第十五話 突入開始
「ふぅ……ノアはまだかな?」
スラム街の外に出た俺は、キョロキョロと辺りを見回した。すると――
「カインっ」
ノアが建物の陰から飛び出して、俺の目の前に立った。
「うわっ びっくりした!……て、ノアか……」
俺はかわいらしい声を出しながら飛び出してきたノアを見て、額に手を当てながら、軽くため息をついた。
「それで、場所は分かったのか?」
「もちろん」
ノアは誇らしげに
俺はそのことに一瞬驚いたが、左手をノアの背中に回すと、右手で頭を撫でた。
「むふふ~」
ノアは目を細めて、喜んでいた。まるで、親に抱き着く子供のようだ。
(やっぱかわいいな……)
俺は、そんなノアの仕草をみて、
「と言う訳で、案内してくれないか?」
一段落ついたところで、俺はノアにそう言った。
「わかった。じゃあ、ついて来て」
ノアはそう言うと、人目のつかない路地裏に移動してから飛んだ。
俺も〈創造〉で鎧を作って身にまとうと、〈操作〉で飛んだ。そして、そのままノアの後をついていった。
「え~とね……あ、あれだね」
ノアは一つ上の建物の上に下り立つと、そこから一つの建物を指さした。俺も、ノアの隣に立つと、念の為、隠れながらその建物を見つめた。
「なるほど……俺じゃあよく分からないけどノアなら分かるか? この中に何人人がいるのか」
俺ではうっすらとしか気配を探ることが出来なかった為、ノアの感覚を頼ることにした。
「え~とね……この建物の下にみんないるね。人数は十六人だよ」
「下……てことは地下か。分かった。一先ず準備をするか」
俺はそう言うと、〈創造〉で大量の短剣を作った。そして、腰につけてあるマジックバッグの中に入れた。
「じゃあ、突入するぞ。どこから入るのかについては、気配を探れるノアに任せる」
俺がそう言うと、ノアは「うん。任せて」と、
「じゃあ、ついて来て」
そう言うと、ノアは建物の上から飛び下りた。俺も〈操作〉で落下速度を抑えながら飛び下りた。その後、ノアは目の前にある建物のドアを足で蹴って破壊すると、そのまま中に入った。
「すげぇ力づくだな……」
まあ、ノアもそれほど怒っているということだろう。足にとてつもない怒りが込められているのがよく分かる。あの威力で蹴られたら、大抵の生き物の腹にぽっかりと穴をあけられるだろう。
そう思いつつも、俺はノアの後に続いて建物の中に入った。
「じゃあ、これを付けて……と、はあっ」
ノアはシザーズを両手につけると、ちょうど異変に気付き、上に上がってきた二人の男の首を切り落とした。
「じゃあ、俺も準備をするか」
俺はそう言うと、マジックバッグの中から、さっき作った短剣を全て出し、〈操作〉で俺の周りに浮遊させた。
「よし、ノア。同時に突入するぞ」
「分かった」
俺はそう言うと、地下室への入り口の前に立った。下を見ると、二人の男が剣を構えて待ち伏せしているのが見えた。
「では、行くぞ!」
「うん」
俺の合図と共に、俺とノアは地下室へ下りた。待ち伏せしていた二人は、俺が〈操作〉で動かしている短剣を飛ばすことで、難なく殺した。そして、二十メートルほど下りたところで、ようやく地下室についた。だが、地下室に着いた瞬間に、俺は早速歓迎を受けた。
「はあっ」
階段を下りてすぐ横にいた男が、俺めがけて剣を振り下ろした。だが、あれだけ殺気が漏れていたら、この程度簡単に防ぐことが出来る。
――キン!
俺は階段であらかじめ作っておいた鉄盾で防ぐと、〈操作〉で動かしている短剣の内、数本をその男に突き刺して殺した。
「ノアはそっちの五人を頼む。俺はこっちの三人をやる」
「分かった」
俺はノアの返事を聞くと、前方にいる三人の男を見た。
「なるほどな。ボスが警戒する理由がよく分かった。だが、流石に二人はなめすぎだ」
男はそう言うと、氷の槍を三つ飛ばして攻撃してきた。恐らく〈水術士〉のスキルだろう。
「だが、それくらいなら防ぐのは簡単だな」
俺はそう呟くと、手に持っていた鉄の盾を〈創造〉でさらに厚くして防いだ。
「ちっ ボスの言う通り、何のスキルか全然分からないな。だが、俺ばかり見ていていいのかな?」
その言葉と同時に、左右から二人の男が襲ってきた。
「「死ね!!」」
二人はそう叫びながら、剣を振り下ろした。だが、俺は慌てない。
「お前こそ俺ばかり見ていていいのかな?〈操作〉剣雨!」
実は、この部屋に入って最初に襲われた瞬間に、俺は短剣のほとんどを天井に上げていたのだ。その為、剣雨を使うことが出来るという訳だ
「ぐがっ」
「がはっ」
「ぎゃあ!!」
三人は、上から降り注ぐ短剣に、なすすべなく倒されていった。
「さてと、ノアの方は……お、もう終わってたのか」
視線の先には、既に切り刻まれた状態で、地面に倒れている男五人と、その横でシザーズに付いた血を振り払うノアの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます