第40話 降臨 × 今までに感じたことのない感覚
「はぁ……」
何回もため息をつきながら、英人は帰宅した。
あれからもミスが続き、今日は上司にこっぴどく怒られた。
『なんでか、今日は厄日だったなあ』
そう思いながら、いつものようにパソコンを起動し、チャット画面を2つ開く。
『ピロンッ』
メッセージの着信音が鳴った。
『仮装パーティーへのご招待 eightersより
こんにちわ。
僕たちと会う場所を、アメリカにするか日本にするか、悩んでいるだろうと思ったので、みんなで相談の結果、英人さんに気軽にアメリカに来てもらえるように、仮装パーティーをしようと計画しました。
僕たち全員も、当日は仮装してお出迎えをさせていただきます。
なので、英人さんも何か仮装して下さいね。
日程は、日本のお盆に合わせました。もう航空機のチケットは、そちらへ郵送手配済みです。
空港に着いたら、迎えを用意しておりますので、お声がけするのをお待ちください。
そのまま一度ホテルに案内するので、衣裳に着替えてもらい、また車に乗って僕たちの家へ案内します。
僕たちは、英人さんの仮装を楽しみにしています。
では、会える日を楽しみに。
eightersより』
これは……
これは、ワクワクするっ!
英人の脳が、思考を認識する間もなく、仮装衣裳や、コスプレ、動物、ヒーロー、妖怪、ありとあらゆるものを、映像化していく。
英人には、今までに感じたことのない感覚。
身体中に血が巡っているのがわかる。
深呼吸して、落ち着いて考える。
流石、いいところを付いてきたな。ワクワクしまくっちゃってるよ。でも、仮装って、8人もいるから、被っちゃうと最低だよな。
俺がどんな姿で彼らの前に現れるべきか。
それは俺にしかない妄想で、知識を捻り出さなければ!
そして、絶対に彼らと被ってはいけない。その可能性をゼロにしなければ!
一時間
……
全知全能神のゼウスとか?
二時間
……
エジプトミイラとか? なんとなく被りそう。
三時間
……
海外で有名なアニメのキャラとか?ベタだな。
……
『神が降臨した! これだっ!』
英人はメッセージを返信する。
『親愛なるeighters様へ
三度に渡るメッセージをいただき、ありがとうございます。
また、私を熱心に見てくれていたようで、驚きでしたが、それを知れてうれしかったです。
私のどこを気に入っていただけているのかは、わかりませんが、ポテチ×コーラ動画も楽しく見させていただきましたし、驚きもしました。
そして、仮装パーティーへのお招き まことにありがとうございます。
是非、参加させていただきます。
私もeightersの1ファンなので、当日お会いできるのを楽しみにしています。 久里 英人』
送信。
英人は、既に仮装に頭が行っているため、当たり障りのないメッセージを送信した。
よし、まずは全身タイツだな。
後は、15mmぐらいのやつを何種類かと10cmぐらいのやつを数種類と、長いやつを数種類だな。少し綺麗なのと可愛いのもいれて、注文しよう。
よしっ!
通販で注文を終えた。
明日からは定時帰社して、衣裳づくりだな!
翌日から作業は始まった。
そそくさと足早に帰宅する。
タイミングよく、宅配便が届いてさっと受けとり、全て部屋に広げて分類する。
まずは全身タイツにベースの15mmのやつを全体に縫い付けていく。
全身タイツの右腕は、肘から下をカットした。
『握手するだろうし、右腕は動きやすくしておかないとな』
毎日、帰宅しては衣裳を作って行く作業に没頭したが、英人は、議論チャットがなくても、不思議とストレスが溜まらなかった。
全身タイツに15mmのやつが、何種類も縫い付けられ、もう、タイツが見える部分はなくなった。
『よしっ!これで全体は完成』
次に10cmぐらいのやつを、肩から垂れる感じで縫い付けていく。後は、右胸・左腰・左太もも・背中にランダムに縫い付ける。
『お、いい感じだ』
そのあとは首回りに長いのを束にしてマフラーみたいに縫い付ける。少し背中の方にも垂らしたり。
頭部も、10cmぐらいのやつをベースに、少し長いやつも使って縫い付ける。
『意外とかっこいいな!』
あとは赤い綺麗なやつを心臓の部分に8つ・左腹部に2つ・その少し下にも2つ縫い付ける。
頭部・前も少し・背中には黄色と白の可愛いのを縫い付ける。
『よし、完成だっ!』
一度着てみて、微調整は終わった。
『さあ、いざ、仮装パーティーへ!』
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