第7話 裸の付き合いと胸の大きさと王国に入る亀裂

 ジーウェイに案内されたテントは、2つのテントがくっついた形をしていた。

 1つ目のテントが服を脱ぐ場所、2つ目のテントが王国にあるサウナのような、蒸し風呂だ。

 2つ目のテントの出入り口に水が入ったカメがある。 この水で体をすすいで出るらしい。


「うちの村は水辺から遠いので、お風呂は週に2、3回しか準備出来ないんです」


 案内してくれたジーウェイと、並んで階段状の椅子に腰掛ける。


「遠征ついでに水も運んでくるのか……。それも大変だな。

 俺が水スキル持ちだったら、湧き水を出せたのに」

「お気持ちだけでもありがたいです。

 僕が小さい頃は、他の村で温泉に入れたんですが……」

「今は?」


 ジーウェイの顔が暗くなる。


「魔物狩りのノルマが厳しくなってからは、いがみ合うようになってしまって……」

「街でフェイジュンのコアが取られそうになったも、そういう訳だったな」

「はい。王国は、騎馬族を弱らせたいのです。

 だからノルマを作って、通行料や薬代の値上げで搾り取ろうとする」

「どうして、そこまで」

「昔、父が話していたんですが、王国は自分たち以外が、強いスキルを持つのを気に食わないと。

 ……すみません。レオさんは王国の人なのに、こんな事を言ってしまって」

「いいよ、俺もそれで家を追い出されたし。スキル至上主義なんだよな」


 こくりとジーウェイはうなづいた。

 そして、真剣な顔をして俺を見た。そして頭を下げる。


「王国の人にお願いするのは、申し訳ないのですが、レオさんには騎馬族たちをまとめて頂きたい」

「え?俺が?どういうこと?」


 突然の話に追いつけない。


「もともと騎馬族たちは、協力しあって暮らしていました。

 みんなで協力すれば、今のノルマも耐えられると思うんです。

 僕は他の騎馬族を、今でも仲間だと思っています。でも僕には、騎馬族をまとめる力がない」

「そんな……!俺だって無理だろう!この村に来てまだ2日目だ、何も知らない」

「いえ、神獣さまを持つレオさんなら、きっと出来ます!」


 どう答えるか迷っていると、ドヤドヤと村のおっさんたちが風呂にやってきた。


「首領たちが一番乗りかぁ」

「喧嘩かい?聞こえてきたよ」

「同い年なんだろう?仲良くやらないとダメだぞ〜」


 茶化しながら続々と俺たちの周りに座りだす。


「ちょうど良かった。

 僕はレオさんに騎馬族たちを、まとめてもらいたいと考えている。みんなはどう思う?」


 ジーウェイが首領の顔で周りの大人に意見を求めた。


「そりゃ大きく出たな〜。

 まあ、神獣さまがいらっしゃるんだ。上手くいくだろう」

「俺は商売もやってるんだ。騎馬族がまとまると商売しやすくなる。賛成だよ」

「うむむ……他の騎馬族の首領も変わったと言うし、協力はするが……難しいかもしれん」

「俺たちが手こずる魔物を、簡単に退治したんだ。

 レオが総督そうとくになれば、魔物狩りに苦しむ他の騎馬族のためにもなる」

「うん、賛成多数だね。ご飯の時に、改めてみんなに提案しようと思う」

「お、おい!俺をおいて話を進めるな!」


 ポンポンと話を進める村人たちに俺は戸惑う。


「レオくん、俺たちは感謝してるんだ。

 魔物狩りは危険が伴う。今までに何人死んだか分からない」

「神獣さまは希望なんだ。それは他の騎馬族も変わらないだろう」

「どのみち神獣さまがいることはバレる。今のうちに腹くくっとけ!」


 みんなが俺を見て笑っている。

 おおらかな、快活な笑みは最初に村に来たときと変わらない。

 みんなに頼られている、みんなに信頼されている。

 俺はこの人たちの力になりたいと強く思った。


「イオにも聞かないといけないけど、頑張るよ」


 まっすぐみんなを見て告げた。


「レオさん、ありがとう」


 ジーウェイが改めて俺に頭を下げた。

 おっさんたちが、ぐしゃぐしゃと俺とジーウェイの頭をもみくちゃにする。

 自分に役割が出来たことが、なんだかとても嬉しかった。




「ふ〜、さっぱりした」

「ご主人〜!」

「レオくん、ジーウェイくんも!」


 イオとジゼルさんが手を振っている。

 向こうに設置された女湯でさっぱりしたようだ。

 フェイジュンはへこんでいた。


「フェイジュン?なんでヘコんでいるんだ?」

「さっきお風呂で、ね」


 俺の問いにジゼルが苦笑いする。


「イオがおっぱい掴んだからにゃ!ごめんって、あやまったのにゃ!」

「あぁ〜」


 ジーウェイが納得した。


「あぁ〜って!小さいって言うの!?」


 フェイジュンがペチペチとジーウェイをたたく。


「姉さん、そこまでは言ってないよ」

「ご主人、ジゼルはボインボインにゃ!」

「きゃ〜!イオちゃん!!」


 ジゼルが真っ赤になってイオの口をふさごうとする。


「にゃっはっはっ」


 イオは俺に肩車するように乗っかって、得意げだった。







 一方その頃、王宮の一角。

 男が二人、話している。


「レオナード君に、うちの息子が襲われてね」


 話しかけたのはアルベルトの父親だ。

 レオの父親はよそよそしく答える。


「うちにはレオナードという息子はいない。何かの間違いだろう」

「へりくつを。うちの息子の守護獣ビーストがスキルを奪われた。

 これは炎スキルを持つ我が一族、ひいては王への謀反だ」

「謀反?言っている意味が分からんな。

 レオナードの守護獣ビーストはスキルが無かったんだ。宮廷魔術師がすみずみまで調べている」

「どうだか。そちらは我々の仕事に不満を持っていると聞いている。

 無能と見せかけて、息子に何かを頼んだんじゃないのか?」

「バカなことを言うな!

 そもそも、あいつは私たちの息子じゃない!

 今はどこにいるかも知らん!」


 火、水、風、土の四大名家が王を支え、王国を安定させていた。

 その前提が今、揺るぎはじめているーー。


 次回はレオが総督そうとくになることをラカータの村で発表します。


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★☆☆

 ・筋力増強★★☆

 ・??? ★★★


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ヘレネのスキル(ジーウェイの守護獣ビースト

 ・防御 ★★★


 ヒマリアのスキル(ジゼルの守護獣ビースト

 ・子守唄 ★☆☆



 ◆◆◆

 レオは愛称で、戸籍名はレオナードです


 読んでいただきありがとうございました。 

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