3:噂の転入生(令)
次の日の放課後、美憂がものすごい勢いで、私のいる教室に迎えに来た。
「茅乃~~聞いてよ!うちのクラスに来たのよ、転入生~~!」
美憂はテンション高く、顔もなぜか赤らんでいた。
「へぇ、美憂のクラスだったんだね。よかったじゃない。」
「それに、すっごい美人だったわ~」
まだ興奮が治まらないようで、身を乗り出し両手を祈るように組んでいた。思い出しているらしい。そしてそのまま話しながら、私達は帰宅するために教室を出た。
「あ、女子の方だったんだ。テンション高いからてっきり男子のほうだかと思ったわ。」
ちょっと意外だったので驚いた。
「ううん、お姉さんの方よ!」
「お姉さん?」
「そう、自己紹介の時に聞いたんだけど、弟さんと二人で転校してきたんだって!二人っていうのは姉弟だったのよ、それも双子!!」
「二人って、あぁそういう事だったのね~」
おぉ、想定外だったわ。
「そうなのよ~でね、名前は令(れい)様っていうのよ!」
「令様??」
なんで様付け呼びになっているんだろう?私の頭に?マークが出た気がした。
「令様はね、腰近くまである長い黒髪で、少し釣り目でね、それが意思が強そうな感じを引き立てているというか・・なんかとにかくカッコいいのよ!女子なのに凛々しいっていうか!」
興奮冷めやらぬ感じの美憂は両手をぐーにして力説していたが、ビジュアル的に美人なんだなっていうのは何となく伝わった。
「そ、そうなのね。珍しいわね、美憂がそこまで言うなんて。」
なんだかよくわからないけど、転入初日の人に美憂がここまで入れ込むなんてびっくりした。
「また、葵(あおい)様とはタイプは違う感じね。葵様は慈愛に満ちた大人の落ち着いた女性って感じじゃない?令様は、わかりやすくいうとクール系美人なのよ!」
あーうん、なんとなく今の説明でわかったような気はする。
葵様っていうのはこの学園の女王様というかマドンナ?的な存在で三年生の湯布院葵(ゆふいんあおい)ていう、清楚系美人の才色兼備で優しいと評判の生徒会副会長の人。この学園には私を含め、親衛隊持ちが数名いるのだ。あと私が知ってる限りでは、確かツインテールの可愛い系の女の子(名前は忘れちゃった)もそうだったかな?
「へぇー葵さんと同レべってことは相当美人なのね。」
私は心底感心していたのだけど、いきなり美憂に指をビシッと指された。
「わかってないけど、あんたもよ!」
「え?私?」
「あんたも腹立つくらいモテるじゃない!私も不細工じゃないけど、あんたの前じゃ悔しいけど霞んじゃうし!」
言いながら美憂のほっぺが膨らんでいた。
「ん~?カテゴリが違うくない?」
そう、私の見た目は儚い気らしいので、多分ジャンルは違うはず。でもそれを自分で思うくらいなので、中身は儚げないのは察し。(二度目)
「あははは、自分でそれいう?」
「だね(笑)」
まぁ私もモテてる自覚はあるからね。・・・たとえ有難迷惑だったとしても。
「あ、噂をすれば令様よ!」
「え?どこどこ?」
美憂が入れ込んでる令様とやらを私も、一目拝見したかったので目で追ってみたけれど、時すでに遅しで後ろ姿しか見えなかった。どうも校舎を案内されているようだ。
「あ~見たかったなぁ…」
「見に行く?」
美憂は行きたそうにしていたけれど、それはしたくなかった。
「ダメだよ、見世物みたいだし失礼じゃん。こういうのはさり気ない方がよくない?」
「あー確かに。」
「まぁまた見る機会もあるでしょ!」
そうして後は、いつものように他愛のない話をして下校した。
!!
この感じは?!
私が振り返った時には、その女性は後ろ姿だった。
「どうしたの令さん?」
「あ、あぁ申し訳ないね。ちょっと後ろが気になったものだから」
私が急に立ち止まったから、校舎を案内してくれている女生徒が怪訝な顔をしていた。
「すまない、気のせいだったようだ。引き続き案内をお願いしたい。」
「わかりました。では次は音楽室になりますね。」
校舎を案内してくれている女生徒はホッとした様子で引き続き校舎の案内をしてくれた。
だが、私は先ほど感じたものが頭から離れなかった。
なんだろう?まだはっきりとはわからないけど、何かを感じたのは間違いない。
…いかんな、まずは現状の把握、それから情報整理だな。
私は再び、校舎を案内してもらい、この学び舎の地図を頭に叩き込んだ。
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