6-3

 5月の中頃、中間考査があって、終わると一斉模試があった。私は、クラスの2番目だった。1番は東大の理類を目指している子。3年になって、進学希望の子が理科系のクラスと文科系のクラスとで集められていた。


 クラスの中では、私が進学クラスに入っているのを変に思っている子もいたが、中には、2年生の学期末にトップクラスに入っていることをウワサで知っていて、少しずつ話し掛けてくる子も居た。


 模試の時は、私は、第一志望を静岡大と書いていた。まだ、合格可能性は75%以上としてしか出てこなかったが、それでも、私は手応えを感じていた。


 お昼休みに、仲間と裏庭でお弁当を食べていると、掛川先生が傍に寄ってきて


「いいか? 座って」


「いいけどー なんなん? 突然」私は、突然だったので・・


「いや ここも 気持ちいいもんだなー 君達はいつも ここなんか?」


「そーだよ みんなから 除けもんだものー」


「とも言えないかもな 君達のほうからバリァー張ってるってこともあるんじゃぁないか?」


「そんなことないよ いじめられたり、相手にしてもらえなかったり・・ 先生 知らないやん 先生の中にも変な眼で差別する人も居るんやでー」


「そうかー それも だんだんと変わっていくよ 瀬戸内さんも頑張ってるから」


 私が先生と話を始めたので、久美も2年の2人も退散していった。


「瀬戸内さん 模試 なんで 京大って書かなかったの? いいんだけどさー」


「うーん 何となく でも、目標は京大だよ 本当は書くの 怖かった」


「そうかー 僕の眼からすると 今 50%の少し上かな でも、大丈夫だよ まだ、半年ある 伸びている途中だから」


「だよね ウチもね まだ フィフティフィフティだと思う」


「あのな 余計なことなんだけど 数Ⅲ 教えている鏡恭子先生 瀬戸内さんのことをな あの子、授業中、ノートも取らないし、ジーッと見つめてくる眼が怖いって だから、ちゃんと説明しておいたよ そういう子なんだって 真剣なんだよってな」


「えー そーなんだー 悪いことしてるね ウチ そんなつもりじゃぁないんだけどーなー 先生もそうだった?」


「うーん なんかあるとは思ってた でもな こうやって話してると、大きな瞳が澄んでキラキラしてるし、優しそうだよ」


「ありがとう先生 お母さんにも言われたんだ サダは味方だとわかると眼付が変わるって 可愛くなるんだってよ 先生 どうする?」


「バカ そんな眼で見てー からかうなよー でも、瀬戸内さんの担任になってなきゃ こんなに明るい子だとは、気づかなかったなー」


「ウチも 先生がこんなに話やすいって思わなかった だって いつも黒板に数式を書いて、冷酷にしゃべってるだけだものー」


「そうかー そんな風に見られていたのかー これから気をつけるよ」


「よーし そしたら ポイント上がるかもね」


「瀬戸内サダ 絶対 合格しろよな がんばれ!」


「そんなふうに 先生に言われると勇気でるね」 

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