば何が起きるか分からない?そんな危機感で一杯なのだ。


 高台に上っては見たものの景色もへったくれもない、只々不安で飛んで帰って来た江梨子。


 それなのに、やっぱり2人はいない。

 少しの時間、山根達と離れただけなのに、帰って来ては見たが、山根先輩と小百合はとっくにいなくなっていた。


 一体どこに消えたのか?

 江梨子はアルバイト先が一緒で、最近は山根とアルバイト先からマンションまで送って貰うまでの関係になっていた。


 そして…雨の日には、山根が傘を持っていなかったりすると、何度か相合傘で肩を抱き合って帰るまでになって来ている。


 あくまでも、雨なので、そこに恋愛関係が有って取った山根の行動なのか分からないのだが、江梨子はそんな些細な事にも一喜一憂して、ひょっとしたら私に気があるのではと、ほのかな期待を寄せている。


 そんなアルバイト先での些細な秘め事?が有ったにも拘らず、今度は最大の親友であり、最大の強敵ライバルと、2人で長時間もどこに出掛けているのか、不安で不安で胸が押しつぶされそうな江梨子。



 一方の小百合と山根先輩は走行距離8キロの「千里浜なぎさドライブウェイ」をぶらぶら歩きながら、たわいのない話で盛り上がっている。


「ウッフッフッフ」


「ワッハッハー」


そんな時、小百合は以前から好意を寄せていたが、取り巻きが余りにも多くて聞き出せなかった山根の真実をどうしても知りたくなった。


「山根先輩は本命の彼女が居るのですか?」

 何とも単刀直入に一気に訪ねたものだが、山根は何も臆する事無く答えてくれた。


「僕はね、家庭の事で色々あって………それ所ではないんだよ」


「色々って、例えば?」


 すると今まであんなに明るかった山根の顔色が一瞬何か?……暗い……思い詰めた表情に変わった気がした。


(あぁ~これ以上効かない方が良さそうね?でも…何か人に言えない悩みがあるのなら力になりたい)そう思う小百合なのだ。


「先輩何かあったらこんな私ですが、力になれる事が有ったらいつでも言って下さい」とだけ付け加えた。


 こうしてまたぶらぶらと歩き出した2人。

 すると山根の愛車スカイラインが見えて来た。


「止める場所が無くて、海の家から随分離れた場所に止めたものだな~?小百合ちゃん喉渇かない?」


「ああああ!喉渇いた————ッ!」

 喉が渇いた2人は車にストックしてあった、当時では珍しい外国製クーラ-ボックスの中に入れてあるお茶を取りに行った。

 

 だが、太陽の燦燦と照り付ける太陽の下は熱いので、しばしの間車の中に移動した2人は、エンジンを付けてク-ラ—を効かせてお茶を飲みだした。


 すると朝から動きっぱなしの2人は、エンジンを付けたままいつの間にか眠ってしまった。

 

 ◆▽◆

 余りの寒さに目を覚ました小百合は、山根先輩が風邪を引いては大変と思いカバ—レースのトップスを脱いで、そ~っと山根先輩の身体の上に被せた。


 一瞬身体に触れたのか、山根先輩が目を覚ました。

 

 山根は寒いのとガサガサ音がしたのでふっと目を覚ました。

 起き上がろうと思うと、小百合がトップスを脱いで豊満な肉体を向けながら、被せてくれる仕草を半目を開けて見ていた。

 

 心配そうな表情と豊満な胸元を目の前に、何とも可愛い女だと思う思いと、それ以上にこの美味しそうな胸元を目の前に堪え切れない欲望が襲って来て、頭の中が混濁して小百合を助手席に強引に押し倒してキスをしてしまった。


「ヤッ止めて————ッ!こんな……こんな……こんなのは嫌よ!ワァ~~ンワァワァ~~ン」


 山根の頬を思い切り”ぺシ―ン”と叩き、オレンジに染まる夕闇の「千里浜なぎさドライブウェイ」を小百合は、泣きながら駆け出して行った。


 山根はなんて強引な真似をしたのか後悔しきり、また、それ以上にあの豊満な肉体の小百合を、一人でこんな夕闇に放り出して、もしもの事が有ってはと?慌てて追いかけた。


 その時一瞬では有ったが『大切な女性何としても守らねば!』そんな思いが沸々と沸き上がって来た。


 山根は本当は、江梨子と小百合どっちが好きなのか?


 それから……山根には実は…2人に隠している秘密がある⁈

 それはのちのち………。























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