泊まらせてあげて

何かあったのかをしつこく聞く勇気がでなかった。


「いただきます」


「めちゃくちゃ、美味しいね」


「うん、ビールとってくる」


「うん」


ビールをとって戻ると、美陸みろくが、膝掛けをかけていた。


「眠ったのか?」


「うん」


「寝顔、綺麗だな」


「僕ね、りーちゃんは、何か抱えてる気がするんだよ。だって、綺麗な人でしょ?」


「そうだな。痩せたら可愛いとか綺麗だとかって言う人がいるけど…。俺も、りーちゃんはこのままでも綺麗だと思うよ」


二人で、寝顔を見ながら話す。


「女性でいるのが、嫌なんじゃないかって感じるんだ。だからって、男になりたいとか、女の子が好きだとかじゃなくてね。性に対して、嫌悪感がある気がするんだよね。なんとなくだけど…。」


「何かわかるな。葉月さん、頑張ってるって感じするしな。何か、色々抱えてるんだろうな。」


「向こうで、飲もう」


「うん」


俺は、美陸とダイニングに戻った。


ビールをグラスに注いだ。


「今日さ。りーちゃんが、おかしな事を言ってたんだよ」


「なに?」


「杖と防犯ブザーで助かったとかって…。それってさ」


「襲われたって事?」


「俺も、そう思ったんだけど…。言いたくない事を無理に言わせたくなくてさ」


「僕が、朝、お弁当もらいになんて行ったからかな」


美陸は、泣いてしまった。


「俺も、職場で仲良くしすぎたんだよ。」


「もし、そうなら、どこまで、されちゃったのかな?僕とかずくんじゃ何もしてあげれないよね」


「そうだな…。」


「一緒に居たって、辛い思いさせるだけだよね」


美陸は、泣いていた。


俺は、葉月さんを見つめる。


俺達が、葉月さんを傷つける。


俺達のせいで、葉月さんが何かされる。


それでも、葉月さんはここに来てくれた。


「美陸、俺やっぱり、りーちゃんの為に何かしてあげたいよ。」


「僕も同じ気持ちだよ」


美陸は、涙を拭って笑った。


「俺達が、出来ることをしてあげよう。」


「そうだよね。そうしてあげたい」


美陸は、笑った。


葉月さんが作ってくれるご飯は美味しい。


俺は、葉月さんを見つめていた。


「今日は、ゆっくり休ませてあげよう」


「うん、そうしよう」


俺と美陸は、葉月さんを寝かせてあげた。


葉月さんの未来が、幸せで溢れていて欲しい。


俺達は、寝室にきて寝転がった。


美陸は、俺に話し出す。


「りーちゃんと一緒にさ!」


「うん」


「この街出ない?」


「でも、美陸。今の仕事好きじゃないのか?」


「好きだよ。でも、それよりもりーちゃんを守ってあげたいんだ。僕に出来る事をしてあげたい」


「それなら、俺も仕事やめるよ」


「かずくん、僕達で幸せにしてあげよう。」


「無理かもしれないよ」


「無理でも、してあげよう」


美陸は、俺の手を握りしめた。


俺も、葉月さんを幸せにしてあげたい。


無理かもしれない。


でも、無理じゃないかもしれないだろ?


俺は、目を閉じた。


朝、トントンと言う音が聞こえて目が覚めた。


「ふぁー。」


美陸は、まだ眠っていた。


「あっ、起こしましたか?」


キッチンで、葉月さんが料理を作っていた。


「ううん、大丈夫」


「朝御飯、もうすぐしたら出来ますから」


「うん、歯磨いてくる」


俺は、洗面所で顔を洗って歯を磨く。


戻ると、葉月さんはお味噌汁を作っていた。


卵焼きが、綺麗に作られている。


「りーちゃん」


「はい」


「仕事辞めて、俺達と逃げない?」


葉月さんは、驚いた顔を向けた。


「何でですか?」


「何でだろう。守ってあげたい、幸せにしてあげたい。そんな理由じゃ駄目かな?」


「でも、私。こんなんだし。」


「関係ないよ」


「おはよう」


美陸も、起きてきた。


「歯磨きしてきなよ!」


「うん」


「それで、話したい事あるから」


「うん」


美陸は、洗面所に向かった。



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