第8話 イオのスキル確認と新たな騎馬族の村へ

 夕食時にジーウェイが前に出て、ラカータ族に正式な発表が行われた。

 反対があるとドキドキしていたが、みんなあっさりと同意した。

 慌てているのは俺だけだ。


「ななな、なんでみんな普通に受け入れてるんだよ!?」

「だって、おババさまがお話されてましたし……」

「魔物狩りのお話も、すぐに広まりましたわ」


 ケロッとした顔でフェイジュンとジゼルが言う。


「村社会怖いな……」

「みんなさん、レオくんとイオちゃんに期待しているんですのよ」

「おババさまの妹が、嫁がれている村があります。

 まだ交流があるので、そこに行きましょう」

「お出かけにゃ!」

「隊列を組むと到着が遅くなります。少数精鋭で行きたいですね」

「私もお薬を手土産にしましょう」

「俺だけ置いてけぼりじゃないか……」


 俺より張り切るみんなを尻目に、ふくよかなおばさんが取り分けてくれた大量の料理を食べることにした。

 モグモグとご飯を食べている俺のもとに、ジーウェイが近づいてきた。


「レオ総督そうとく、ラカータ族はあなたに従います」

「そんな大げさな……」

「こういうことは、キチンとしないといけませんから」

「そういうところ、フェイジュンと似てるなぁ」

「え!いやでしたか!?」

「フェイジュンちゃん、姉弟そっくりで、ほほえましいって意味ですわ」

「そ、そうですか……?」

「そうだよ。しっかり者の姉弟なんだって感心したんだ」

「仲がいいのは素敵ですのよ。さて、私は手土産にするお薬を作りますわ。

 レオさん、今日出来なかった薬草摘みを、手伝っていただけません?」

「わ、私も行きます!」

「イオも行くにゃ!」

「僕は相手の村に、使いを送っておこう。いきなり行くのは失礼だからね」


 ーー翌朝、薬草摘みに行く途中。


「村の外に出たから確認したいことがある。

 イオのスキルは今、どうなってるんだ」

「にゃ?」

「普通の守護獣は、スキルを一つしか持てないんですよ」

「えっとー……えっとー……にゃうぅん」


 言葉にするのが難しいのか、イオの白いネコミミが困ったようにぺしゃんと倒れた。


「誰もいないからここで披露したらいかがです?」

「そうたな。イオ、見せてくれ」


 少し離れたところでイオにスキルを使うよう指示した。


「いくにゃー」


 ぴょんと跳ねて炎を出す。草原に燃え移った炎を筋力増強スキルを使い、かかと落としで消火した。


「ぱっくんちょ!」


 地面がえぐれた。

 素早さのスキルで、あっという間に俺の前に現れる。


「後はケガを治すスキルにゃ」

「昨日倒した魔物は5体でしたが、増えたのは4つですね」

「スキルとして得られないのか、魔物にスキルが無いのか……」

「スキルを使う魔物は、すごく強いですわ」

「じゃあスキルが無いのかなぁ」

「2種類の仮説が出来ましたね」

「……それにしても、すごく大きな穴ですわ」

「“ぱっくんちょ”はスキルを奪う力じゃないのか?」

「にゃにゃ?大きい魔物から貰ったスキルにゃ」

「スキルが合体したんですか!?」

「分からないにゃ」

「うーん、分からないことだらけだな」

「今のままでもイオちゃんはお強いですわ。

 これからゆっくり知っていっても良いでしょう」

「そうだな。この2、3日で色々なことがあったから、頭が追いつかないよ」

「お疲れでしたら、ひざ枕でお昼寝なさる?」


 いたずらっぽくジゼルが言う。ジゼルは18歳だから、こうして年下の俺をからかうのが楽しいようだ。


「ダメですっ!!!」


 ちなみにフェイジュンは1つ年上の16歳だった。

 こんなふうにジゼルのちょっかいを止めてくれるのは、ありがたい。





 ――数日後。


「レオ総督そうとく、ご武運をお祈りいたします」

「村をよろしくね。ジーウェイ」


 村人たちに見送られて、ラカータの村を後にした。


 次の村、ハリブの村はしばらくすると見えてきた。


「さすが、タイタンとイオちゃんだと、一日もかかりませんね」

「タイタンくんは速すぎて怖いですわ」

「ご主人はタイタンに乗って、気絶したのにゃ」

「イオ!余計なことを」


 村の近くから歩いて向かう。

 馬で行くと、攻められると勘違いすることもあるそうだ。


「久しぶりだね。フェイジュン、ジゼル」


 キリッとした金髪の女の人が出迎えた。


「レオ総督そうとくのことも聞いています。荷物だけ確認しても?」

「どうぞ」

「こちらは私からの手土産ですわ」

「この薬を?ジゼル、いつもありがとう」

「いいえ、お互いさまですもの」


 少ししてハリブの首領に会う許可がおりた。

 50歳くらいの、いかつい男の人だった。


「遠いところをご苦労。ジーウェイからの手紙を読んだよ」

「ありがとうございます」


 何度もハリブ村に通っているフェイジュンが、話をしてくれるとこになった。


「結論から言うと、信用できない。私たちは、神獣さまの力を見ていないからだ。

 ただ、神獣さまが魔物狩りに協力してくれるのは、とても心強いことだと思っている」

「おっしゃる通りです。ですので、一度ハリブの魔物狩りを、私たちもお手伝いできればと思っています」

「それはありがたいな。ただ、村のものと話をする必要がある。時間がかかるが、いいか?」

「承知の上です」


 首領の座りかたに、違和感があったのでつい聞いてしまった。


「足をケガしているんですか?」

「この間な。魔物狩りで、素早さスキルにヤラれた」

「イオの出番にゃ!」


 俺が言わなくても、イオが回復スキルを使う。


「おお、治った。……おどろいたな……。

 回復スキルを使ったんだが、変わらなかったんだ」

「だってイオは神獣にゃ!」

「イオか、礼を言う。だが、まだ総督そうとくを認める訳にはいかない。

 こちらも色々と大変なんだ」


 こうして首領との話し合いは終わった。


「余裕がないように見えたな」

「はい。あの方は、本当はケガをするような人じゃありません。

 周りの村で一番強いと有名なんです。

 でも、魔物狩りが続いて、体が限界なんでしょう」

「回復スキルが疲労の回復に使われて、ケガまで回復できなかったのか」


 思った以上に深刻なようだ。


「力になれるといいな」

「レオさんなら大丈夫です」


 明日の魔物狩りで、イオの力を見せて納得させるのだ。





 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★☆☆

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ヒマリアのスキル(ジゼルの守護獣ビースト

 ・子守唄 ★☆☆



 ◆◆◆

 総督で良いのか、調べたけど不安です。


 読んでいただきありがとうございました。 

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