Day2-12 休憩が出来る部屋でキルシュと

休憩が出来る部屋って、ラブホかな?


まさかラブホじゃないよな。


こんな高級そうなレストランの中にラブホなんて。


ないない。




案内された部屋の中に入ってみると、ラブホだった。




壁紙がピンクだった。


床も天井も照明もピンクだった。


天蓋付きのベッドは丸くてピンクだった。


布団も枕もシーツもピンクだった。



「ヒロト殿が止めに入って決着はつかなかったが……正直、生徒会長に勝てるなんて思えなかった。剣の腕もそうだし、女としても……。戦っている時は、そんな思いは振り払って強気でいたがな」



2人きりになったせいか、キルシュは本心をさらけ出した。


部屋中ピンクなんだけど、気にならないのかな。



「飲む?」


「頂こう。これは何だ?」


「さくらんぼのお酒のカクテルだよ」


「粋なことをしてくれるな」



店員さんに頼んでおいた飲み物をキルシュに渡す。


粋?何がだろう……。



「サクランボから作られたお酒を『キルシュ』というのだ。だから、私が成人した時に身内に祝ってもらって、初めて飲んだお酒も『キルシュ』だ」


「へぇ、そうなんだ」


「何だ、知らなかったのか?」


「し……知ってたし」


「ヒロト殿は嘘をつくのが苦手だな」



彼女は目力が強い。


マジマジと見つめられると、目をそらしたくなってしまう。



「貴殿を心の底から『キルシュ』に酔わせてみたいものだな」


「もう僕は『キルシュ』に酔っているよ……」


「ふふっ」


「ははは」



ぱっと花が咲いたように、彼女の表情が柔らかくなった。



「……私の王子様、あなたのことをお慕いしております」


「僕もキルシュのことが好きだよ。僕の騎士で、そしてお姫様」



2人は抱き合った。



「あなたのことが好きです。あなたのが全て好きです」



キルシュが僕の耳元でささやく。



「あなたの顔も好きです。あなたの髪も好きです。あなたの耳も好きです。あなたの首も好きです。目も、鼻も、口も、舌も、歯も、ツバも、声も、息さえも好きです」



僕の顔にキスをし、あるいは吸い、舐める。



「ねえ、王子様。私のこと好き?愛してる?」


「愛してるよ」





僕と





キルシュは





ベッドの上で





夜遅くまで





愛し合った。






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