第24話「光一の日記(3)」

 二〇二五年六月一日


 夢月むづきが晩ご飯を作ってくれているので、今の内に書いておく。


 やはり、この日記に未来の出来事を書いたとしても、徒労に終わるのかもしれない。ながれ先生は話半分に受け止めた方がいいと言っていたが、彼女の話にはうなずけるものがあった。もしも俺がこの日記に「未来ではこれこれこういうことが起こる」と書いたとしても、夢月の持っている日記とは明確に食い違いが出てくる。夢月の持つ俺の日記には、明確な過去、事実が書かれているから……いかん、考えがこんがらがる。


 未来を——彼女にとっての過去を、変えることはできるのだろうか。


 変えられたらいいと思う。


 変えてしまえばいいと思う。


 姉さんや悟郎ごろうさんが死に、俺に引き取られて、十二年後にはロボットに乗って〈リライト〉と戦う——そんな未来、俺だって望まない。あんな小さな体にそんなものを背負わせて平気でいられるほど、俺の神経は図太くない。


 どうすればいい。俺に何ができる。何をどうすれば、未来を変えられる? あの子に武器を持たせることのない、未来を作ってやれる?


 夢月の声がかかってきた。晩ご飯ができたようだ。


 仕方ない。あまり多くを書けなかったが、ここで切り上げるとしよう。考えるのはその後だ。

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