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 海水浴から帰ってきてからも、暇だったので、時々、久美に誘われては、カフェとか買い物に行ったりしていた。そして、久美に合わせて、夏休みの間だけだからと、髪の毛も部分的に青く染めたりもしていた。


 家を出る時も、隣の家の犬が門の中から私を見て、盛んに吠えている。何年か前には、私のおやつを分けてあげていたんだけど、そのことを忘れているんだか、姿が変わってしまった私のことを責めているんだか・・・。


 当然、お母さんからも叱られたが、夏休みの間だけだからオシャレとか言ってごまかしていたのだ。


「なぁ 久美 ウチって ブス?」


「エッ あっー ・・・ そんなことないよ 可愛いよ」と、久美は答えるのにしばらく時間がかかっていた。


「今日だって 髪の毛のリボン可愛いしー スカートもバッチシだよ サナは脚が細いし、恰好いいよ」


「うーん そんな風に言ってくれるの 久美だけだよね クラスの男はみんなブス ブスって・・」


「そんなの気にすんなよ ウチからしたら、サナは胸もそれなりにあるし、脚も長いし・・見方によっては、その眼も大きいと言えるし・・時々、見つめられると怖いけど・・」


「そーなんだよね ウチ 意識してないんだけど・・見つめていると、髪の毛の間から眼ン玉 飛び出しているように見えるんだってね 気持ち悪くって ブスなんだって」


「そんなの気にすんなよー ウチなんか 脚はぶっといし、胸は小さくて眼は細いし、最悪だよー 女の魅力はそんなで決まんないよ」


「ふーん 久美って いつも あの人とベタベタしてるもんね」


「なんでー そんな言い方・・ 好きなんだもの・・ええやろー 勝手やん」


 何となく、気まずくなったまま、二人とも、無言のまま、店を出てバス停に向かったていた時、充君が丁度、バスに乗り込もうとしていた。私達二人の方を見たのだが、気づいたのか、解らなかったのか、無表情に乗り込んでいった。


 真っ黒に日焼けしていて、スポーツバッグを手にしていた。髪の毛も短く刈り上げていて、いかにも、スポーツ少年という感じだった。久しぶりに見ると、腕が逞しくなっていて、背も伸びたみたい。


「あっ みつ く・・ん」と、思わず懐かしくて声が出てしまったんだけど・・。そのまま、バスは行ってしまった。充君への気持ちが突然甦ってきていた。


「サナ 知ってるのー」


「ううん 小さい頃のね・・今は、世界が違うのかも・・あの人と」


とても輝いて見えて、私には彼がまぶしかった。やはり、充君とは今の環境もすごーく違うような気がしていた。空しかったのだ。こんな私を見て、軽蔑するよねーと

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