25.悪役令嬢

 なんですのなんですの‼


 一体全体、お兄様はなんなんですの⁉


 人がせっかく身分も名前も問題のお兄様も忘れてリーヴェルに来たというのに‼


 どうしてそう、素敵に格好よく登場出来ますの‼


 思いましたよ!


 そりゃあ思いましたよ!


 リーシャと一緒に囚われている間、お兄様が助けに来てくれたらいいなと。


 お兄様ならきっと助けに来てくれると。


 でもそれが都合の良い話で。


 あり得ない事のなのも分かっていましたよ!


 なのに、なのに、


 来ちゃってますわよ!


 これでもかってくらい、絶妙なタイミングで助けに来ちゃってますわよ!


 ピンチ中のピンチに助けに来ちゃってますわよ!


 どこの白馬の王子様‼


 そりゃあ惚れますわよ!


 リーシャだってぇ惚れちゃいますわよ‼


 あれ以来、リーシャが上の空なんです!


 自分の体を盾にしていたいけな少女を守る。


 どこの専属騎士⁉


 そのような事をされたら、乙女なら誰だって惚れるに決まってるじゃないですか‼


 お兄様の手掛かりを持たないリーシャは、お兄様に会う為に、王都の学園に行く事を決意しました。


 お兄様が学園にいる確証が無いにも関わらずですよ⁉


 それほどリーシャは本気なのです。


 王都の学園は才能さえ有れば身分に関係無く入学出来ます。


 幸いリーシャには才能があります。


 しかし、学校に入る為には適正試験をクリアしなくてはなりません。


 素質のある者でも、専属の家庭教師を付けて才能を開花させねば試験をクリアできないのが通常です。


 だから、


 だからリーシャは私に教えを請いました。


 だああああああああああああああ‼


 魔法なんて使うんじゃなかった!


 見せるんじゃなかった!


 貴族の出だと、勘付かせるんじゃなかった‼


 何故、自ら恋敵を育てねばならないのですかお兄様‼


 しかも、恋愛相談までされるお始末‼


 おかげで最近、意味も無くリーシャに辛く当たってしまう自分がいますわよ‼


 呪います。


 恋のライバルにすらなれないこの身を呪います。


 ついでにお兄様も。


 むしろお兄様を‼


 もう! 積りに積もった怒りと嫉妬と呪いが有頂天でマッハゴーですわ‼



 こうして、怒りと、友情と、愛情と、呪いと、嫉妬に挟まれながら思春期を迎えたエリナ・クランベルは、五年の時を得て、図らずとも、グレにグレまくり、天然の悪役令嬢へと生まれ変わりましたとさ。


「パンが無ければクッキーでも焼けばいいのですわ‼」

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