第15話 【閑話】謎能力のアップデート

「うむ、素晴らしい……」


 ここには俺しかいないのに、つい独り言を漏らしてしまった。


 でもそれは仕方のない事だと思うんだよ。

 何故ならば。

 見てくれこの空間を!


 俺は心の中で誰に向かって話しているのだろうとは思うが、実際にこの素晴らしさを誰かに自慢したいので、イマジナリーフレンドに紹介する気持ちで語りたい。


 素晴らしい物は何かって?

 それはこの魔物達のアバター姿だ!


 謎のゲームが世界に振ってきてそれを手に入れた人類は、それぞれ選んだゲームが出来るようになった。


 俺が選んだのは麻雀ゲームなのだが、謎な異空間に行き自身を模したアバター姿でNPCを相手に自分の命綱ともいえる謎ポイントを稼ぐゲームはデフォルトで存在している。

 NPCの姿も真っ黒いマネキンといった感じで、周りの風景すら真っ黒で、そこに雀卓しかない謎空間だったのだけど。


 急に仕様が変わったのか、今まで倒した事のある魔物を麻雀ゲームの練習モードに配置できるようになったんだよ!

 会長のカードゲーを同盟員特権で遊べるようになっていたから、魔物カードはゲットしていたんだけど、今まではその魔物達のアバター姿を鑑賞したかったらカードゲーの練習モードを始めるしかなかったんだよね。


 とにかく謎能力がアップデートしたのか。

 それとも、俺の謎能力のレベルが上がったのかは知らんが。

 ゲームのアップデートがなされたのだけど、世界にゲームを降らした神様は神運営なのでは?


 でまぁちょっと前まで真っ暗な部屋だった俺の麻雀ゲーム世界は、何故かファンシーな部屋になっている……。

 これはまぁ……会長と連ちゃん達の趣味というか、俺はもっとこう麻雀漫画で描かれている雀荘みたいにしたかったのに、モコモコピンクでぬいぐるみがいっぱいの二十畳間になってしまった……。


 真ん中に置いてある雀卓の卓面にも絵柄を設定するはめになったしな……星柄とかいる? 緑一色でよくない?

 っとと、まぁそれはいいや。


 そんな魔法少女が住んでいそうな部屋の雀卓に、俺以外に魔物を三体置いて麻雀の練習モードでゲームをしているのが今の状況だ。


 魔物の一人目はサキュバス。

 淫魔という名に相応しく、露出の激しい水着なの? といわんばかりの格好に、背中にはコウモリっぽい羽、頭には羊のような巻き角があり、お尻からは黒くて細い尻尾がにょろりと垂れ下がり先端のハートマーク部分がたまにピコピコ動いている。

 勿論その種族に相応しい胸部装甲を持っていて、水着っぽい服の中にスイカでも入れているんですか? という状況で、サキュバスが牌をツモルたびにプルンプルン動いているのが素晴らしいと思います!


 二人目は黒騎士。

 真っ黒いフルアーマー姿の騎士は、強そうでカッコイイのだけど、中身はダークエルフの女性だ。

 黒騎士が麻雀を打つ時はヘルムを外しているので、ダークエルフ特有の長い耳とキラキラと輝く銀髪が露わになり、とても美しい人だなと思う……その細長い笹の葉のような耳をどうやってヘルムの中に押し込めてたの? 畳める仕様なの?

 ……後は、黒騎士は麻雀で高い手を振り込むと着ている鎧や服が順番に弾け飛んでていくという謎仕様で、何故か一人で脱衣麻雀をしている。

 サキュバスさんとかは負けても脱げていかないから不思議なんだよなぁ……黒騎士さんは内部情報として姫騎士属性でも持っているのだろうか?

 負けるとクッコロ化していくんだよねぇこの人……。


 三人目……三体目は水精霊。

 体が水で出来ている人型の精霊で、元々はポワポワっとしたイメージの美少女で、知性はあまり感じられなかった。

 だけど……同じ水精霊カードを合成する事で、上位水精霊に出来ちゃってさぁ……謎ゲームの仕様がほんと意味わかんない事になっているんだよね。

 まぁ、美少女水精霊が美人水精霊に変化して、体と服も水で出来ていて透けてはいるけど、古代ローマ風味な服を着ている美人なお姉さん? みたいな個体に変化したんだよね。

 しかも前より知性があがっているような気がする。


 そんな三人と俺を含めて四人で麻雀の練習モードで遊んでいるんだ。


 そして冒頭の話に戻る訳だが、彼女らがツモッたり振り込んだり諸々の動きをする時に、サキュバスならプルンプルンと動き、黒騎士は負け始めると鎧や服がパージされて最終的にプルンし、水精霊は透けているのだけどサキュバスに負けないプルンプルン具合を見せてくれる。


 これはもう素晴らしい光景と言わざるを……。


『早く牌を捨てろサキュバス』

『うっさいわね半裸ダークエルフ、設定された時間内で考えてるのだからいいでしょ!』

『考えても時間の無駄かと』


『くっ……何故私だけ服が弾け飛んでいくのだ……しかし、それがマスターの望みだというのならば、私は胸を張ってこの理不尽な麻雀というゲームを打とうじゃないか! ……という事であまりマスターをお待たせするなサキュバス』

『なんであんたは服が弾け飛んでいるのに胸を張って堂々としているのよ……サキュバスの私よりエッチな姿になっているんだけど……というか、私達の胸しか見ていない主人なんて、いくらでも待たせておけばいいのよ! 私に赤ウーマンくれなかった童貞だし!』

『世界の理が彼をあるじとしたのです、私はそれに従うのみです』


 ……。


 俺と一緒に麻雀を打っているサキュバスと黒騎士と上級水精霊の三人が普通に会話しているんだよな……。


 プルンプルンな状況は素晴らしいのだけど、これって倒した魔物の姿だけを模したNPCではないよなぁ?


 だってさぁ……サキュバスが言っている赤ウーマンの話は、俺がこいつを倒した時の話なんだよね。


 もしかしてさ? 謎のゲーム能力で魔物を撃退していると思っていたのだけど……ゲーム的思考でいう、彼らをテイムしているようなものだったのかも?


 今までは彼らを手に入れても見た目を鑑賞するくらいしか出来なかったけど、新たな謎能力アップデートで、テイムした魔物の自我が表に出るようになった……とか?

 その真実を知るのが少しだけ怖い俺は、まだ魔物に対して話しかけていないんだよな……もし知性がある相手だったとしたら……。


 ……。


 今まで俺が散々カードゲームの練習モードでプルンプルン鑑賞祭りをしていた事を彼女達が覚えているかもだろう!!!

 くっ……それを確かめるのが怖くて話しかけられないぜ……。


 今の俺に出来るのは、ただただゲーム状況で揺れるプルンプルンに視線を向ける事だけだ……はー困った困った。

 次は浜辺で手に入れたポヨンポヨンのマーメイドも配置しようかな。


 ちなみに……ゴブリンや半魚人を具現化するつもりは一切ありません。







 ◇◇◇

 後書き

 また☆の評価をしていただけたので

 麻雀好きな同士のために新たな一話を投じます

 今回はちゃんと麻雀をして……黒騎士さんだけ何故かクッコロ脱衣麻雀になっているという設定なんですが、麻雀は麻雀なのでおっけいですよね?

 ◇◇◇

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る