これは『復讐』と『青春』の物語

進路希望を提出していなかったせいで教師に呼び出された『僕』。進学も就職も考えておらず教師に呆れられるが、その時に『僕』が思い出したのは、画家志望だった友人である『彼女』のことで――。

まずタイトルの時点で『志望調査』と『死亡調査』となっている言葉遊びが面白いと感じました。
しかし読む前は、あるいは読んでいる最中も「ありがちな大人への反発」「安直な青少年の苦悩」「読者の方を向いていない作者による、鬱屈した内面の発露」といった作品なんじゃないかなと、悪い方向で想定して身構えていました。

ですが最後まで読んでみると、それらの浅い想定や考えは根底から覆されました。教師と生徒の単なる対立ではなく、これはひとつの『復讐』であり『仇討ち』の物語でもあるのだなと思いました。動揺する教師の様子、そこから追い詰めていく『僕』と、短編でありながら非常に濃いドラマ性を感じました。
そしてラストに関しても「まぁ、そういうオチになるだろうな」と予想はしており、実際その通りにはなったのですが……。それでも最後の行動は結果だけを見れば悲劇的でありつつも、不思議と爽やかな『青春っぽさ』も感じました。放課後の屋上で景色を眺めて風を感じて「好きだ」と言ってくれた歌を歌ってあの子の名前を叫ぶって、そりゃもう青春でしょう。

タイトルやあらすじから予想できる内容でありつつ、表現や演出の部分で読者の予想を大きく裏切った手腕は『お見事』の一言に尽きます。
短編としてはかなり完成度が高いと思いました。作者さん渾身の一作と言って差し支えないと思います。