第8話呪い師の隠れ里の事情

 夜宿屋で合流して酒宴をやって、次の日冒険者ギルドでDランククエスト『近隣の村を襲うオーガ退治』を受けて、いつも通り戦って倒し呪いをかけると強制ステータスが発動する。

 倒したオーガに呪いが回っていると「五体の魔物を呪いにかけました。条件が揃います。呪い段階がレベル2呪い侵攻2になりました。配下の魔物を吸収します。吸収できる対象は選べます」

 ナーゼに聞いてみると「呪いが侵攻したみたいね、それぞれの魔法やスキル、特技スキルなんか吸収できるわよ」

「吸収できる対象が選べるなんてもしかしてクロウ達、獣人やエルフ小人族もできるのか」

「出来るわ、あなたの血肉になって、混ざりあうの、それは冗談だけど、分離は出来るわよ。合わさったほうが経験値はより多く得ることが出来るから呪いの良い所よね」

「私達も覚悟はあります、いつでも吸収してください」

 クロウ達が膝をつく。全員構わないようだ。

「いきなり仲間を吸収できないよ、ビッグスライム達はいいのかな?」

「昇陽様、すでに影で吸収されています。分離して呼び出してもさらに強くなるので文句はありません。どうぞお気になさらず、呪いの力を信じてください」

 私としては人間離れしていくのが正直怖い。

 光輝き手持ちの鏡を見ると、白い髪と青い眼をしている。額に角も生えている。

「戦闘時の影響ね、隠せるから心配しなくていいわよ。同期スキルで前の自分の姿を覚えているから大丈夫よ」

「呪い師の特徴なのかな、独自の技とかそういう感じかな」

 昇陽レベル50  呪い師レベル2

 HP6078        

 MP4352                   

 力578

 速さ780          

 体力1389        

 器用886       

 魔力2087        

 幸運0           

 スキル呪いレベル10

 スキル同期レベル10

 スキル夜目レベル10

 スキル鑑定レベル10

 魔法火、水、風、土、光、闇(呪われている)

 耐性呪いレベル10

 耐性物理攻撃

 耐性魔法攻撃

 特技スキル呪い霊召喚、呪い反射、死の呪い、呪い喰い

 特技スキル弾性、火炎の息

 特技スキル、壊疽毒、黒死病

 特技スキル悪食、悪知恵

 特技スキル再生、絶対防御

 特技スキル怪力、巨大化

 

 新しい特技スキル呪い食いを鑑定してみる。

 呪い食い――――呪いを内に納める。普通に戦える。呪いの力は出し入れ自由。


「これが呪い段階レベル2か、オーガも吸収して随分強くなったな」

 普段の黒髪、黒い瞳に戻る。

「ナーゼ、この世界の呪い師も悪役のボスみたいな能力しているのかな」

「数は少ないけど、同じような能力ね、根性が曲がっていたり、思想が偏っていたり、あまり、素直な人の力じゃないわ。昇陽みたいに力は強くないはずだけど、一応冒険者ギルドに登録できるはずだけど、嫌われているわね。精神的に、世を恨んで討伐対象になる人もいるわよ」

「そうか、本来は不幸な職業だね」

「町に帰りましょうか、退治してオーガの角は手に入れましたし、昇陽様がレベルアップしているからアンネさんも驚きますよ」

 クロウが冗談のように話す。

「レベル20からレベル50だからな、驚くだろうな」

 町に帰り、冒険者ギルドに行くと、何だかざわついている。正面に黒いドレスを着た、顔を黒いヴェールで顔を隠した二十代の若い女性が座っている。アンネさんに聞いてみる。

「昇陽様、あの方は呪い師なのです。モンスターを従属させ、吸収して強さを手に入れる。その代わり精神を病んでいき、自滅するそんな危険な職業ですが、呪い師の隠れ里を救って欲しいと登録と依頼が来ました。今ギルドで話し合っている所です」

