Day3-12 お菓子屋さんへ行こう


眠っているノアちゃんをおんぶして、保健室のベッドまで連れていった。


保険医の先生がいたので、挨拶代わりに一発やっておいた。



「ノアちゃんのことお願いしますね」




ーーーーー




珍しく僕一人になった。


さて、これからどうしよう。


『犬も歩けば棒に当たる』で、今までは望まなくても女の子と絡む結果になっていた。



授業がある時に教室に行けばクラスメイトがいる。


お昼に食堂に行けば、キルシュがいる。


この時間、僕から他に誰かに会いに行こうと思ったら……知っている場所がない。



図書館に行ったらラルム先輩に会えるかな。


行ってみるか。


今までは何となく相手の方からアプローチしてきて、流れでセックスするみたいなことばかりだった。


こちらから会いに行くというのは少し恥ずかしいな。


おかしでも買っていこうかな。


買うと言っても……学園内にあるお店なら、生徒はお金を払わなくてもいいらしいが。


お菓子屋さんはどこにあるんだろう。




今は普通科の校舎の近くにいる。


辺りを見回しても案内板なんてなさそうだな。


正門のあたりにあったかもしれないが、わざわざそこまで行くのも面倒だな。


もちろん地図なんて持っていない。


誰かに聞くしかないな。


どうせ道を聞くのならカワイイ女の子がいいな。



……よし、あの子にしよう。



「あの……ちょっといいかな?」


「はいっ!何でしょう?」


「ケーキとかクッキーとか買えるところってどこにあるかな?」


「商店街にありますよ!よかったらご案内しましょうか!?」


「それは助かるよ。お願いできるかな」


「よろこんで!」



元気がいいな。


敬礼ポーズをしながら返答してくれる。



「私、パムムと言います。どうぞよろしくお願いします!」


「ヒロトです。どうぞよろしく」


「ははっ!知ってますよ。ヒロト君のことを知らない人なんて、この学園にはいませんから」


「そっか。パムムも普通科の1年?」


「私は魔術科の1年です!帽子と杖は邪魔だから置いてきてます」


「そうなんだ」



騎士科は帯刀が義務付けられているとキルシュが言っていたが、魔術科は別に帽子をかぶってなくてもいいんだな。



「パムムって、あんまり魔術科の人っぽくないね」


「そうですね、よく言われます!もともと魔力が強い方ではないので、魔術師よりも料理人になろうと思ってます」


「いいんじゃない。目標を持ってるって素敵なことだよ」



何かいいな。こーゆー会話って。



「ヒロト君はまだ商店街には行ったことなかったんですか?」


「うん、そうなんだ」


「学園の生徒はみんな、そこで必要なものとか買ってますよ。いろんなお店があって、大抵のモノが手に入ります」



それって一番最初に知らさせておくべき場所ではないのだろうか……。


もし、これがゲームだとすれば、今僕の進行度ってどのくらいなのだろう……。もしかしてチュートリアルも終わっていないのか?


エロゲーのような世界だけど、ゲームほど親切ではない仕様は一体なんだのだろう……。




学園の敷地は広い。


何となく歩いていただけでは、目的のは見つけられないだろう。


話しながら歩いて、僕とパムムは商店街にたどり着いた。



「あそこがお菓子屋さんです。女の子はみんな甘いものが大好きだから、買って行ってあげるとヒロト君の彼女さんもよろこぶと思いますよ。……それでは失礼します!」


「パムム、ちょっと待って!もし、まだ時間があるなら選ぶのも手伝ってくれない?あと、よかったらお礼をさせてくれないかな」


「時間は全然大丈夫です!でも、私のなんかがお礼をしていただけるなんて、恐れ多いです」


「まあまあ、そう言わずに」



お菓子屋さんの中に入る。


ショーケースの中に美味しいそうなお菓子が並んでいる。


色とりどりなケーキにキャンディ、クッキーや砂糖菓子。どれもキラキラしている。



……うん?



値段が書いてあるな。


心配なので、一応お金のことを聞いておこう。



「あの、お支払いはどうなりますか?」



フリフリしたエプロンを身に着けた店員さんに聞いてみた。


メイド喫茶みたいな恰好をしている。


アルナ・エルナ、双子メイドはそろってシックなメイド服だったが、お菓子屋さんの制服はカラフルだ。



「ヒロト様でしたらお支払いの必要ありませんよ」


「僕なら必要はない……。他の生徒なら?」


「もちろん、お代は頂戴します」


「僕が彼女の分までケーキを頂くことはできる?」


「もちろん、問題ございません」



レストランでも、学食でも、学園の生徒なら支払いはいらないと言っていた。


商店街のお店は生徒なら誰でもタダではないということか。


パムムにはお礼にケーキをプレゼントしよう。



その間にもパムムがケーキを選んでくれていた。


彼女のチョイスはフルーツのタルト。


ミニサイズで手で持って食べられる。


そして、キラキラしている。


……比喩ではなく、発光している。


魔法がかけられているのだろうか。



「美味しそうだね」


「そうですね!ここのお菓子屋さんは発光の効果が付与されていて、見た目にも食欲をそそります。お高いので、私なんかは買うことが出来ませんけどね」


「僕からパムムにプレゼントしようか?好きなのを選んでいいよ」


「え?いいんですか!!」


「もちろんだよ。お礼だから」


「ありがとうございます!」



パムムはものすごい笑顔だ。


敬礼ポーズに加えて斜め45度の角度でお辞儀までする。



「どれがいいかな!どれがいいかな!ヒロト君のために選ぶのと自分のために選ぶのとではまた違った悩みと楽しみがありますね」


「一つでなくてもいいよ。いくつか選んだら」


「いえ!それはダメです。他の人が買いに来て、なくなっていたら申し訳ないです」



結局、パムムは同じものを選んだ。



「小さいタルト一つでいいの?」



僕はラルム先輩のために5個包んでもらった。



「一つで大丈夫です!ヒロト君のお手伝いが出来て嬉しかったです。しかも、ケーキまで頂いて……。友達に自慢ができます!今日はありがとうございました!」


「……変なこと聞くけど、お礼ってタルト一個でいいの?」


「はい!今日の出来事は一生の思い出にします!」


「え~と……モノじゃなくても、何か他のことでもいいけど」


「ヒロト君とお話することができて、しかもタルトまで頂いて……。これ以上に望むことなんてあるわけ……あるわけないです。……でも、言うだけ言ってみてもいいですか?お礼にして頂くようなことを、はるかに超えたようなことなので、嫌なら全然断ってください」


「大丈夫だよ。言ってみて」


「あの……私と……」


「うん」


「あ……握手してください!」






僕は






パムムと






握手






した。











ーーーーー











「いやいや、握手くらいするよ。いくらでも」


「ありがとうございます!いやあ、言ってみるもんですね。すごくうれしいです」


「……あのさ、パムムは僕とえっちなこととかしてみたくないの?」


「ええええええっちなことですか!……会っていきなりですし……人の目もありますし。もし、誰もいなければしてみたいと思いますけど……何言ってるんだろ、私。ヒロト君とえっちをするなら、人前でするのが当たり前なのに……」




一周回って変な女の子と出会った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る