第22話 コアを掘るイオと出てきたアルベルト

 魔術師本部から騎馬族の野営地へ戻るとそこは大混乱だった。

 フェイジュンはとても心配していて、俺たちが帰ってくると泣いていた。


「レオさん……グスッ、無事で良かった……ヒック……」


 騎馬族の人たちが、慌てて駆け寄ってくる。


「レオ総督そうとく!」

「良かった、穴に落ちたのかと思ったよ」

「その子供は?」

「子供じゃないです!魔術師のセリスです!

 最年少で、魔術師試験に合格した天才です!」


 セリスが頬を膨らませた。


「リーベラがいるから、大丈夫だとは思っていたが……。魔術師はロクなことをしないな」


 消えていたときのことを伝える(しゃべったのは主にリーベラさんだ)と、ハリブの首領が頭をかかえた。


「ロクなことって……!」


 セリスが反論する。


「だいぶ魔術師は嫌われているな」

「王国側だからですね。あと行動が怪しいので……」

「そんなに怪しいのか?」


 フェイジュンにたずねる。


「夜中に草原で変な踊りを踊ったり、雑草や石ころを集めていたり……」


 ほかの騎馬族が、うんうんとうなずいた。


「誤解です!踊ってないです!新しい魔術の実験です!

 雑草とかは、新しい魔法薬の素材集めです!」

「あいさつは無視されますし」

「一応王国の人間なので、騎馬族と関わるのはダメなんです」

「あいさつは別にしてもいいと思いますよ」

「確かに……」


 フェイジュンの言葉に俺は同意した。


「だから、あいさつをしない、変な人って思われてるんですよ」


 フェイジュンが、まっすぐな目をして言った。


「もー!私たちは変な人じゃなぁぁぁああ!く、黒髪の一族!ぶぶぶ無礼をお許しくださぁぁい!」

「なんですか。いきなり」

「だって!黒髪の一族は、魔術師の始祖よ!

 はじめて会った!きゃぁぁあ!」


 セリスは顔を手でおさえて、ピョンピョンはねる。

 情緒は普通の女の子だ。


「大興奮だな」

「な、なんだか恥ずかしいです」


 少し休憩してから、巨人のコアに向かう。


「何だこれ。こんなに大きかったのか」


 テント一つ分の大きさのコアは、俺からすると見慣れたコアと変わらないように見える。


「レオさんは、はじめて見ました?」

「降伏の条件を決めるのが大変だったから……。

 倒したときは、みんなのことが気になったし」

「こんな大きな魔物を倒すなんて……さすがは我が王」


 セリスがうっとりと俺を見つめる。


「レオさんは、私達の総督そうとくです!」


 フェイジュンがすぐに否定する。

 正直、どっちもどっちだと思うんだが。

 気を取り直して、セリスがコアを調べ始める。


「確かに変です」

「変にゃ」

「イオさんも分かるんですか?」

「分かるにゃ!」

「人間が入ってるって言ってたな……」

「人間!?」


 びっくりしたフェイジュンが、コアから距離をとる。


「いつもの魔物と違うらしい」

「壊すにゃ?」

「神獣さまは、分解できるんですか!?」

「本当のコアじゃないから、出来るにゃ」

「イオ、たのんだ」

「にゃ!」


 イオがコアに手をつける。

 ズブズブと、コアに手が沈みこんでいく。


「溶けてる?ビンに詰められるかな?」


 イリスがビンに中身をつめようとする。

 しばらく中をさぐったイオだが、俺のほうを見た。


「つかんだにゃ」

「出せるか?」

「にゃ!」


 ポトン。

 イオが、普通サイズのコアを地面に落とす。


「これはまともなコアね」


 セリスが鑑定して、コアを魔物封じの袋に入れた。


 ポトンポトンポトン。


「な、何個出てくるんだ!?」

「多すぎる!」

「掘れ掘れにゃんにゃん!」


 イオは両手をコアに突っ込んで、もはや爪とぎをしているネコのように、ポイポイと中身を出していく。


「コアがどんどん縮んでいますね」

「本当だ」


 馬くらいの大きさになったコアを見て、セリスが気持ち悪そうに言った。


「なんなのコレ!?誰が作ったの!?」

「うん?大きいにゃ!」


 何かをつかんだイオが、筋力増強スキルで取り出しはじめる。


「抜けないにゃ!」


 ズルッ


「ひ、ひと!本当に入ってる」


 フェイジュンが、悲鳴をあげる。

 足をつかんだイオが、必死にひっぱる。


「ご主人!手伝うにゃ」

「分かった。足をつかめばいいのか?」

「お願いするにゃ」


 二人で必死に引っ張るが、ヌメヌメとした液体ですべってしまう。

 足から先がまったく出てこない。


「う、う、うにゃー!」


 イオが力を込める。


 ズルズルッ!


 全身が一気に出てくる。


「きゃぁぁあ!はだかぁぁ!」


 セリスが顔をそむける。


「息はありますか?うつ伏せは苦しいです。

 横向きにしましょう」


 フェイジュンは冷静だ。

 魔物狩りで鍛えられているんだろう。

 王宮でみた治療師のようだ。


「な!?アルベルト!?」

「お知り合いですか?」

「タイタンとイオが仕返ししたヤツだ。

 なんで魔物に……?」


 ヌメヌメとした液体につつまれたアルベルトは、生きているのか分からない。


「これはアルベルトの守護獣ビーストにゃ。

 溶けてちゃってるにゃ」


 コアとはちがう輝きをした石を、イオがみせてきた。


「お前、何が起きたんだ?」


 俺はアルベルトにつぶやいた。


 ◆◆◆

 アルベルトさん、復帰早かったですね。

 ここから本当のザマアです。

 読んでいただきありがとうございました。 


 続きが気になる!イオは掘りきった!レオとアルベルトはどうなるの?と思われましたら、

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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★


 フォボスのスキル(イリスの守護獣ビースト

 ・???

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