エルフの「心づくし」で酒を一献。
では、ピリタルを準備しますので、その間、ゆるりとしながら、こちらの席に用意した料理を胃にお納め下さいな。
~~エルフの賢者・アゼム~~
エルフたちは古くより、ピリタルと呼ばれる酒を風流な物と考え、この酒を振る舞うことで客人をもてなしていた。
だが、この酒は人間の胃にとっては強すぎる。そのため、エルフたちには人間をピリタルでもてなす際の作法というものが存在する。
いわゆる、「心づくし」と呼ばれるそれは、人間が胃を痛めないように、少量の食事を提供するもので、お腹を一杯にするためではなく、簡素な芸術性と、風流さに重きを置いたコース料理だ。
●先ず用意されるのは、メレナー米という客に出す用の米を炊いた物、汁物一品、小皿一つ。
・メレナー米は炊き立ての物をほんの数口分。
・汁物は季節を出す。クレップ豆の発酵調味料、マメジャムのスープをベースに、ホワイト・ブロックというクレップ豆の加工品の一種と季節の物を一種類合わせる。キノコ、山菜、根菜……ただし、入れ過ぎない。一切れほど入っていれば上等だろう。
・小皿には海の生魚の刺身に手を加えたものが望ましい。例えば、シーウィング草といううま味の強い海藻で包んでしばらく置く。花びらの酢のものを散らす。等々……
●次に用意されるのは煮物の小鉢。基本、エルフは畜肉より魚肉を好むので、魚肉の煮物。特に、蒸し魚肉団子の煮物が提供されることが多い。
・魚のすり身は根気よく滑らかになるまでする。この作業に妥協することは、お客への誠意を欠く事と教えられるらしい。
・基本はシーウィング草の出汁。味付けは淡く。ただし薄すぎないを気を付ける。
・肉団子の芯や飾りつけで季節感を演出する。お椀にもこだわりたい。
●次に焼き物として、小振りな切り身の魚が二つか三つ乗った小皿提供される。
・主に、発酵調味料で漬けた物が提供されることが多い。クラッペ豆のマメジャム、メレナー米の発酵食品、フリ=リッペ等で漬けたものが味が深い。
・宗教上の理由で肉を食べない人には、ホワイト・ブロックを小さく切って、串にさして焼いたものにマメジャムを乗せたものを勧めよう。
●「心づくし」の実質的な最後の品は小鉢。小さい鉢にフルーツを使った料理を二口くらいの少量をもって提供される。
・干したキクカキの実をゴゥ=マという種子で和えたもの。ブルドーとシナシィナの実をホワイト・ブロックを崩したもので和えた物が特に人気が高い。
・縁起物、季節の物。この二つが合わさって、小鉢の世界は完成するので、季節を重視したい。季節外れの木の実を使うなどもってのほかだ。
そしてお酒、主役のピリタルの登場……とはいかず、もう一品炒ったメレナー米を入れた湯と共に出される、それを胃に収めて。ついに出されたピリタルと、海のモノと大地のモノを一種ずつ、お酒の肴を乗せたものを頂く。
以上。
このような流れの料理コース。提供されるお客として招かれる側も、きちんと身なりを整え、「お招きありがとうございます」の精神をもって胃に収めよう。
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