黒髪ポニテ先輩の頭がトんでる件について

化霧莉

第1話 はじまり!

「行ってきまーす!!」

 現在は朝の7時15分。

 今日は日直だから早めに家を出ないといけなくて、バタバタと朝ごはんを食べて家を出る。

 僕の名前は、橘悠吾。普通の冴えない見た目の17才の高校生だ。

 僕は家の近くにある高校、私立神慶高校に通っている。

 僕に関してになるが、現在母が幼い頃に亡くなり父は単身赴任をしているため高校生ながら僕は一人暮らしをしている。

 そんな回想しながら通学路を歩いていると後ろから、

「おーい!悠吾ー!!」

「おはよう、敦志」

 僕に話しかけてきた男は、同級生かつ同じクラスの故里敦志(こさとあつし)だ。

 あまりクラスで目立たない僕に、気さくに声をかけてきてくれるコミュニケーション能力が高い僕の数少ない友達だ。

「お前、今日日直だったろ?」

「そうだけど……どうしたの?」

「いやー、宿題分からなくてさ。悠吾に教えてもらおうと早く登校したんだよー。お願い!!」

 手を合わせ、僕に懇願してくる。

 無碍には出来ないし、いつも仲良くしてくれてるから助けになりたい。

「いいよ、学校着いたら昨日の復習しようか」

「ありがとうー!!助かるー!!今日数学の時間絶対先生にさされるからやっておかないと怒られるから……」

 頭を掻きながら彼はそう答える。僕も助けになれるなら嬉しいもんだ。

 そうこうしているうちに、学校へ辿り着く。

 現在は7時45分。

 校門を抜け、昇降口で靴を履き替え自分の教室に向かう。日直だから早めに来たのだけれど、教室から物音がする。ドアを開けると

「おはよう、橘君」

 と僕に声をかけてくれるとても物静かな雰囲気で眼鏡の似合う緑髪のボブショートの女の子、城野楓さんが教卓の掃除をしていた。

「おはよう、城野さん」

 僕は挨拶を返す。かなり僕的にも早く登校したつもりだったが、彼女の方がもっと早かったみたいだ。

「おっはよー、楓ちゃん!!」

「おはよう、今日も元気だね敦志君」

 敦志も城野さんに挨拶をする。誰にでも分け隔てなく関係を持つ彼を僕は尊敬している。あまり僕自身はコミュニケーション能力はないため(話しかけてくれれば普通に喋れるが……)

 本当に凄いと思っている。

 僕も日直の仕事に取り掛かろうとしたら、

「もうだいたい朝の日直の仕事は終わってるよ」

「えっ……早くない??」

「そんなことないよー。普通にやっただけだから」

 この城野さんはそつなくなんでもこなせちゃう子なのだ。本当に面目無い感じだ。かなり仕事の量もあっただろうに……。

「なんかごめんね……もっと早く来れば良かったね」

「ううん、気にしないでー。敦志君、こんなに早く来るなんて多分宿題やってないんでしょ?そっちを手伝ってあげて」

 敦志が宿題やってないことまで読んでいるのか……。この子本当に凄い子だ。

「城野さんに感謝しなよ。じゃあ宿題やろうか」

「見せてくれれば大丈夫だってー」

「いや、過程が分からなかったら先生に突っ込まれるだろ?」

「あー、確かに……。じゃあ教えてくれ……」

「おっけー。じゃあ、問1からいくぞ」

 僕は敦志に数学を教え始める。ふと目を城野さんに向けるとニコニコしていた。なんでだろうか。

 そして教え終わったら、もういい時間だ。

「ふー、お前の教え方は本当に分かりやすくて助かるよ。将来先生でも目指したらどうよ?」

「うーん、やりたくなったら目指して見ようかなー。勉強も嫌いじゃないし」

 将来の夢なんて考えもしなかったけど、悪くないのかもな。

 そんな事を考えてたらチャイムが鳴る。

 今日の日直は僕だ。流石にここまで城野さんに任せられない。頑張ろう。

「起立、礼、着席」

 今日の一日が始まった。



 一・二限目が終わり、教室を移動することに。

「慎吾ー、行くぞー」

「ちょっと待ってー」

 僕は使う予定の教科書やノートを集めて、敦志に着いていく。

「あのさあのさ」

「どうしたの?」

「唐突な話題なんだけどさ、一個上の細流先輩ってさ綺麗だよなー」

「ほんと唐突な話題だね。確かに綺麗な人だよねー」

 考えながらそんな話をしてると、目の前からその細流綺乃(せせらぎ あやの)先輩が教科書を持って歩いてくるじゃあないか。

 漆黒の長髪に凛とした整った顔つき、その中でも少しつり目な所がまた良いのだ。そんな目で見られたら良い意味で少しゾクってしてしまう。逆に怒らせたりなんてしたら、尋常ではない眼力との事。

 整った顔も持ちつつ、スタイルもとてもいいときた。胸は立派なものを携えて、腰もしっかりとくびれがあり年頃の男子の視線を釘付けにしている。その上で勉強も出来、テストも毎度学年10位以内に入るほどだ。まさに完璧と言わざるを得ない、二次元の世界から来たのではないかと言われてもおかしくない人だ。

 敦志はめちゃくちゃ舐め回すかのように、細流先輩ことを見ている。

 僕は前を向くと、そんな人と視線が合う。

「おいおい、先輩がこっち見てるぞ?」

「ソ、ソウダネ」

 流石に思春期の男子だし、目を合わせるのもちょっと気が引ける。だから僕はささっと目を逸らし、次の授業の教室に敦志を置きざりにして駆け出す。

「お、おい!!ちょっと待てよー!!」

 敦志も僕を追いかけて走ってきた。

「なんだよー、こっち先輩見てたのにー」

「あんまりジロジロ見てたら失礼だろ?」

「いや、あの容姿で見ない方が失礼じゃんか」

「そんな言い方するなよ。本人からしたら見られたくないかもしれないだろう?」

「ま、まぁな……」

 細流先輩も好んであの容姿で生まれたかった訳では無いかもしれないし。

 そんな事をしていたら、次の授業のチャイムが鳴る。

「やっべぇ、急がないと!!」

「敦志!!ま、待ってー!!」

 僕達は猛ダッシュで次の教室へ向かった。


 終業のチャイムが校内に鳴り響く。

 帰りのHRも終わり、平日の平凡な学校生活の

 一日が終わりを告げた。

「じゃあな悠吾、また明日」

「うん、またね敦志」

 敦志はサッカー部に入っているため、これから部活である。そんな僕は帰宅部なのでこれから家に帰るのだ。

 基本一人暮らしのため家に帰ること自体、嫌ではないんだけど……。

 通学路を歩き、自宅の玄関前に辿り着く。

 ふぅー……と深呼吸して家の玄関を開ける。

「ただいまー」

 すると

「おかえりなさいー♡」

 と甘い声を出しながら、パタパタとスリッパを鳴らしこちらへ向かってくる女性が一人。

「学校お疲れ様♡」

 なんて声をかけながら、あの学校で有名な細流先輩がポニーテールをして美しすぎるくらいの笑顔で迎えてくれるのだ。

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