第35話 総攻撃とレオの一撃

 大きな水しぶきとともに魔物があらわれた。


「レオめぇぇぇえ!殺してやるぅぅぅう!」


 水中にずっといたとは思えない兄の動きに、魔物と完全に同化したんだと思い知る。


「砲撃始め!」


 ドンッドンッドンッ


 号令と共に運河の両岸から発射される。

 次から次に発射される砲弾など気にしないように、魔物は羽ばたいた。


「大砲撃つ以外やることないのか」


 ハリブの首領が呆れている。


「師匠、王国の戦いは、四大名家の守護獣ビーストが主力です。

 王国軍は後方支援だけなんです」


 ハリブの首領は、俺の言葉に納得せず首をかしげる。


「師匠はやめろ。しかし、それでよく軍を名乗れるな」

「護衛とか、災害派遣とか、他にも仕事はしてるんですよ」


 俺はなぜか必死に王国軍をフォローした。


「そうか……。お前ら!王国に正しい戦いかたを教えてやるぞ!」

「うぉぉお!」


 ハリブの首領は騎馬族を連れて、前線へ飛び出した。


「やれ!」


 ハリブの首領の守護獣ビーストが雷を落とす。

 雷に打たれて、一瞬魔物の動きが止まった。


「動きを止めるよ!」


 リーベラさんの指示で、拘束スキルを持つ守護獣ビーストたちが魔物を羽交い締めにした。


「汚い虫ケラがぁぁあ!俺のじゃまをするなぁぁぁ!」


 たくさんの拘束を、力ずくで解こうとする魔物。

 まだまだ強いが、最初のときより動きをおさえられている。


「弓矢、撃て!」


 王国軍が矢を放つ。


「にゃ!」


 イオが風スキルで弓矢の速度を上げた。

 続けて火炎弾を放つ。それを翼で火炎弾を払う魔物。

 魔術師の魔法で、外した火炎弾はフッと消えた。


「さすが魔術師」

「当たり前です。私たちの魔術は、全てあなたのためですから」

「魔術師……。こんな奴らだったのか……」


 王国軍の大尉が、魔術師の男を気持ち悪そうに見た。


「そういえば、軍と関わっているところを見たことが無いな」

「我々は魔術で何でもできます。軍など必要ありません」


 フンッと偉そうに言う魔術師の男。


「俺も関わりたくないな」


 ウゲッとした顔で大尉は言った。

 ガクンっと魔物の動きが落ちる。


「うふふ。イプラ特製の毒ですわ。

 王国軍の弓矢に塗っていただきましたの」


 ジゼルがさらっと恐ろしいことを言った。


「毒が魔物に効くのか?」

「足止めですが、南の森では魔物狩りのときに使いますの」


 動けない魔物に攻撃する騎馬族の守護獣ビーストたち。


「しかし統制がとれている。流れるようにあざやかで、美しい攻撃だ」

「ハリブの首領に言ってくれ。きっと喜ぶよ」


 俺の言葉に大尉は力強くうなずいた。


「そうですね。騎馬族は我々が思っていたより、ずっと温厚で理知的だ」


 ついに拘束を振り切って魔物が飛びたつ。


「レェェェオォォォ!」


 まっすぐに俺を狙う魔物。


「レオさん!乗ってください!」


 フェイジュンがタイタンにのって走ってくる。

 俺は筋力増強スキルを使って飛びのった。


「あの魔物、しぶといです!」

「攻撃は効いてるはずなんだが、弱点はどこだ?」


 タイタンのものすごいスピードに追いつこうとする魔物。


「オオオォォォォ」

「にゃにゃっ!」


 イオが水球弾で足止めする。

 他の守護獣ビーストたちも、自分たちのスキルを発揮して魔物に攻撃し続ける。


 魔物が羽ばたいて、俺を運河の岸ごと鉤爪かぎづめで破壊しようとする。


「マズイな。岸を壊される」


 バチンッという音ともに魔物が弾かれた。

 魔物は体勢をととのえるために、上空へと飛びあがる。


「壊される?まさか!このセリスちゃんがいるのよ!」


 フワンと空中に浮きながら、セリスがタイタンの横にあらわれる。

 タイタンのスピードに浮かんでついてこれるのは、なにげにすごい。


「はい、これ」


 セリスがまた、兵士から剣を盗んでもってきた。


「また盗んだのか?」

守護獣ビーストのスキルで借りたんです!」


 セリスはすぐに訂正してきた。


「剣は王国からの支給品だから……いいのか?」

「いいのいいの!我が王のカッコ良さをみんなに知らせなきゃ!

 ……あぁ!でも、ライバルが増えちゃう!大変!」

「お前は何を言ってるんだ?」


 キャーキャーと騒ぐセリスにあきれる。


「……分かります」


 フェイジュンがボソッとつぶやく。


「何を?」

「……」

「……」


 俺の問いに、だれも答えてくれなかった。


「フェイジュン、ありがとう。イオのそばで降ろしてくれ」

「分かりました」

「イオ!大丈夫か!」

「ご主人!」


 はるか上空を旋回せんかいして様子をうかがう魔物。


「だいぶ削ったにゃ!」


 ガバッと背中に飛びついてくるイオをねぎらう。


「おつかれさま。俺も頑張らないと」


 空を飛ぶ魔物をにらんだ。

 魔物が猛スピードで急降下してくる。

 守護獣ビーストたちの攻撃にもひるまない。


「おりゃ!」


 筋力増強スキルでかわす。

 イオの攻撃も再開するが、しつこく追いかけてくる。


「急に速度があがった。回復したのか!?」


 魔物はくるりとまわり、速度を変えずにまた猛スピードの低空飛行。


「剣でかわすのが精一杯だ……!」


 とっさに水スキルで防御盾をつくる。


「オォォォアァァァ」


 魔物はボールのような防御盾ごと、俺をくちばしにくわえて空へ飛び上がった。


「ご主人!」


 イオがするりと、防御盾の中へ入って俺を出そうとする。

 その間にもどんどん地上からはなされる。


「俺に水スキルは向いてないな」

「本当にゃ」


 防御盾は壊れることなく、魔物のくちばしにはさまっている。

 少しずつ力をくわえて防御盾を割るつもりだ。


「ノドが丸見えだ。イオ、ノドにスキルで攻撃しよう」

「そんなことしたら落ちるにゃ」

「魔術師がなんとかしてくれるだろう」

「さっきはご主人、大変な目にあったにゃ!

 ご主人が死んじゃったらイオ悲しいにゃ!」


 泣きそうなイオをなだめる。


「イオ、俺は死なないよ。俺が生きてるのはお前のおかげだ」


 イオはスキルが無い守護獣ビーストとしてあらわれた。

 最初は恨みもした。でもスキルがなくても、明るくて無邪気なイオといることで、俺はなぐさめられたんだ。


「俺はイオのために生きてるんだよ」

「ご主人……」

「お願いだ。イオ、のどの奥をめがけてスキルを叩き込め」

「…………にゃあ!」


 イオは最大級の火炎弾を魔物のノドに放った。


「ギャァァァ!!」


 はずみで防御盾がくちばしから飛び出た。


「にゃあ!」


 イオの風スキルを使い魔物の上へ。

 俺も筋力増強スキルで、バランスを取りながら剣を構えた。

 俺の持つ水スキルを剣がまとう。


「うぉぉぉお!」


 ザンッ


 俺は、魔物の首を真っ二つに切り捨てた!



 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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