2:ペット行方不明事件

 そう、今思えばそれがいけなかった。



 「凛、最近仲良さげじゃん」


 「あぁ茅乃?」


 あれ?私の前では名字呼びなのに、友達の前では名前呼びなんだ?距離感が近くなっているようで、にやけて一瞬浮かれてしまった。


 「付き合うの?」


 「そうだな、付き合えそうな感じではあるなー」


 あ、私の思い違いではなかった?私は舞い上がった。だけど、


 「もったいぶるねー茅乃ちゃん、超かわいいじゃん!いいなー羨ましい!」


 「けど、中身は無さげだぜ?ぶっちゃけ喋ってても面白くねーし」


 え?


 「うわーお前酷い事いうなー俺ならあんな可愛い子なら、仮に性格悪くてもいいわー」

 

 「ぶっ、俺より酷-じゃねぇか(笑)まぁ色気はねーけど、見た目はいいからな、連れて歩くにはいいよな。」


なにそれ……

…まさかこんな事を言う人だったとは……



 私はこの時真っ青な顔をしていた。と後で友人から聞いた。

 知らなければ幸せ。とは昔の人は上手くいったものだなと思った。さっきまでの私のウキウキした気持ちは、彼の言葉によってどん底に突き落とされてしまった。

色気も中身もなくって悪かったわね!そりゃね、気になる人の前だったら多少は緊張して大人しくなることだってあるじゃない?


 …けど、良かったのかもしれない。


 彼の本音を知ることができたから。


 それから松岡くんは何事もなかったかのように、(私が聞いていたことを知らないから無理もないんだろうけど)私に絡んできていたけれど、当然私の彼への気持ちは氷点下に下がってしまったので、素っ気なく対応していたら、向こうも察したのか来なくなったけどね。こうして私の淡い初恋?らしきものは嫌な感じで終わってしまった。


 そんな経験からも、余計に恋愛に夢がもてなくなってしまった。


 だから美形の転入生が来ようと、私から親衛隊(そもそも認めてないし)が離れていこうとも私にはどうでもいいのだ。


 別に恋愛を諦めている訳ではないけれど、期待して裏切られるなら、余計な期待はしないほうがいいと思うようになっていた。


 「……茅乃聞いてる?」


 おっと、思考が飛んじゃってた。


 「ごめん、考え事してた。」


 「もぅじゃあ、茅乃はこっちの話題の方がいいかな?」


 毎度思うけど、美憂は情報通な友人だ。見かけは明るい茶髪のちょいギャル系な感じなんだけど、顔も可愛いし、性格はド直球というのか、ちょいちょい考え無しで思った事をそのまま言うことはあるけれど、それでも私の数少ない友人である。いつもどうやって情報を仕入れてくるのやら。(苦笑い)おっと、また脱線しちゃった。


 「ちょっと怖い系なんだけど。」


 「え?ホラーはやだよ?」


 私は幽霊とかのホラー物はものすごく苦手だから、もろに嫌そうな顔が出ていた。


 「あぁ、わかってるわよ、そういうのじゃないわよ。なんかね、ここ最近飼っているペットが行方不明になっている事件があるんだって。」


 「え?何それ?」


 「犬とか,ネコとか限定されている訳でなくて、ペット全般ね。」


 「もしかして…言いたくないけど殺されているとか?」


 なんとなく、猟奇的なものを発想して、一番なって欲しくないことが口に出ちゃってた。


 「その線も否定はできないよね、けど死体が見つかったとかの情報はないみたい。わかると思うけど、動物相手じゃ警察も大規模に捜査をすることもないしね。」


 言いながら美憂は困った顔をしていた。


 「うちもそうだけど、ペットを飼ってる家は心配だね。」


 「うん、茅乃もワンコを飼ってるでしょ?だから気を付けたほうがいいかなって。」


 「うちは大型犬だけど…それでも簡単に連れ去れるかな?」


 そう、うちで飼っている犬は大型犬のラブラドルレトリバーだ。簡単に持っていけるとは思えない。……だけど、さすがに巷でそんなことが起きているなら心配になる。


 「情報ありがとう。帰ったらお母さんに話しておくわ。」


 「うん、そうしたほうがいいよ」


 美憂とは、分かれ道で別れた。


 ペットが行方不明ね…なんか嫌な事件だわ。うちもそうだけど、ペットって言ったって家族みたいなものだし。もしかしたら、お金目当てとかで誰かが売り飛ばして、なんてこともあるかもしれない。どっちにしても許せることじゃないわ!

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