「そ、そうですか、大変ですね、『近隣の村を襲うオーガ退治』のクエスト、オーガの角を持って来ました。報酬と交換してください」


「お疲れ様です、金貨百枚ですがお受け取り下さい。村々も裕福ではなくてお金を出し合っています。ぎりぎり出せる額でしょう。依頼をこなされる昇陽様は助かります。私は会議がありますのでまた」アンネさんは職場の奥に消える。

「あの、あなた、昇陽さん?私と同じ呪い師ですね、雰囲気でわかりますよ。それだけ濃い呪いを身に纏っているあなた達は町でも異質ですよ、少し話をしませんか?」

 黒いドレスの女性がいつの間にか近づいて話しかけてくる。カグヤが警戒している。

「ええと、ここではそれを言わないでください。私も事情があって召喚術師をやっています。話を聞くくらいいいですよ」

「そうですね、呪い師は嫌われていますから、酒場にでも場所を移しましょう」

 何だか高貴そうな雰囲気の女性である。

 いつもの酒場の奥で話を聞くことにした。鑑定スキルで呪い師レベル3とある。レベルは65ある。

「私はアイリンと言います。呪い師の族長の娘で、幼い頃からモンスターを従属させ吸収しています。呪い師の隠れ里は平和で、モンスターとも共存しています。世間一般の常識からかけ離れたくらいの平和で安全な里です。ドラゴンとも一緒に暮らしています。いい方で結婚を申し込まれるくらいです。それで相談ですが私と呪い師の隠れ里まで来ていただけませんか?報酬は金貨二千枚支払います。いかがでしょうか?」


「金貨二千枚!?それはいいですが、平和な里なら問題ないように思えますが、あなたの依頼は何ですか?」

「ドラゴンの子供が病気になって、それを私が従属させ吸収しました。しかし、私の呪いでも病気は改善できず、細胞が死んでゆくのです。完全に私に取り込まれる前にドラゴンの子供を治して欲しいです。治癒魔法も完全ではありませんし、私には呪いで魔法が効きません」

 アイリンはヴェールを取ると右側だけ龍の鱗で顔が覆われている。もう一度ヴェールを隠す。

「ドラゴンの子供が完全に死ねば、顔は元に戻ります。私の呪いは生まれつきかなり強くてドラゴンも吸収できますが、病気を治さなくては意味がありません。それには同じ呪い師が私レベルにドラゴンも吸収できるだけのレベルで、なおかつ癒しの手段が必要です。昇陽さんなら修行次第で、ドラゴンを吸収して癒しのモンスターを従属させ病気を治してくれると思います。いかがでしょうか、私は結婚相手を決めていますがそれ以外ではドラゴンの財宝が支払えます」

「現実的にドラゴンを倒すほど強くなれとその条件でいいですか?」

「その条件でお願いします。後一月ほどの命なのです、同じ呪い師として助けてもらえませんか」


「どうしようか?このクエスト受けてみる?ドラゴンが仲間に入りそうだけど」

「かなり手強そうだけど、いい機会だと思うわ。隠れ里は知らなかったけど、一度訪れてみるのもいいかもね」

「私達も人助けが出来るなら、昇陽様も力も増すようですしいいのではないですか?」

 クロウ達も賛成のようだ。

「ただ、隠れ里なので、呪い師以外の方は入れません。それは取り繕えますが、クエストもDクラスでは受けられません。最低Bクラスが必要だそうです」

「どうしようか、まだ私達はDクラス、レベル50あるから一度にBクラスの試験が受けられないか頼んでみようか?」

「駄目でもまず聞いてみましょう。冒険者ギルドに行ってみましょう」

 私達はまた冒険者ギルドに行ってみる。


「昇陽様、クエストを受けられますか?正直Dクラスでは荷が重いかと、え、レベル50ありますね。昇陽様いつに間にそんなに高いレベルに、Bクラスの試験ですか、受けられますが、ギルドマスターとの戦闘に勝たなくてはいけません。それでも受けられますか?」

