10:助けに来たのは、噂の転入生だった。

 私を庇ってくれたのは、噂になっていた転入生の二人だった。

 二人は、前にいる化け物に警戒をしながら、


 「「大丈夫か?」」


 心配そうに私の様子を伺ってくれた。


 「あっ…」


 初めて彼らを間近で見たけど…ビックリした。


 キレイ!_____


 今まで遠巻きで見かけるだけだったので、雰囲気ぐらいしか掴めていなかったけど、うん、これは確かにとびぬけて美形だわ!

 それに双子だって聞いていたけれど…雰囲気は姉弟というよりは、お似合いのカップルって印象ね。でもどちらにせよ、びっくりするくらい美形だ!


 男の人は、確か玲央くんだったかな?背の高い、切れ長の目のサラサラの薄茶…確かはしばみ色っていうんじゃなかったかな。とにかく日本人が持つ色じゃないし、実際顔も鼻がすごく高くて、ハーフって感じだもの。


 女の人は令様だ!……美憂があんまり令様令様っていうから、つい私もそう思っちゃったじゃない!。もとい、令さんは腰にまで届きそうな長い黒髪に、少し目の吊り上がったエキゾチックって言葉が似合う美人だわ。だけどよくよく見れば、令さんは刀の様な細い刀身の長い剣を手に持っていた。女性なのに、妙に様になっている。って、あれ?剣??なんでそんな物騒なモノ持ってるの??それによく見たら、玲央くんも手の周りが赤っぽい光って、何これ?いかにも魔法?って感じのものを手にまとっている。


 !!

 あれ?…またデジャブを感じる。何だろう、前にもこれと同じようなことが?

 なんて疑問に思っていたら、令さんが声をかけてくれた。

 

 「怪我はない?危ないから後ろに下がって。」



 !____そうだ、思考が飛んじゃってた。それどころじゃない、



 私、たった今、殺されそうになったんだから!!


 ジョンは?私はすぐにジョンがいたであろう場所に目をやった。うん、場所は変わってない。


 「ジョン!」


 私は、慌てて離れていたジョンの元へと戻った。可哀想に、クゥーンと弱弱しく泣いているし、まだ起き上がれそうにない。

 そして助けにきてくれた二人は、化け物について話してるようだった。もしかして、何か知っているの?



 「はぁ~本来もうちょっと小さかったハズだけど……デカくなってるねぇ。」


 私達よりも前に出て、化け物と対峙している玲央くんが溜息まじりに言っていた。

 

 「それだけこちらの影響を受けているんだろう。さて、展開するぞ。」

 

 「おぅ頼むぜ。」


 展開?って何をするんだろう?

 何のことかと思い、令さんを見ていたら、何かを握っていたようで、腕を伸ばし掌を広げた。その上には黒い石?のようなものが乗っている。


 「結界を展開する。闇の精霊よ、魔石を贄にフィールド展開!」


 !令さんが握っていた黒い石が光ったかと思えば、それは消えるように無くなってしまい、そこから、何かの黒い煙のようなものがドンドンと広がっていった。途端に煙は見えなくなっちゃったけど、何だろう?空気っていうのかな?なんていうか、静寂して、辺りは雰囲気がガラリと変わったような印象を受けた。


 「よし、これでいいだろう。レオ行けるな?」


 「おし、魔力を感じる。いけそうだ。レイは如月さんと一緒にいて」


 「わかった。任せたぞ。」


 そのやり取りで、令さんがこちらに戻ってきた。

 一体…一体何が起こっているの?化け物が現れたり、魔法みたいなものがあったり、もう頭が付いていけない!訳がわからないよ!


 「……いろいろと驚かせてしまったようで、すまない。」


 令さんは、私の様子を察したようで、謝ってきた。…でもよく考えたら、令さんや玲央くんが危機一髪のところ私を助けてくれたんだよね…令さんは動けなくなっているジョンを見て、


 「君の飼っている犬かい?」


 「そうです。でも私を庇っ…て、それで、怪我をして…」


 そうだ、ジョンがこのまま怪我が治らなかったらどうしよう?私はもしものことを考えてしまい泣けてきた


 「大丈夫。この犬の生命力は死ぬほど落ちていない。強打したようだけど、このくらいなら治療をすれば治るから心配ないよ」


 そういって、令さんは私ににっこりと笑いかけてくれた。

 

 !!


  私は真っ赤になった!と思う。だってすっごくドキドキと動機がするもの!

美人が微笑んだらこんなに破壊力があるんだ。出ていた涙が引っ込んでしまったわ。うん、美憂の気持ちがよくわかったわ。


 「ジョンは…ジョンは大丈夫なんですね?!」


 「あぁ、そこは信用してくれて構わないよ。」


 良かった!本当に良かった!ホッとしたらまた涙が出てきちゃった。


 「あ、ありがとうございます。」


 「いや、こちらこそ巻き込んでしまいすまなかった。本当はもっと秘密裏に処理をしたかったんだけどね。まさかこの時間帯でアレが出てくるとは思わなかったから、出ていかざるを得なかったけど。」


 そう言って令さんはバツの悪そうな顔をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る