6:茅乃の生い立ち

 翌朝。



 「ん・・・・」


 目が覚めた。

 何だろう?何か嫌な夢を見たような気がするけど・・・


 最近こういうのが多いような・・・気のせいかな・・・・?

 うーん、なんかスッキリしないけど、思い出せないものは仕方ない。



 「さぁっ学校の準備しますかー」


 私は大きく伸びをして、ベッドから出た。



 「おはよう~お母さん」


 階段から降りた私は、朝食の準備をしている母に挨拶をした。さてと、顔洗ったりとかしますかね。


 「おはよう茅乃。」


 お母さんはいつものように、朝食の用意をしていた。


 実はこの人は、正確には私の血のつながった母ではない_____


 この事実を聞いたのは、わりと最近だったりする。


 お父さんが…この人も血のつながった父ではなかったけど、去年交通事故で、大怪我をしてしまったことが、その事実を知るきっかけになった。

 お父さんはその事故で大量の血液を失った為に、輸血をしなければいけなくなったのだ。だから、もちろん私は真っ先に自分の血を使って欲しいと申し出たのだけど…


そこで告げられた。本当の親子ではないと。


 また私の血は普通ではあまりない希少な血液だったばかりに、輸血することは叶わなかった。


 悲しかった。役に立ちたかった。血が繋がっていないなら、せめて輸血することで本当の意味ではないけれど、血が繋がれたかもしれなかったのに…


 結局お父さんはその後、適切な処置をしてもらい、今はもう後遺症もなく治ったから大事に至らずによかったのだけどね。だけどあの時は思わぬところで、自分の出世の秘密を知ることになってしまった。お父さんもお母さんも、いずれは真実を打ち明けるつもりにはしていたらしいけど、想定よりも早くなってしまったのだ。


 正確には、私はお母さんのお姉さんの子供だったらしい。


 ところが、誰の子かわからない状態で私も身ごもり、そして産んでから、亡くなってしまったのだそうだ。


 そこで産みのお母さんの妹夫妻、今のお母さんお父さんの養子として引き取られ、本当の子供のように育ててくれたのだ。実際お父さんが交通事故に合うまで、私がここの本当の子供でないなんて、思いもしなかったもの。


 生みのお母さんがどういった経緯で身ごもったのかは、未だにわからないそうだ。妊娠した時、なぜかその間の記憶がすっぽりと抜けてしまっていたんだって。生みのお母さんは私を妊娠した時の記憶はなかったけれど、それでも絶対に生むと言って聞かなかったそうだ。だけど、結局亡くなってしまったけど…


…もしかしたら、今後実の父が名乗り出てくるかもしれない。けれど、私のお母さんお父さんは、育ててくれたこの二人なのだ。


…でももし、何かしらの事情があったなら考えなくもないけどね。聞く耳がない訳ではないつもり。とはいえ、その時にならないとわからないけど。





 私は支度がおわったので、ダイニングテーブルの席に着いた。目の前にはハムエッグにサラダとヨーグルトにトースト。今日は洋食だった。私はトーストにハムエッグを載せて食べるのが大好き。


 「今日も美味しそう~なんだか、朝からお腹ペコペコなの、いただきまーす」


 「はい、召し上がれ」


 食べようと思ったけれど、お父さんがいないことに気が付いた。


 「あれ?お父さんは?」


 「今日は会議があるからって早めに出てるわよ。」


 「そうなんだ。じゃ会えるの夜だね。」


 私はハムエッグを載せたトーストに齧りついた。うん、今日も美味しい!お母さんのご飯で、夢見が悪かったことが上書きされた。とはいえ、内容はもうよく覚えていないけれど。





 「じゃ、行ってきまーす」


 「はい、いってらっしゃーい」



 そして私はいつものように家を出た。まさかペット行方不明事件の進展があるとはこの時は思ってもみなかったけど。

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