くびなーが

脳。それは私たちに平等に与えられたもの。

脳。それは皆に対して不平等なもの。

脳。それは世界の全てを司るもの。

 人間はみんな自分のことを「僕・私」のように呼ぶ。しかし、それを発しているのは脳である。

脳は自分のことを「脳」と呼び、「脳」は着ている服のことを「僕・私」と呼ぶ。

 かく言う僕も、最終的には「脳」である。いま学校に向かって歩いている「僕」は、「僕」という服を着た「脳」なのだ。

 そう考えていると、周りを歩く人間も全て「脳」のように見えてくる。世界では、「脳」が走り、「脳」が働き、「脳」が世界を動かしているのである。

 ただしかし、未だ誰も自分の脳を見たものはいない。自分の脳が「僕」を動かし、自分の脳が他人に働きかけているのに。

 そこで「僕」は自分の脳が見たくなった。

病院の検査で見る脳でもなく、学校の教科書で見る脳でもなく、ただ自分の脳が。

 「僕」は脳を取り出そうと思った。脳も「僕」を脱いでみたいと思った。絶対に痛いだろうって?

脳が痛いと感じなければ痛くないじゃないか。

 「僕」は頭を開いて脳を触った。

 脳も初めて「僕」に触られた。

 ずっと一緒の場所にいたはずなのに。

脳は高揚した。そして「僕」も高揚した。

久しぶりに意見が合ったのかもしれない。

「この状態から離れてみたい」と。

そして脳の手は初めて僕の手となった。

そこには何も考えられなくなった「脳」と、服だけが落ちていた。


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くびなーが @Rickey_el

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