ゲーム9:ナイスデート対決①

 誰が早織を自分のものに出来るか競うグループ

 参加者 健吾・勝太・弘人・いおりん♪・かず

 

 伊織『さぁ、次なるゲームをやっていこうじゃないの』

 健吾『はい』

 伊織『来週の日曜日はみんな空いてるよね?』

 弘人『すみません、僕予定が』

 伊織『空いてるよね?』

 弘人『あの』

 伊織『ね? ね? ねぇ?』

 弘人『空いてます!』

 伊織『よろしい』

 伊織『今のうちに全員に説明していい? 既読四になってるし』

 勝太『はい』

 伊織『九個目のゲームはズバリ、「ナイスデート対決」だよん』

 かず『ついに来たか』

 伊織『ルールは簡単、どこでもいいから自分の彼女と一緒にデートをして、いかに相手を楽しませることができたかで勝敗が決まるってわけ。簡単でしょ?』

 健吾『そーっすね』

 伊織『別に外国とか行ってもいいけど、支払いはもちろん自分の懐を炒めてください』

 勝太『?』

 伊織『痛めて』

 弘人『自腹っすか? 僕、ちょっと貯金がやばい』

 伊織『そういう人は、今すぐグループの退会ボタンをポチッと』

 弘人『出します……』




 ――この辺りでデートスポットって言ったらもうとよやま園くらいしかねぇじゃんか。

 健吾は唸る。

 よりによって早織をとよやま園でってのは、前の出来事もあって気持ち悪い。

 たまたまトイレで早織と遭遇するなんて思ってもいなかったのだ。ナンパしようかとも思った、でも、俺の頭には別の女性の姿がよぎっていた。結果、止めた。勝太とデート、大丈夫? って聞いた。早織は、「もう最悪」と答えた。




 ――この辺りでデートスポットって、とよやま園以外何があんの?

 勝太は唸る。

 よりによって再びとよやま園でデートなんて、絶対不吉なことがあるに決まってる。だからと言ってそれ以外に何もない。

 ショッピングセンターなんて言うのは選択肢の一つだが、あいにく俺はこの前漫画を大人買いして財布の中からホコリしか出てこないのだ。

「あーあーあー」

 俺は思い切り頭を抱えた。




 ――このド田舎にデートスポットってあるわけないっしょ!

 一樹は顔をしかめる。

 一緒にデートするとしたら何をしたいか? 遊園地、水族館、高級レストラン、カフェ、夜景、ショッピング、ホテル。

「あぁー」

 そんな金はどこにあるというのか。

「せめて補助金くらい出してくれてもねぇ?」

 うーんと一樹は頭を抱えた。




 ――ここにデートスポットってあんま無いなぁ。

 弘人はうーんと考えていた。

 ――デートスポットが無いのならもう仕方がない。家でデートするしか無いのかなぁ……。




 伊織『そうだ、組み合わせ発表しとかないと。今回一緒にデートする人を発表します。多分知ってる人ばっかりだしね。まず、健吾君は平良真緒ちゃんと』

 勝太『あ、あの美白美人……』

 健吾『セクハラだぞ。セクシャルハラスメント、セクハラ』

 伊織『勝太君はあずきちゃん。ここもおなじみでしょ』

 伊織『それでそれで。弘人君は朱ちゃん。知っての通り』

 伊織『で、一樹君はもう分かるでしょ?』

 かず『鍵山樹莉キュンっすね』

 伊織『ザッツライト! じゃ、ざっとそれぞれの好みを説明しておこうかなぁ?』

 勝太『お願いします』

 健吾『俺も』

 弘人『僕も』

 かず『Me too』

 伊織『ええっとね、まず真緒ちゃんがすごいスポーツ観戦が好きなんだって。基本何でも観るらしい。あと、スイーツ好きで、樹莉ちゃんが刑事ドラマ大好きで、花も好き。朱ちゃんは日本画と写真撮影。で、あずきちゃんはその名の通り和菓子。寺社仏閣とかも興味あったりするらしいよ』

 健吾『おぉーじゃあサッカー観戦っすね』

 かず『刑事ドラマて……?』

 弘人『写真? 日本画? どういう趣味してるわけ?』

 勝太『和菓子ね。それはまあ、まだいいんだけど、寺社仏閣って俺全く興味ねぇんだけど……タスケテ』




 寺社仏閣。さらに和菓子。隣の城下町を訪れることは必至だった。

「さぁ、どういうプランを立てようか……」

 紅葉にはまだ早い。そこら辺の和菓子屋さんはすぐに出てきた。寺社仏閣ももちろん盛りだくさんだが、どれも聞いたことのない名前のものばかり。

「意味わからん……こんなデートしなきゃいけないってどういうことよ……レール外れてるって……」

 半ば方針しながら、勝太はスマホの画面をサッサッサとスワイプしまくった。




 写真に日本画。かなり難しい。

 日本画なら、近くの美術館がある。それだけでもう十分じゃないのかと思えてくるが……。写真と言ってもかなり幅広いだろう。何を撮るのかによっても大きく変わってくるだろうし。

 何より、あれだけ歴史教えてて理解でいないと言いながら、日本画が好きとはどういうことか。

「あーっ」

 今すぐスマホを叩きつけたくなってきた。

 隣の美術館までの行き方は割とスムーズだが、問題は交通費。すでに千四百円もかかる計算。さらに美術館は日本画の特別展込みのチケットで、千五百円もする。食費もかかるだろう。

「一食千円だとすると、これだけで四千円弱……? あ」

 頭の中に電撃が走った。

「かける二とか、終わってんじゃんかよ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る