第36話 魔物の墜落と人命救助

 真っ二つになった魔物が、砂のようにくずれながら落下する。


「ここはどこだ!?」


 魔物につかまって空を飛んでいたので、どこにいるのか分からなくなっていた。

 落下する魔物にしがみついて、必死に街をみる。


「あれは……王宮?」


 王宮に向かって、落ちていく魔物と俺たち。


「マズイ!このままだと王宮に落ちる!」


 王宮にはたくさんの人が働いている。

 その人たちを守らなくては!


「レオ総督そうとく!」


 カモメの守護獣ビーストがやってきた。


「お前は……ストレの首領の守護獣ビースト!」

「遅くなってごめんね」

「竜巻スキルで、あの森に落ちる場所をずらせないか?」


 王宮の近くにある、監獄塔かんごくとう

 その裏にある森は人がいない場所だ。

 全速力で追いかけてきただろう、カモメの守護獣ビーストに指示をだした。


「わかったわ」

「イオも手伝うにゃ」


 竜巻スキルをピンポイントに魔物へぶつける。

 真っ二つに切り捨てたので、2つとも移動させるのは大変だろう。


「風スキルでひきよせるにゃ」

「なら、竜巻スキルでおしていくね」


 小さな竜巻を何回もぶつけて移動させるカモメの守護獣ビースト

 イオの風スキルも使って、なんとか王宮から魔物の落下地点をずらした。


「私にできるのは、ここまでね」


 カモメの守護獣ビーストが、騎馬族に伝えるために離れた。


「ありがとう!イオ!俺につかまれ!」

「うにゃ!」


 俺は水スキルで防御盾をつくった。

 どんどん魔物は落ちていく。


 ズシャァア!


 そのまま森へすべり落ちる。


「落ちる!」


 俺たちがつかまっている方は、先に落ちた魔物の体にぶつかる。

 そのまま大きくはね返って、監獄塔かんごくとうへぶつかった。


 ドォンッ!


 魔物の体は監獄塔かんごくとうをこわしてとまった。


「うわぁぁぁ!」


 俺たちは防御盾のおかげで無傷だ。

 防御盾が、コロコロころがりながら地面におちた。


「うぇぇ……。酔った」


 防御盾の中で、一緒にころがったせいで気持ち悪くなりながら、俺は外へおりる。


「ご主人、大丈夫にゃ?」


 口をおさえる俺に、イオが回復スキルをかけてくれる。


「助かった……」


 スッキリした俺はあらためてまわりをみる。

 落ちた魔物がボロボロとくずれている。


監獄塔かんごくとうにいる人たちを助けよう」

「にゃあ」


 壊れたガレキの上をヒョイヒョイと進む。


「筋力増強スキルは便利だな」


 大きなガレキをスキルを使ってどかしていく。


「探索スキルで人を探してくれ」

「にゃん!」


 イオは、しばらくキョロキョロしていた。


「ここにゃ!」


 かすかにうめき声が聞こえる。


「いま助けるからな!」


 ガレキをどかすと瀕死ひんし看守かんしゅがいた。


「回復するにゃ」

「あぁ……。助かりました」

「魔物退治にまきこんで、すまない」

「ご主人!ここにゃ!」


 すぐにイオが次の人を見つける。


「よっこいしょ」


 大きなガレキを遠くに移動させて、小さなガレキはそのへんに放りなげる。


「いま牢に入っているのは四大名家の3人だけのはず。

 看守かんしゅは3人くらいか?」


 出てきた人を助けながら、考えていた。

 まぶしい光があらわれる。


「我が王!よかった!」


 セリスが転移魔法でやってきた。

 王国軍に、フェイジュンやジゼル、リーベラさん、ドーラもいる。


「みんな!心配をかけてすまない」

「いえ。レオ陛下の戦いぶり、見事でした」


 大尉が感激していた。


「街の人もみんな見たよ!

 これで我が王のおひろめは成功だね」


 セリスが得意気だ。


「それは照れるな。それより、監獄塔かんごくとうを壊してしまったから、救助を手伝ってくれ」

「分かりました」


 大尉が兵士たちに指示をする。


「ごーしゅーじーん!」

「すぐ行く!」


 ガレキを兵士たちと協力してどける。

 大きなガレキのすきまに土スキルの名家がいた。


「おじいさま!」


 フェイジュンが出てくるのを手伝う。


「うぅ……」


 うめきながら出てきた土スキルの名家。

 頭から血を流している以外は、大丈夫そうだった。


「ご当主、ご無事でなによりです」


 かけよってきたジータが言った。


守護獣ビーストにかばわれたからな」

「回復にゃ」


 ふわりと優しい光に包まれ、すっかり傷がいやされた。


「また、生きながらえたか……」


 うつむきながら、土スキルの名家はつぶやいた。

 俺は土スキルの名家と向かい合った。


「あなたには、相応の罰を受けてもらおうと思っている。

 そう簡単に死なれては困るんだ」

「そうか……。甘んじて受けよう」


「レオ陛下!」


 兵士に呼ばれていったら、男の遺体いたいが寝かされていた。


「父さん……」


 亡骸なきがらは俺の父親だった。


「もう少し、あなたと話しあえたらよかったのに……」


 それが無理だったから、こんな結末になってしまったんだ。

 でも、やはり悔やんでしまう。


「安らかにお眠りください」


 風スキルの名家を探すために、父から背を向けた。


 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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