第5話 今度は王宮主催のお茶会に招待されました

14歳に戻ってから、1ヶ月が過ぎた。すっかり侯爵家での生活も慣れた。やっぱり実家はいいわね。優しい両親に可愛い弟、何より皆私を愛してくれている。


王宮にいた時は、本当に愛のかけらもなかった。もう二度と、あの場所には戻りたくはない。今回の生では、とにかくのんびりと生活をしたいのだ。


そんな私の元に、リリアやミリアナがちょこちょこ遊びに来てくれる。もちろん、私も彼女たちの家に遊びに行っている。


こうやって彼女たちと過ごす時間も、私にとってはかけがえのない時間だ。さらに、なぜかライアンも我が家に定期的に訪ねてくるのだ。


騎士団に入団するまでは、毎日一緒に遊んでいたライアン。騎士団に入団してからは、ほとんど我が家に来ることはなかった。


ただいつも夕方に来て、お茶だけ飲んでさっさと帰るのだ。一体何をしに来ているのかしら?


今日も午前中はマナーレッスンをしたが、午後からは紅茶を飲みながらのんびり過ごしている。1度目の生の時は、夜会後お妃候補になる為、朝早くから夜遅くまでマナーのレッスンをしていた。


本当に、よくやっていたものだ。あれほどまで努力しても、結局手に入れたのは孤独な日々だった。本当にバカよね…


夜、家族で食事を摂っていると


「マリア、お前に王宮から招待状が来ている。今度はお茶会があるそうだ」


「お茶会ですか?今回は遠慮させていただきます」


王家のお茶会なんて参加したら、王妃様の長くつまらない自慢話を聞かされるのがオチだ。1回目の生の時は欠かさず参加していたが、今回の生まで王妃様の自慢話なんて聞きたくはない。


「そう言わずに、行ってきなさい。令嬢たちもたくさん参加するから、友人と一緒にいればいいだろう?」


お父様が行けと言っているのだ。断る事なんて出来ない。まあいいわ、極力王妃様には近づかない様にして、リリアとミリアナの側にいればいいわよね。


「分かりました。それで、お茶会はいつなのですか?」


「来週だ」


「来週ですって!随分と急ですわね」


「ああ…よくわからないが、王太子殿下たっての希望らしい。もしかしたら、気になる令嬢でもいるのかもしれないな」


あのヒューゴ様がか…でも、ヒューゴ様のお気に入りの男爵令嬢は、貴族学院に入ってから出会うはずだし…まあ、私にはどうでもいいわ。適当にやり過ごしましょう。


一週間後

朝からメイドたちに磨かれ、ドレスを着せられた。今日はピンク色のドレスだ。そういえば、一度目の生の時は、ヒューゴ様の瞳の色でもある、青いドレスを好んできていた。でも今は、絶対に青のドレスだけは着るつもりはない。


準備をしていると、別のメイドがやって来た。


「お嬢様、ライアン様が玄関でお待ちです」


「えっ、ライアンが?」


なんでライアンが来るのかしら?とにかくライアンの元に急ぐ。


「ライアン、急にどうしたのよ」


玄関に行くと、騎士団の制服を着たライアンが待っていた。


「よう、マリア。今日のドレスはピンクか。よかった…青じゃないんだな…」


よくわからない事を言っているライアン。


「私のドレスの事なんてどうでもいいわ。一体どうしたのよ」


「別に用があった訳じゃないんだけれどさ。お前今日、王宮主催のお茶会に行くんだろう?だから、ちょっと気になって…」


そう言って頭をかくライアン。あら、おかしいわね?


「ライアン、あなた騎士団の制服を着ている様だけれど、今日のお茶会は行かないの?」


「俺はいけないんだ。今回は限られた令嬢のみ参加できるお茶会なんだから…」


「なにそれ。限られた令嬢のみってどういう事よ」


「だから、お妃候補に名乗りを上げている令嬢たちが、今回のお茶会に呼ばれているんだよ!お前おじさんから何も聞いていないのかよ」


お妃候補に名乗りを上げている令嬢ですって…


「何よそれ…私は王族と結婚なんてするつもりはないわ…そもそも王族の方から、お妃候補を決める事は出来ないはずよ。令嬢から打診されて、初めて審査されるのだから!」


「そんな事俺だって知っているよ。ただ、王族だってある程度見極めたいんだろ。でも、お前がお妃候補になるつもりがないなら、別に問題ないな。それじゃあ、俺はもう行くから。また夕方来る」


どうしてまた夕方来るのかしら?


「別にもう来なくてもいいわよ」


「うるさいな。とにかく夕方また来るからな!」


そう言って去って行った。変なライアンね。それにしても、今日のお茶会、そんな目的があったなんて。でもお父様はリリアもミリアナも来ていると言っていたし、まあいいか。


とにかく、私もそろそろ出発しないと遅刻してしまうわ。


急いで馬車に乗り込み、王宮へと向かったのであった。

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