第3話 研究 × カードゲーム名言集

クリスティーヌとアンナはあの日以来、彼か彼女かもわからない人間を探した。そして、いつもできる限り時間を共有することにした。


もちろん探したのはチャット内で、その人間の生活習慣を2人で紅茶を飲みながら分析し、その時間を狙ってログインするだけだ。


家系からしても、彼女たちは研究が得意だった。


なんとなくで、時差的なものを考えるとアメリカ圏内ではないことはわかった。


こちらが11時~13時には比較的いるようだ。


彼女たちは相談の結果、その時間の仕事は全て断る事にした。


仕事はもともと撮影前のため、早朝や夕方が多かったので、特に問題にはならなかったし、彼女たちの著名人に対する知名度からすれば、むしろ自由に融通が聞いた。


それからというものクリスティーヌとアンナの話題はほぼその人間が中心になった。

そして、2人は名言集を作って遊びを生み出したりした。


『答えはyes。エリクサーは作れる。ありとあらゆる薬を混ぜればいいんだ。これからも新しく作られるであろう薬も含めて。これ以外でもエリクサーは既に存在してる。それは、愛する人の笑顔と共に過ごす時間』


『同じ人間が同じ地球にいるのに場所によってルールが違う必要があるのか。no』


『みんなでやった方がいいものができるのは当たり前』


『宙に浮く家を造ればいいんじゃない? yes』


『そろそろ地底国家造って避暑地とか良くない? yes』


『自分が別人になろうと固い揺るがぬ決心をしたなら100%別人になれる! yes』


その他、etc。



彼女たちの日課は、カードゲームになった。


表は白紙。裏には1人の人間が放った名言。それを1枚めくる。そして、その時の議題を当てる。


当たった場合は、その時の議論の思い出を話しながら紅茶を飲む。


『そろそろ地底国家造って避暑地とか良くない? yes』


「「地球で新しい土地を生み出す方法っ!」」


クリスティーヌとアンナの声が揃ってこだまする。


同時だったことに2人して大笑いした。


この時は、埋め立てるや、海に浮かべた家に住むとか、空中都市を造る等が上がったが、あの人間は利用方法まで提案した。


確かに地底なら温度はある程度一定だろうし、地球全体の避暑地にすれば、商業等も発展しそうだ。


地球は暑いシーズンも場所によって異なるのだから一定ではあるものの分散効果も見込める。


空中都市も、良案には見えるものの太陽に近付く事から、暑さの対策や酸素が薄くなる問題等に鑑みると現実的ではないことが明らかだった。



……



彼女たちは、笑顔が増えた。

周囲は、急に以前より明らかに変わった彼女たちを見て、驚きを隠せなかったが、漠然と悪いものには影響されていないことが理解できたため、そのまま見守ることにした。


クリスティーヌとアンナは次第にその人間がどういった人物なのだろうかを話すようになった。

性別は?

何歳ぐらい?

仕事は?

育った環境は?

見た目は?


彼女達は議論を始める。


今日は眠れるだろうか……


……


わたしたちは2年後、ホテル運営会社を買収する。


その後、世界を揺るがす。

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