頭痛と幽霊とその因果関係

神奈川県人

頭痛で頭が痛い

 頭がキーンとする。らしい。

 なんでキーンとするか、はっきりとはわからないとのことである。

 ところで、私も頭がキーンとしてきた。


 突然だが、都市もとい町内伝説では町の外れにあるトンネルに近づくと霊的なもので頭痛が起き、幽霊に会えると代々伝わってきたのである。

 昨日の深夜暑いからと肝試しを軽い気持ちでやったと他愛のない話の提供者の友達が言う。

 詳しく聞いてみるとしよう。



 ことの始まりは昨日、今居る目の前の友人を一号としたら別の友人、これを二号としよう。


 これからは一号が語る。


 二号が「肝試しのトンネル、昼には行ったことがあるけど夜はないから行こーぜ!」と言い出した。

 他の友人ら三号、四号も「良いじゃん!」と残念なことに乗り気。そうなると臆病者な一号も行かざるを得なくなる。

 深夜にトンネルから近いコンビニに集合と言うことでその場は解散した。


「嫌だなぁ、怖いのは苦手なのに」


 はぁ......


 肝試しに備えてふて寝に近い昼寝を敢行した、まだ時間は昼下がりだ。大体十時間後にアラームをセット。

 まぁそれまでには起きるだろう。



 ......ピピピ ピピピ ピピピ ピピピピピピピ


 モゾッ ピピピ モゾモゾ ピピピ モゾゾ


 バシッ ピピピ バシバシ ピピ カチッ 


 シーン


 パチッ パチパチ キョロキョロ 


「ハッ!」


 どうやら十時間きっちり寝ていた。らしい。

 時計の針は右斜め上を向いている。

 あり得ないと思ってたのに。睡眠負債でも貯まっているのかもしれない。


 着替えて出掛けにきのこの里とか言う喧嘩だけ売ってるお菓子を腹にいれこみスニーカーを履く。

 徒歩で数分。コンビニ、エイトテンについた。大きくはない店舗に広くはない駐車場にはまだ人影は見えないがもうそろそろ来るだろう。

 夜中に昼食を食べるのはこれからも、この先も初めてかもしれない。もち米の赤飯はいつ食べても美味しいもんだな。

 恐らく十分位たっただろうか。


「おおーい、早いじゃん。まさかノリノリだったりする?」


 三号以下が到着した。


「あれ? もしかして遅刻一人いる?」


「ガオー!」


 !!??!?!!!

 背後から何かが襲ってきた、トンネルから出張でもしてきた幽霊かもしれない

 思わず必殺の裏拳が飛び出る。


「必殺! 確殺裏拳!」


 幽霊のみぞおちに上手くハマった。

 みぞおちの熱が拳に伝わる。温かい。

 温かい......?


「必殺なのね......通りでよく効くわけだわ......」


 ッバタン


 しまった、確殺裏拳は対人用ではなかった。閉まりかけたドアとか無機物用で有機物への破壊力は図り知れないんだった。


「「「大丈夫かよ!」」」


 また十分位たっただろうか、気絶していた二号が目を覚ました。


「はっ! 良かった生きてるのね私」


 確殺しかけたお詫びに瑠璃シリーズのアイスとお茶を渡しておいた。許してはくれている雰囲気だったから気にしなくていいかな?


 二号がびっくりさせたのが原因だったのに何で詫びなんてしているのだろうとかは考えない方が良いだろう。


「ではでは! いよいよトンネルに向かいますか!」


 町のはずれのトンネルまでは片道約二十分かかる。特に使われていない道のため手入れはされておらず、歩道はもちろん道路にも雑草が青々と繁っている。

 やがて見えてくる真っ直ぐに並んで光るオレンジ色。久々に来たけど記憶よりも小さく短く感じる。そのお陰かアイスの恨みのせいか分からないけれど恐怖心はすっかりなくなっていたが、である。

 結果を先に言っとくと幽霊は居なかった。変わったこともなかった、狸が二三びき居ただけだった。まあ、狸型の幽霊何て言われちゃ何も言えないけれど。


 それ以外は案外ゴミも落ちていないし不法投棄もない。治安のよさがなんとなく感じられる町のPRに使えそうなトンネルだった。


「「「「なんか......」ね」つまらねえな」ビミョー」


 行きの道は街灯がLEDに変わったばかりで案外まぶしいとか、コンビニのアイスは高けりゃ旨い訳じゃないよねみたいな他愛もない、無さすぎる会話が四人の口を動かせた。(帰りは狸がかわいいか否かが増えた)


 またコンビニで解散して、一号は家に帰った。

 そして今日に至る。


 一号は昨日の事をまあまあ細かく語ってくれた。直後に一号は謝ってきた。


「誘うのみんなで忘れてたんだ! ごめん! 今日寝坊したのも昨日のせいだし、頭が痛いのは誘い忘れたとかもろもろのストレスだと思うんだ......。本当にごめん!」


「いいよ、過ぎちゃったことだし。肝試しに行くのは知らなかったけど一号にとっては今、肝試ししてる気分だろうしさ気にしてないよ」


 そう言いながら私は三杯目のかき氷をスプーンですくった。




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