第12話 ジャンボミドリガメ②
12話 ジャンボミドリガメ②
立ち尽くす聖一。
とりあえず聖一はジャンボミドリガメをゆっくり見てみることにした。
(ふむふむ。こりゃ100mはあるかな。甲羅の頂点は通天閣くらいかなー。っていうかピクリともしなくなったなこいつ。)
「まじ、なんでやねん。なんですけどこの亀。ほんまなんやねんこいつ。通天閣とだいたい同じサイズやさかいにほんましゃーないやつや。」
「え?聖一なにその喋り方?」
「ああ、なんでもない。へへ。」
(変なスイッチ入っちゃった。でもほんとにこのままほっといたらダメなのかな?)
「なあ?ほんとにこのままほっとくのはまずいのかな?」
「まずいわよ。」
「説明するです。この世界の魔物は魔素と邪素を含んでいます。邪素は周りを凶暴化させるパワーを含んでいるのでありますです!!だからこれだけ大きいこのカメさんはたくさんの魔物を活発化させてるし凶暴化させてるし巨大化させてますです。」
「しかもジャンボミドリガメは、普段はおとなしいけど、さっき尻尾を振り回していたように気性の上がり下がりが激しいのよ。ジャンボミドリガメの被害にあって潰された街は少なくないって冒険者ギルドにも報告があがってるわ。」
「そうか。よし!!!じゃあこの亀には悪いがやっぱり討伐させてもらう。」
シャマとマホの説明により納得する聖一。決意を元にジャンボミドリガメを討伐することに決めた。
(とは言ったものの……どうやって倒そうかなー。)
聖一は、腕を組んで眉間にシワをよせる。
しばらく考えたあと、人差し指をピンと立てた。
(あ、マホのバイブレーション!うん。とりあえず揺らしてみるか。)
「マホ。バイブレーションでとりあえず揺らしてみよう。」
「OK!バイブレーション!!」
振動魔法でジャンボミドリガメを揺らしてみる。
しかし動く気配は無いようだ。
(うわー。特に効果なしか。でもお陰で作戦が浮かんだ。)
「うーん、ダメね。効果なしよ。」
「よし。皆手伝ってー!」
なにかを思いついた聖一は皆を集める。
「はーいじゃあ良い子のみんな!弾性のある細い木を集めよう。」
「なによその喋り方。」
聖一は教育系の工作番組みたいな喋り方で皆に指示を出す。
「集まったかなー??すごいね。えらいねー!よく頑張ったねー!じゃあその木の枝をまるーい形にしましょう。…出来たかな~?そしたら今度はー、そこに棒をくっつけてー。葉っぱを乗せて~。よし完成~♪」
「だからなんなのよその喋り方。私たちの事何歳だと思ってんのよ。で、なにを作らされたのよ?」
「これはなんでありますですか?」
マホとシャマがなにを作らされたかわからないとキョトンとしているとスミスドワーフのスミフがピンときたようだ。
「聖一さん、これってうちわだよね?僕工芸品の勉強の時に見たことある!」
「正解~!」
枝で円を描いてその中に葉っぱを張り、振れる用に棒をくっつけた。スミフはどうやら見たことがあるようだ。
「はいじゃあ皆!ひとり焼肉の時間でーす!」
といって今は引っ込んでいる両手両足しっぽ頭の前に炭を置く。
「肉でも焼いて食べながら皆で煙を流し込もう!そう!そのうちわで!!」
マホが頭、シャマが左前足、アントが右前足、スミフが左後ろ足、ハイエルが右後ろ足、ハネビがしっぽの前に立つ。
皆それぞれの部位の前に立って炭をうちわでパタパタとジャンボミドリガメの体内に流し込む。
(あまり煙が中に入っていかないな。想定どおり。)
聖一は甲羅の上に登り皆を見渡している。
「マホー!」
「なにー?」
「バイブレーションたのむー!」
「はーい!」
マホにバイブレーションを使ってもらい、小刻みに揺れるとわずかな隙間が出来るので、そのほんの少しだけ出来た隙間から煙を流し込んでもらう。
「よし皆!いまだ!
…あおげー!!」
しばらく流し込んでいるとグググという音がする。
(お?来るか!よし。煙のもくもくが嫌になって頭出してこい!と、その前に。)
「力場!力場!力場!力場!力場!力場!」
全員の前に盾から槍が何本か飛び出しているような形の力場を出す。
(トゲが長いスパイクシールドだ!!!!)
「来い!」
シュコン!!
と大きな音と共にジャンボミドリガメは両手両足しっぽ頭を勢いよく甲羅から出す。
両手足としっぽは、ズボ!!と音を立ててトゲの槍が刺さり、血が吹き出す。
そして、盾の部分で完全に動きを止める。すごい勢いだったが盾で止められた。ガチン!!という轟音を立てる。
そして、頭に勢いよくトゲの槍が刺さりそのまま脳しょうをぶちまけた。
「ギャイイ!!!」
盾の形をした力場で守られているはずなのに飛び散った脳しょうが、のどちんこに吸い込まれるようにマホの喉に詰まった。
「ゲフ!おえっー!」
(なんとか倒した。)
聖一は深呼吸をしてから大きい声で喋り出す。
「よっしゃー!!!なんとか倒したな!!」
「やりましたです!」
「おえっー!ゲホゲホ!」
マホがまだ咳き込んでいる。
各部位に散らばっていた皆がジャンボミドリガメの頭のあたりに集まり出す。
聖一はマホの背中をさすりながら喋る。
「またキングドラゴンとは違った厄介さを持った奴だったな。よし皆!今日はもう風呂に入って休もう!!」
夕方前だが小屋を出して風呂にはいってご飯を食べることにする。
(はぁー風呂気持ちいい。バトルのあとは特に良いなぁ。亀ってどんな味かな?楽しみ。楽しみ。ムッフー。)
足の肉を7人分切り落として残りはブラックホールに入れてある。
早速、聖一はジャンボミドリガメを調理をしてみることに。
(さて、まずは塩で刺身でいってみるか。)
「ん、こ、こ、これは!すっぽんだ!!」
ジャンボミドリガメという名前だけあって、淡水の亀のような泥臭さがあるかも。と考えていただけに、あまりの美味しさに喜ぶ聖一。
(よし鍋だな)
ハイエル等に自生していて食べられるキノコとネギのような草があると聞いて採取。それを鍋に入れる。
「よし皆!亀鍋の完成だ!いただきまーす!パクっ。うまーい!!」
「はふはふ美味しいわね」
「もぐはふもぐはふ。美味しいでありますです。」
すっぽんならぬジャンボミドリガメ鍋を堪能して、日が落ちる前に全員爆睡。そのまま朝を迎える。
そして朝になって出発。ほどなくしてワガマチの前に着いた。
(よし!帰ってきた。キングドラゴンに盗賊にジャンボミドリガメとシャマや皆との出会い。なかなか濃い冒険だった。)
「あ、そうだ!でありますです!」
「ん、どうしたシャマ?」
シャマがカバンをゴソゴソと、しはじめた。
「この世界樹の枝を差し上げたいです。これがあれば魔法の触媒として段違いの素材です。マホさんの杖の素材としては最高級でありますです!」
「え?!いいの?嬉しいわ!!キングドラゴンの眼球と世界樹の枝で私の杖を作ればきっと新しい魔法も使えるわよ!!聖一!!」
「おおっ!!!!それはすごいな!シャマナイス!!新しい魔法かー。ふふふ。ワクワクするなー。」
(ふふふ。魔法♪魔法♪)
2人で出発した旅も人数が増え、7人となってワガマチに帰ってきた聖一達であった。
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