優しくて深い

内面と外見、双方の美醜をテーマにした物語です。キャラクターが深く作られていて、我儘な令嬢にも背景や想いがあり、容姿に囚われずに相手を見ようと心から思っている王子様的なキャラも、自分ですら気付いていない矛盾や欲を持っています。主人公は強さと優しさを持つけれど、ひどいコンプレックスも抱えていて、ステレオタイプの主人公キャラでないからこそ、社会の理不尽に立ち向かうその言葉が一層胸に訴えかけるものとなっています。構成もしっかりしており、飽きることなく一気読みしました。読後に優しく泣けて、同時にくすっと笑えて、みんな幸せになれると良いなと思える小説です。
作者がリアルに人間の美醜を見ながらも、根本のところで優しい方なんだろうなと思わされます。