第2話

「大菅さん。どうやって、その……霊体を探すの?」

「蓮でいいよ〜。うーん、闘うのは得意だけど探し出すのは苦手なんだよね」

 白髪を指でクルクルいじりながら苦笑する蓮。

「でも視えるんでしょう?」

「感度がいいって言っても、俺は触るの専門だし」

「えっ」

「君は本当に視えないの?」

「はい」

「うーん、よく出没するスポットはエニシダさんに訊かないと、よく変わるしね」

「その、エニシダさんて何なんですか?」

「心霊庁が誇るAIだよ」

 一抹の不安を感じながら坂を登っていく。

 春先の、のどかな風が大菅蓮の透き通るような白髪を揺らしていた。

「あの、どこへ向かってるんですか? 心霊庁の庁舎とは逆の方向では?」

「いいからいいから、ついてきて」

 途中の木製のベンチで、大菅蓮は携帯端末を取り出した。

 あえてなのかこれが平常運転なのか、携帯端末から聞こえるプッシュ音はスピーカーになっていた。

「もしも〜し、巴っち? 今ヒマ?」

「死ね」

 そう言って巴っちと呼ばれた女性は低い声で罵声を浴びせて電話を切った。

「やっぱりダメか〜」

「誰です?」

「ん? 同僚だよ〜」

 仕方ない。そう言って彼はまた歩き出した。

 桜は散って葉桜が見えだしている。

 死というものを、彼はどう捉えているのだろうか。

 桜も満開になれば散る運命だ。それは人も変わらない。

 彼はその小さな背中に何を背負っているのだろう。

 不思議な雰囲気の彼のペースに飲まれながら、いつの間にか彼となら何とかやっていけるかもしれないと。少しだけ期待を持った。

 もう、持つはずのなかった「期待」を。

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