第39話 真美ちゃんからのプレゼント 後編

 僕と朱音は色々あって真美ちゃんの家に呼ばれることになった。

 真美ちゃんの趣味であるコスプレに朱音が興味を持ったことで一気に話が進み、朱音にコスプレ衣装をいくつかプレゼントすることとなったのだ。

 さすがに天使の衣装はプレゼントすることは無いと言っていたのだが、朱音は真美ちゃん秘蔵のコスプレグッズを見せてもらって楽しそうにしていた。

「凄いですね。こんなにたくさんあるんだ。でも、どうして今まで教えてくれなかったんですか?」

「どうしてって、別に聞かれていないものをわざわざ言う必要も無いでしょ。それに、変に思われても嫌だからね」

「朱音は別に変だって思わないですけどね。真美ちゃん先輩なら何でも似合いそうだし、おかしいなんて思わないけどな」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ、やっぱり私は和装とか似合わないんだよね。この顔だから違和感の方が強かったりするし」

「そんな事ないですよ。ちゃんと似合うようにすれば大丈夫ですって。真美ちゃん先輩はスタイルも良いんで普通に着るんじゃなくてもう少し胸の近くに帯を持っていくとかするといいと思いますよ。私も普段からそうしてますから」

 朱音も日本人離れしている方ではあるのだけれど、ハーフである真美ちゃんは朱音以上に日本人離れしていると言っていいだろう。スタイルも割といい朱音とスタイルが凄くいい真美ちゃんは似たような悩みがあるらしい。真美ちゃんは奥から持ってきた浴衣を着て見せてくれたのだが、その姿は制服を着ている会長よりもずんぐりとした体型に見えてしまっていた。

「ちょっとごめんなさいね。苦しいかもしれないけど我慢してくださいね。お兄ちゃんは一回部屋から出てて」

 僕は廊下に立たされることになったのだが、今まで一度も廊下に立ったことのなかった僕はまるで自分がのび太君になったような錯覚を覚えていた。

 しばらく待った後に僕は部屋に戻るように言われたのだが、そこには先程とは見違えるくらいに浴衣が似合っている真美ちゃんが立っていたのだ。

 僕はそんな真美ちゃんの姿に見惚れていたのだけれど、それに気付いた朱音に背中を叩かれて現実に引き戻された。

「ほら、何か感想があるなら言ってよね。どう?」

「うん、似合ってると思うよ。さっきよりも良いと思う」

「ありがとう。でも、浴衣を着るのって大変なんだね。こんなに苦しいとは思わなかったよ。もっと気楽なもんだと思ってたけど」

 真美ちゃんは少しだけ苦しそうにしていたのだけれど、その表情は先ほど見た天使の絵の時のような柔らかい笑顔にも似ていた。

 浴衣を着た真美ちゃんがその場でクルリと回ってみてくれたのだが、いつもよりも胸がおさえ付けられているのかシュッとしてスッキリしていた。そのせいなのか、お尻はいつもよりも大きく見えて今にも弾けそうに感じていた。

 それに、水色の浴衣にうっすらと透けているオレンジ色が凄く強調されているようにも見えていた。うっすらとしか透けていないはずなのに、そこに施されている刺繍も全てハッキリとわかるくらいに浮いていたのだ。

「朱音ちゃんありがとうね。これで今年から浴衣を着てお祭りに行けそうだよ。愛ちゃんは浴衣着てくれないから寂しいけど、私は着てみるよ」

「せっかく可愛い浴衣を持ってるんだから着ないと損ですよ。ね、お兄ちゃんも良いと思うでしょ」

「うん、似合ってると思うよ。最初に見た時はどうかと思ったけどさ、凄くいいと思う」

「ありがとう。朱音ちゃんもコスプレ衣装期待のあったら自由に着ていいからね。私の体に合わせてるからサイズ合わないかもしれないけど、興味があるなら作ってあげるからね」

