第27話 権利 × 2回目の世界旅行
リンは、極秘裏にエジプトと交渉を進めていた。
度重なる交渉を進めた結果、交渉は成立した。
そう、世界旅行中にリンが偶然見つけた、あのピラミッドの隠し通路の件である。
エジプト側はすぐに発見を発表しなかった。
超音波探査もしているのに観光客が見学に来て、疲れたから壁にもたれただけで、腐食した壁が落ちて通路が見つかった。とは到底発表できない。
もし発表したら、数多の研究者・考古学者・技術力を導入して調査をしているのに、税金の無駄遣いだとの批判も免れない。
墓荒らしや、ピラミッド荒らしが増える可能性だって考えられる。
秘密裏に発掘やそこにあった宝物・ミイラの鑑定を先に進めるべきだ。との意見からである。
あれから約2年が経ち、エジプト側もミイラや宝物の鑑定をほぼ終えていた。
リンはエジプト側に主張した。
「見つけたのは僕たちだから、僕たちが世界に発表する権利がある。宝物や歴史的資料は何もいらないから、動画撮影と発表の許可をくれ。」
そこから交渉を進め、やっと許可がおりたのでその撮影に行く。
そのついでと言ってはなんだけど
『Voices of two mixed-race young people traveling the world』
通称、世界旅行SNSで繋がってる人達に直接御礼も言いたいし、メンバーも紹介したい。
あとは、8人でみんなの
そういったことを7人と話して、世界旅行をすることにした。
最初の世界旅行は2年もの月日があったが、今回は大学の夏休み期間を利用する。
だから、2ヶ月少ししか期間がなかった。
そのため各国では、主要都市だけ訪れ、事前にみんなに連絡してそこに集まってもらうことにした。
メキシコでは、ビールを奢ってくれたどこかの
「マゲイバッグの耐久性を検証してみた」
マゲイバッグは、テキーラの原料である竜舌蘭の繊維を手作業で編んで作られている。
現地ではエコバッグ的な役割をしているものだ。
メキシコなので、爆弾ハンマー祭りのように爆破もしたが、燃えなければ形状を維持していた。
「ピラミッドで隠し通路と金銀財宝を発見した」
エジプトでは予定どおり撮影できた。
壁にワンがもたれて、それが崩れて落ちていく場面は、ドゥーエがCGを駆使した。
宝物やミイラも当時の状況に戻してもらっていたので、リアリティーがあった。
この動画をアップロードした翌日に、エジプトは、
『eightersの動画は事実であり、彼らがこの通路を発見し、歴史的資料を提供してくれたことに謝意を表する。』
との声明を発表し、世界的なNEWSになった。
タラータはエジプトの血が入っているため、鼻高々だった。
この動画で一気に認知度も跳ね上がり、チャンネル登録者は2億人に到達した。
次はポルトガルに行った。
ワンは、出発前に以前の世界旅行の時に出会ったコルク工場勤務の人に連絡して、コルクブロックを8つ注文しておいた。
大きさは2m角、1.5m角、1m角をそれぞれ8つだ。
どれも下の1/4は固めに作られている。
今日は工場が休みでそこを借りた。
机にはチェーンソーや、カッターナイフ、様々なビスや電気ドライバーまで用意されている。
さあ、撮影開始だっ!
「巨大コルクで好きなもの作ってみた」
ワンは1m角を選んで片側から中をくりぬき、そこから5本指を表現している。
ボールを握ったような手が床から生えてきた。
手のひらに座れる1人用のソファらしい。
ドゥーエは2m角を選んで裏返し、片方から中を削り、机のようなものを残し、扉を着けて、コルクの防音室を作った。
2人とも本当に使う予定のため、現実的だ。
タラータは2m角を選んで、縦から真っ二つにした。
次にそれを横に倒し、また真っ二つ。
硬い方を下に戻す。
そのあと、中をくり抜いていく。
残ったブロックの硬い部分を切り出して、それの片方にカッター等を使って、なにやら模様をだしている。
「できたっ!」
「それ自分に使うの?」
「Yesっ!」
……
タラータはエジプトのミイラの棺を再現した。
自分が死んだらこれに入るらしい。
サンクとセイスは合作のようだ。
2m角を選んで船(見た目はヨット)を作った。
ちゃんとマストも表現され、工場の奥から拾ってきたぼろ布でセールも着いている。
オールも2本ある。
「「ヨッシャーっ!」」
大きな掛け声とともにヨットもどきを持って走りだし、工場すぐ横のソライア川に投げ込み、2人はそれに乗り込む。
コルクは撥水性もあるため、意外に進んでいる。
と、思ったが、15m先で沈んだ。
おそらく両側からの水圧に耐えられなかったのだろう。
オイトは2m角でベッドを作った。これも実用的だ。
スーは何やら削って人型を作っている。
「それは自由の女神?」
ワンがソファに座りながら聞いた。
「自分自信」
自刻像を作ったらしい。
「「ナルシストかよっ!」」
チルのは…
アートらしい…
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