第21話 魔術師本部と魔術師セリス

先代神獣のお墓を調べようとした俺とイオ。

 いきなりあらわれた宮廷魔術師の男に腕を掴まれ、どこかへ飛ばされてしまった。

 まぶしい光が止む。転移が終わったのだ。


「ここは?」

「クサいにゃ」


 イオが鼻を押さえる。白いしっぽがダランと下がっているので、テンション最悪のようだ。


「街なんて十年ぶりかな」

「え?リーベラさん?何で?」


 何故かリーベラさんまで転移魔法で飛んできた。


「レオ総督そうとくを一人にするワケがないだろう?

 少し離れたところで見守ってたんだ。

 そしたら、あの変な男がいきなりあらわれた」


 リーベラさんが魔術師をにらむ。


「イオがリーベラを、しっぽでつかまえたのにゃ」

「さすが神獣さまだ。エラいエラい」

「ふにゃあ」


 リーベラがイオを撫でまわす。

 特訓中から思っていたが、リーベラさんはイオを撫でるのが、俺よりうまい気がする。

 なんだか嫉妬してしまう。


「神獣さまをそのように扱うとは、無礼な」


 魔術師の男が不愉快そうに言う。


「ここの薬草くさい部屋のほうが、神獣さまには無礼だと思うけどねぇ」

「ニオイがキツイのは苦手にゃ」


 イオの言葉に、魔術師が慌てる。


「そ、それは大変失礼いたしました」


 なにやら魔法陣を描くと、あっという間にニオイが消えた。


「クサくないにゃ!」

「それは良かった」


 魔術師はホッとしたようだ。


「神獣さま、お待ちしておりました」


 いつの間にいたのだろうか?

 小さな女の子の魔術師が、ヘビの守護獣ビーストと一緒にあらわれた。


「得体の知れないやつばかりいるね」


 リーベラさんは警戒しながら言った。


「私はセリスといいます。こちらは守護獣ビーストのフォボスです」


 俺たちもセリスに自己紹介をした。


「それで、王国の人間は神獣さまが嫌いって聞いてるよ。

 あんたらは何者だ?」


 疑い深いリーベラさんに、男の魔術師がそっけなく答える。


「勝手についてきた、あなたに答えるとでも?」

「はぁあ?うちの総督そうとくをさらっておいて、エラそうだね」

「リーベラさん、落ち着いて!」


 ギスギスした空気に、俺は慌てて止めに入る。

 リーベラさんはすごくイヤそうだったが、だまってくれた。

 セリスは静かに二人の様子を見ていた。


「ここはどこだ?」


 俺の質問に、セリスが答える。


「ここは王都にある魔術師本部です。

 王国の魔術師は、すべてここを拠点にしています」

「こんな小さい子が魔術師!?」


 リーベラさんが驚いた。

 15歳のジーウェイが首領なのは受け入れてるのに、魔術師が若すぎるのは驚くのか。


「失礼な!私は12歳です!

 それに、魔術師は試験に合格すれば、年齢なんて関係ないです!

 あなただって、おばさんじゃないですか!」

「あたしはまだ21歳だよ!」


 なぜかリーベラさんとセリスが言い合いしている。

 というかリーベラさん21歳なのか。


「あの〜、ふたりとも、話がそれているんだが……」


 リーベラさんとセリスが俺の言葉にハッとする。


「えへんっ失礼しました」

「えっと……魔術師の拠点ってことは、宮廷魔術師もここに所属しているのか?」

「そうです。ここで優秀なものが、王へつかえています」


「なんとなく場所が分かった。ありがとう。

 でも俺たちは戦いの後始末がある。早く返して欲しい」

「それは出来ません。

 どうにも王は、恐ろしいことを行っているようです。

 あなたと神獣さまを、危険にさらしたくないのです」

「イオは強いにゃ!お片付け途中だったのにゃ!」


 セリスの言葉に珍しくイオがご立腹だ。


「美味しいご飯が食べられないにゃ!!」


 なるほど、ご飯か。

 イオは騎馬族のご飯にメロメロなのだ。

 最近は海辺に近い騎馬族たちから、魚の干物をもらって喜んでいた。


「神獣さま。こればかりは、ゆずれません」


 セリスは意思を曲げない。


「じゃあ、くわしく教えな。ここに残るかどうか、それから考えてやる」

「あなた、エラそうですね。分かりました。

 騎馬族と王国軍との戦いであらわれた、巨大なニンゲン型の魔物。

 おそらくアレは、本当に人間を使って作られています」

「なに!?」

「まさか!?ありえない」


 俺たちの驚きを無視して、こんどは男の魔術師が説明する。


「魔物封じの魔術は、私がかけました。

 あのコアは人間が魔物に食べられているときと、同じ魔術反応が起こったのです」

「ん?ん?どういうことだい?」


 リーベラさんが混乱している。


「つまり、魔物のコアから、人間の反応があったのか?」

「そうです。こんなことは初めてですから、すべての魔術師が調べています」

「ふーん。それを王さまが命令してんの?」

「おそらく。もともと王は、魔術も守護獣ビーストも自分だけが使えるようにしたいと考えています。

 それに神獣さまを忌まわしい存在として、倒そうとしている」


 吐き捨てるように魔術師が言った。

 セリスも顔をしかめている。

 なんとなく、王国と魔術師は仲が悪いようだ。


「なら、イオたちで捕まえるにゃ?」

「そんな!恐れ多い!

 安全がわかるまで、こちらで保護させていただければと」


 セリスがあわてる。


「悪いが断る。俺たちは騎馬族でやることがたくさんあるんだ。

 それにイオは、守ってもらうほど弱くない」

「それはこちらが決めます」

「魔法が使えるからってエラそうに!

 神獣さま!こいつらの魔力を奪ってくれ!」

「ご主人、どうするにゃ?」


 イオが俺に確認する。


「どうするって……、魔力も奪えるのか?」

「出来るにゃ!」


 セリスと男の魔術師が血相を変える。


「おやめください!」

「どうかご慈悲を!」


 セリスが、俺たちの護衛をするという条件で、ようやく騎馬族の野営地へと戻れたのだ。


 ◆◆◆

 予測変換が“にゃ”だらけでうっかりイオ語でLINEとか送りそうになります。


 読んでいただきありがとうございました。 


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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★


 フォボスのスキル(イリスの守護獣ビースト

 ・???

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