「さすがに作ってもらうのは悪いですよ。なので、コスプレ用の小物を見せてくださいね。普段使いできそうなのも色々とあるんですね。凄いな」

 朱音は嬉しそうに真美ちゃんのコスプレ道具を物色していた。そんな様子を見ていた真美ちゃんも朱音が楽しそうにしている姿を嬉しそうに見ていたのだ。

 僕はそんな二人が楽しそうに見えて嬉しく思っていた。

「ねえ、まー君も何か気になるものとかあったら自由に見てていいからね」

「うん、色々と見せてもらったけど、どれもこれも作り込みが凄いね。漫画とかで見たやつとかあるし、こういうのって手作りなの?」

「市販品をちょっと加工した物とかもあるんだけどね。一から作ったモノってほとんどないかもしれないな。でも、まー君が欲しいものあったら作ってあげても良いよ」

「そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。僕は見てるだけでも満足だからさ」

「見てるだけで満足しないとだもんね。触ったりしたら愛ちゃんに怒られちゃうかもよ」

「え、愛ちゃんはコスプレとか興味あったっけ?」

「愛ちゃんはコスプレに興味は無いと思うよ。でも、まー君が見てたモノに触れると愛ちゃんは怒っちゃうかもよ」

 真美ちゃんは天使のような表情から少しだけ小悪魔のような表情に変わっていた。僕は気付かれていないと思っていたのだけれど、真美ちゃんの透けていたパンツを見ていたことがバレていたようだ。

「ねえ、朱音ちゃんが向こうに集中している間に少しだけ見せてあげるよ。触ったりしたらダメだからね」

 真美ちゃんは僕と朱音の間に立っていたのだが、そのままきっちりとしめられている浴衣をゆっくりと開くと、そこには綺麗な白い足が隠されていた。

 徐々にその足の見える範囲が多くなると、うっすらとだけ見えていたオレンジ色の正体が見えかけていた。

 僕を焦らすようにゆっくりと見せてくるのだけれど、僕はそこから目を逸らさずに見入ってしまっていた。オレンジ色の見える範囲が少しずつ広がっていき、僕は自然と前のめりの体勢になっていたのだけれど、手だけは床から離さないように押さえつけていた。

 もしも、このまま手を伸ばしてしまっていたら大変なことになるという事が自分でもわかっていたのだ。

 そんな僕を見下ろすように見ていた真美ちゃんの表情はだんだんと天使とは言えないものになっているようなのだが、そんな悪そうな表情を浮かべている真美ちゃんの事も綺麗だと感じてしまっていたのだった。

 完全に前を開いてオレンジ色のパンツが丸見えになっていて、僕はそこを食い入るように見てしまっていたのだが、さっきまでとはうって変わって真美ちゃんは恥ずかしそうな表情を浮かべていたのである。強気な顔から一変して恥じらいのある表情に変わっていたのだが、そのギャップで僕は倒れそうになっていた。


「あ、お兄ちゃん。これとかお兄ちゃんに似合うんじゃない?」

 僕は急に朱音に話しかけられて心臓が止まるかと思ったのだが、僕以上に真美ちゃんが焦ってしまったようで素早く浴衣を直すと飲み物を取りに行くと言って部屋を出ていってしまった。

「飲み物ならまだあるのにな。それよりもさ、この羽ペンとかお兄ちゃんに似合いそうじゃない。持ってみてよ」

 僕は朱音に渡された羽ペンを持ってみたのだけれど、初めて持ってみたこともあって手にしっくりくることは無かった。

「うーん、思ってたのと何か違うな。もっとお兄ちゃんに似合うものを見付けないとな」

「僕のは良いよ。朱音に似合うものを探しなよ」

「大丈夫。それはもう見付けたからさ。ほら」

 そう言って朱音が手にしていたのはハロウィンで使えそうなカボチャの杖や指輪だった。

 朱音はイベントごとが好きなので意外ではなかったのだが、どうしてそれを選んだのか気になってしまった。

「なんでその二つにしたんだ?」

「なんとなくかな。最初は薙刀をやる時に身につけられそうなのが良いなって思ったんだけどさ、そんなことしたら怒られそうだなって思ってやめたんだよね。で、夏休みが終わったらハロウィンがあるのを思い出してこれにしたってわけ。このオレンジ色のかぼちゃとか指輪って綺麗な色だよね。こんなカボチャ食べた事ないけどさ」

「今年のハロウィンは真美ちゃんに衣装選んでもらって楽しめばいいんじゃないかな」

「そうしたいけどさ、朱音は受験することにしたから遊んでる暇ないかもな。だから、こうしてワンポイントで楽しむことにするよ。お兄ちゃんもオレンジ色好きそうだしね」

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