第39話「ピックアップが来たら引くよね?」

「お兄ちゃん! もう十連! お願いします!」


「やめとこうよ、もう無料チケットは無くなったろ? あとは無料石だけどこれが無くなったら有償石になるぞ? どうせまたヒきたくなったピックアップがそのうち出るって、今回はご縁がなかったんだよ」


 妹は現在俺とガチャ広場でピックアップガチャを引いている。残念ながらピックアップをすり抜けて既存キャラが出たり、最低保証しかでなかったりでガチャチケットをついに使い果たしてしまっている。石を取っておくというのが正しいことなのかは分からない、しかしもうすでに何十連も回して出てこなかったアバターにこだわるのは不毛な気がしてならない。


「お兄ちゃん! 今回はVtuberのプリズムミリアちゃんのアバターなんですよ! ガワを変えてチヤホヤされたいじゃないですか!」


「清々しいほどに不純な動機だな!」


 つーかもうすでに引いている人がいるので今さら同じガワを持ったキャラが一人増えてもそんなにチヤホヤされないと思うぞ。


「まだ無償石なのでセーフです! 有償石に手を出してからが賭け事の本番だって昔から言うじゃないですか!」


「歴史の浅い格言だな……」


 そんなことを言っているあいだにガチャマシンに石を投入していたSSRはタダでさえ2%なのにピックアップの確率が多少高いからといって早々引けるものではない。確かに再録予告がされていない以上、ここで引いておかないと手に入らない確率は十分に高いのだが……


 パッパパーン


 お、昇格演出だ。最高レアは出るようだ。都合良くピックアップが出るかはまた別だがな……


「お兄ちゃん! SSR確定ですよ! さあ何が出てくるか……」


 ババーン!


 出てきたのは武器のプラズマソードだった。一応最高レアなのだが、この闇鍋ガチャでは装備品もアバターと一緒に出てくる。威力だけは確かな装備だがフォーレの望んでいるものではなかった。


「もう十連!」


「退くこと覚えないと死ぬぞ」


「『引くこと』は十分に覚えていますよ!」


 字が違う気がするのだが……ガチャを引くのは程々にしておけよ。


「なあフォーレ、石はあと何連分持ってるの?」


「五十連分ですね……これだけ引けばいけると思うんですよ」


「知ってるか? 一パーセントのガチャって百回引けば必ず当たるわけじゃ無いんだぜ?」


 確率のマジックに踊らされていないだろうか? 百連引いても当たらないときは当たらないんだ。


 ババーン!


 もう一度SSR確定演出が来た。さすがにそろそろ出て欲しいとは思うのだが、俺の頭の現実を見ている部分が『どうせ当たらないだろうな』とうっすら予感している。


『皆のアイドルプリズムミリアちゃんだよー!』


 なんとピックアップを引き当てた。妹は小躍りして喜んでから即座にアバターを切り替えた。


「どうですお兄ちゃん? 可愛いでしょう?」


「ああ、そうだな……それよりお前の持ってる豪運の方がすごいと思うよ」


 俺は古くからの格言『出るまで回せば必ず当たる』という言葉をリフレインしていた。

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