世界の殻を破らねば、俺たちは生まれずに死んでいく。

本作のいいところは、読者を意識して書かれている点。
人物や状況描写があまりなく、主人公の視点、主観、心情がよく書かれている。
主人公の個性を際立たせる技法は、周囲との人間関係を描き、それに対する対応がどうなのかを示すことで浮かび上がってくる。
つまり、書かずに書いているのだ。

作家デビューになっても、自作と平積みされる作家になることが書かれている。
どこまでも、自分にしか関心がないのかもしれない。
ある意味、エゴイストである。
途中「自分のエゴが恐ろしい」と自身をいっている。
そうでなければ、他人を感動させる作品を書ける作家になどなれはしないのだと、作者は描いているのだろう。

主人公のペンネーム『希求章』が、彼自身の生き様を表している。
希求とは、願い求めること。
主人公は作家になることを願い求め続け、書き続けたのだ。