「ええと、勇気を出して受けてみようと思います。報酬は金貨二千枚なので、ははは」

「ううん、自信があるようですね、いいでしょう。緊急性の事案から、『呪い師の隠れ里を救え』のクエストが発生しました。世界的にも良い貢献度です。ギルドマスターを紹介します。Bクラスの試験を受けられますね」

「はい、試験を受けます。よろしくお願いします」

「中庭にどうぞ、ギルドマスターがお待ちです。アイリンさんもご一緒にどうぞ」

 黄金の髪と瞳のアイデンさんが待っていた。

「やあ、あまり驚いていないみたいだね。私がこの町の冒険者ギルドマスターだ。ばれていたかな、早速Bクラスの試験を開始しよう」

 腰の剣を抜いて構える。「私から一本を取ればBランク冒険者だ。レベル50あるようだね。鑑定スキルでわかるよ。遠慮なくどうぞ」

 

 私は短剣を構える。仲間五人の能力と魔法は闇魔法しか使えない。モンスターの特技スキルで押していくつもりだ。アイデンさんが剣を早く鋭く打ちこんでくる、流石戦士レベル59ある。鑑定スキル10あるので呪い師とはばれていないみたいだ。怪力で剣を吹き飛ばす。ステータスもかなり上がっている。負けはしないはずだ。アイデンさんは『疾風斬はやてきり、二双にそう!!!』一度に二連撃して来る。絶対防御で剣を弾いていく。走りながら闇魔法を詠唱していく『暗き闇の永久の檻よ。敵を縛り動かすな』黒い檻がアイデンさんを縛る。拘束されるアイデンさん。『光よ、汝を縛る檻から解放せよ』光魔法の無効化で打ち消される。光魔法も当然の様に使うよな、一直線にアイデンさんに駆ける。ナイフを捨てる。一瞬不思議そうな顔をするアイデンさん、剣を鋭く操り兜割をして来る。右腕を掲げ受けとめる。弾性だ。残った左拳の怪力でアイデンさんの甲冑姿の胸をハンマーの様に打ち付ける。胸のあたりの甲冑がへこみ吹き飛んでいく。壁に強かに体をぶつける。力技だが喧嘩もしたこともない私にしては上出来だと思う。

「そこまで!!ギルドマスター大丈夫ですか?」

 アンネさんが駆け寄る。

「ぐふっ、人間の力ではないな、戦闘はレベル差ではないと言え、良く戦った。一本だ。Bクラス試験合格だ」

 カムイがアイデンさんに『ヒール』をかける。仲間達が拍手している。ナーゼも目の端に涙している。成長が嬉しいのだろうか?

 アイリンさんが「上出来ですね、呪い師としての資質があります」と小声で褒めていた。

 アンネさんが「すぐBクラスの冒険証を発行しますね。ギルドマスターから一本取るなんて殊勲賞ものですよ」機嫌よく建物の中に入っていった。

「あいたたた、年は取るものじゃないね。カムイ君『ヒール』ありがとう。昇陽君、その若さでBランク冒険者は珍しい。これからも奢らず頑張りなさい」

 アイデンさんもへこんだ甲冑姿で建物に消えていく。

「さすがでした、昇陽君、私のクエストを受けてくださいますね、手続きするので待っていて下さい」

「私達もいい経験になりました。クエストは受けますがドラゴンは倒せそうですか?」

「それは何とも、一度隠れ里に来て下さい。いい里ですよ」

 私達は冒険者ギルドで『呪い師の隠れ里を救え』のクエストを受けることにした。

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黒い猫人ナーゼと共に生きる異世界生活、呪われ子と災厄の騎士団、統合失調症から始まるチートな冒険譚 灰児 @hurusawa-99

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