第15話「古参勢の飲み会」

「ギルマス、そろそろこのゲームも半年がくるな」


 そう言うのはフィールズ、このギルドのタンク役をしている男だ……とは言っても性別は自称なのだが……


「半年記念ね!」


「ハーフアニバーサリーは何がもらえるんだろうな?」


「さすがに十連分の石かガチャチケットくらいはくれるんじゃない? 運営もそこまで鬼じゃないでしょ」


 マクスウェルは楽観的なようだ。十連無料はあり得るのだろうか? 個人的にはキャラの育成に必要な素材もプレゼントしてもらえると嬉しいな。期待を裏切ることには定評のある運営なのでそこまで信用はしていないのだけれどな。


「ギルドへの配布はあるのかな?」


 ギルドの貢献度への影響のあるアイテムや、共有財産を支給してくれたり、ハウジングの税金を下げるでもとてもありがたいのだが、そういったことは滅多にないので期待していない。


「ギルマス、それは諦めなさい。金脈をユーザに渡すような運営ではないのは知っているでしょう?」


「それもそうなんだがな……」


 期待を持つから裏切られるのだ、課金アイテムをポンポン配っていてはサ終が早まってしまう。いくら基本が月額課金とはいえガチャが収益の比重で大きいのは分かる。


「ガチャ! ガチャチケットをお願いします!」


 シャウトで運営への要望を伝える妹。ここがハウス内だから構わないが表でのシャウトは慎重にしろよ……


「フォーレ! うるさいわよ! 運営に叫びたいなら表に出てプリミアの中央広場でやりなさい!」


「ウチの評判に関わるからヤメロぅ!」


「冗談よ」


 マクスウェルはそう言って笑う。俺にはさっきの顔が冗談で言っているようには見えなかった。


「まあまあ、この前買ったティーセットを出したんだから皆仲良くしてくださいよぅ!」


 メアリーは自分のティーセットを使われながらくだらない議論をされているのが堪らないようだ。


「そういやこの前クェーサーを倒したときにオーブをドロップしたんだよ、これたしかギルドの貢献度に関わるアイテムだよな」


 フィールズがそんなことを唐突に言い出す。平和な話題に切り替えるつもりのようだ。


「クェーサーなら白のオーブだな、でかしたフィールズ! 結構なポイントになるぞ!」


「やるじゃない」


「いいなあ……」


 そうして上手く話がそれたところでメンテの通知が届いた。


「これより定時メンテナンスを行います、十分後に全ての端末がログアウトされるのでご注意ください」


「天の声来たなあ……」


「じゃあ今回はこれでお開きね、メンテ明けにまた会いましょう」


「「「「「じゃあまた!」」」」」


 こうして俺たちは半年記念のアイテムに期待しながら散り散りにログアウトしたのだった。

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