生きてるって素晴らしい、本当なら

 先月死んだ母親が生きていて嬉しい、という、明らかに矛盾したことを言い出す青年のお話。

 口語というか、対話の形式で綴られた現代もののホラー掌編です。
 怖いです。怖い話は感想を書こうとしても全部「怖い」になっちゃうから困る……。

 彼の話しぶりが妙に軽いところが好きです。
 おかげで序盤から中盤、わりと呑気に読んでしまったんですけど、でも同時に「なんか変、この明るさが怖い」と引っかかるようなところがあって、おかげでぐいぐい話に釣り込まれました。

 この絶妙な「なんか気になる(気にさせる)」感。
 そして、気づけばとんでもないところに連れていかれちゃったところ。

 方言の醸す雰囲気と、話運びの巧みさにまんまとやられてしまう、とても上質なホラー作品でした。