木曜日の彼女(卑屈系ボクっ娘)

 ……あ、その……おはよう、ございます。

 あ、そう。ボク、木曜日、です……。


 なんかごめんね、その、来たのがこんなのでさ。

 前の三人と比べて、ボクってなんだか地味で暗い感じでしょ? こんなの見てても、あんまり元気出ない……よね?


 え? どうしてそんなに自分に自信がなさ気なんだって? もっと明るくしようよ、だって? いや、まあ、ねえ?

 だって考えてみてよ。僕の立ち位置的に、こんな性格になって当たり前だと思わない?


 土日はもちろんだけど、月火って週の始まり感があるじゃん? 水曜日は折り返し地点で、金曜日は明日は休みだ~っ! って明るい気分になれるじゃない?

 でも、木曜日は……ボクは、そういうのないじゃん。一週間で一番影が薄い日じゃん。そりゃあ、自分に自信もなくすってば。


 それにさ、花金とかプレミアムマンデーとかチャンスはチューズデーとか、サービスデーもボク以外の子たちにはいっぱいあるじゃん。ピザが安くなるのも月火水の三日間じゃん。ボクだけじゃん、そういうのないのってさ……。

 だからまあ、こんな暗い性格の曜日になったわけですよ、はい。ね? ある意味納得の結末、でしょ?


 ……へ? 君はボクのこと、好きだって? だからそんなに落ち込まないでほしい、って?

 そんな、いいよ。ボクなんかに気を遣わないでってば……。


 え? 気を張ったりそわそわしないで済む、ゆるっとした空気が好き? そういう一日がある方が気持ちが楽?

 ……そうなの? そっか、そうなんだ……え、えへへ。なんか、褒めてもらえると嬉しいね。ううん、君に好きって言ってもらえたのが嬉しいのか。えへ、えへへへへへ……!


 あ……なんか、ごめんね? ボクの方が君に応援してもらっちゃって、これじゃあ立場が逆だなぁ……。

 ……そっか、そういう一日がある方が、君は嬉しいんだっけ。うん、ありがとう。君ってすごく優しい人間だね……。


 じゃあ、さ……帰ってきたら、今日はボクとゆるっと過ごそうか。

 別に特別な何かがあるわけじゃあない、ただの一日を一緒にのんびり過ごすっていうのも、悪くないのかもね。


 ……ふふ、そういう日は逆に特別かもしれない、だって?

 もしそうだとしたら、それは君のお陰だよ。ボクを、木曜日を、特別にしてくれたのは……他の誰でもない、君自身だから。

 ……ありがとう。大好きだよ。


 ……ああ、もうこんな時間か。そろそろ家を出なきゃ……だよね?

 うん、わかってる。ボクは家で待ってるよ。大丈夫、君が帰ってくるまで、ちゃんと待てるから。

 ……だから、日付が変わる前に帰ってきてよね? そうしなかったらボク、泣いちゃうから。


 じゃあ……いってらっしゃい。今日が、君にとっていい一日になりますようにって、お祈りしておくね……!!

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