第22話

「……で、白雪姫にぜーんぶ話しちゃった訳?」


「うぅ……そうなの。わたくしの前世の話まで全部……」


「ほんっとポンコツだよな。アンタが死ぬかもって話はしたのか?」


「物語ではわたくしは処罰されたとしか言わなかったわ。王子の危険性は訴えておいたけど、さすがに死体が好きだなんて言えないから……そこは誤魔化したわ。わたくしがそんな酷い事する訳ないって泣きそうになってて可哀想だったわ。うう……でもあんな顔で全部教えてって言われたら……あんまり隠し事は出来なくて……」


「ったく、甘いな。追い出した夫はどーすんだよ」


「白雪が会いたくないって言うから、城に帰ってもらったの。今頃城に戻ってると思うけど、居場所を教えてくれる? 話し合いをしてくるわ。ねぇ、わたくしは夫と別れても白雪の母でいられるってホント?」


「ああ、本当だぜ。あんな男とは別れちゃうか?」


「絶対離婚って言ったんだから別れるのは確定でしょ。彼はわたくしの事を嫌ってるでしょうしね」


「……相変わらずポンコツかよ……。さぁ、どうだろうな」


「鏡にも分からない事があるの?!」


「人の心の中までは分からねぇよ。アンタの夫は、反省はしてた。けど、アンタと離婚したくないとは一言も言ってない」


「じゃあ、やっぱりわたくしと別れたいのよね。ねぇ鏡、話し合いについてきてくれない?」


鏡が居てくれるなら安心だもの。あの男と別れるのは構わないけど、一応わたくしは王妃で女王。色々簡単にいかない事も多いわ。別れたら、お兄様の対応だってしなきゃいけなくなるし、わたくしがこっそり姿を消すのは白雪が泣くから駄目。


なんとか上手い落とし所が欲しい。


「いいぜ。姿を隠すのと現すの、どっちが良い?」


「現すので!」


その方が質問もしやすい。鏡の正体がバレているなら誤魔化す必要もないもの。


「分かった。家庭教師の姿で良いんだな?」


「うん。だってそうしないと見えないでしょ?」


「別に男の姿でも実体化出来るぜ。どうする?」


「んー……とりあえず鏡先生の姿でお願い」


「分かった。国王は城に戻ってる。一応ちゃんと真面目に働いてるぜ」


「なら、正面から訪ねましょう。よろしくね」


「ああ、ちゃんと質問に答えてやるよ」


「ありがと! いつも助かるわ!」


「任せとけ。俺はアンタのモノだからな」


という訳で、やってきました夫の元へ。

城は警備だけはしっかりしてるけど、埃が目立つわね。このままじゃまずいわ。


「……鏡、叔母様とやらの使用人ってどうなったの?」


「全員捕まった。城や財産が白雪のモノだって知ってておこぼれで贅沢してたからな」


「腐ってるわ。白雪の城はここより小さいし、人は余ってるわよね。白雪の資産を食い潰す訳にいかないし、なんとかしないと。使用人をどれくらい増やしたら両方の城を維持できる?」


「最低限で良いなら今の人数で回る。けど、ちゃんとするならあと100人は増やしたいな」


「そうよね。人の当てはある?」


「ねぇな」


「そうよねー。ろくに働いてなかった国王と、幼い姫じゃね。下手に使用人を増やすのは危ないわよね」


「そうだな。今のところ城のヤツらは女王様に忠実だけど、新しく来るヤツらがそうだとは限らない。足りないのは掃除とかの人手だから、増やさなくても手はあるぜ」


「わたくしが頑張れば良いのね? 魔法もバレたし、多少は良いかしらね」


魔法で掃除をすれば、格段に手間は省ける。人が増えるまではそうするしかないかもしれないわ。使用人達のプライドもあるでしょうし、こっそりやらないと。


「持ち主の許可が下りればそれで良いんじゃねぇか?」


「そうね。まずは国王を説得してみるわ」


「……多分、説得なんて要らねぇよ。この惨状を見てみろよ」


「確かに、荒れてるわね。どうしようかしら。このままって訳にいかないし……」


「別れるって言ってる夫の事なんて気にしなくて良いんじゃね?」


鏡が、妙に不機嫌な気がする。

不安に思いながら歩いていたら、国王が息を切らして現れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る