ダンジョン管理者に好かれました…~学校が作り出すダンジョン攻略~

銀月

第1話 奇妙な記事

伊上境子(いのうえ・きょうこ)、17歳。

海静高校に通う、俗にいうヲタクである。

最推しはフィガロファイナル(通称FFL)のメインキャラ・鬼街(おにまち)。

赤髪が特徴的なそのキャラクターを愛でることこそ、彼女の生きがいだった。

勿論他の漫画・アニメをチェックすることも欠かさない。

気になれば全て漫画を購入し、読破する。

そこからさらに気に入れば、ビデオやフィギュア、その他グッズなんかも集めてしまうものだから、伊上の私室は物で溢れかえっていた。

10帖ほどの高校生にしては広い部屋なのだが、それでもぎゅうぎゅう詰めである。

何とか中心に一人掛けの座椅子とCDプレーヤーを置き、そこで悦に入ったあとは居間で寝る生活となっている。

勉強机?そんなものは存在しない。ただのグッズ置きスペースと化している。

勉強など学校の図書室でやるだけで事足りるのだ。そんなものでヲタ活を邪魔されるのは、伊上には我慢ならなかった。

家族には進路を心配されるが、一応行きたい大学は決めている。

学力的に入れるのが現実的な、私立の文学部。

授業で唯一好きだったのが、現国だっただけの話だ。

趣味を仕事にしようとは思っていない。夢を与えられるほど演技力も創作力もないことは、伊上本人が一番分かっていた。


伊上は毎朝、朝刊に目を通す。

流し見にはなるが、中々面白いことが書いてあるときもある。

例えば、甲子園の致命的エラーで勝利を逃しただとか、左翼コラムニストがキャンキャン紙面で吠えていたりとか。

我ながら性格が悪いと伊上は冷や汗をかいた。

今日…1997年3月31日付けの一面には、奇妙な記事が上がっていた。

『全国各地の教育機関で行方不明者・再起不能者続出 いったい何が』

「…なにこれ」

そんな見出しで書かれていた記事をみて、思わず呆れ声を出してしまう。

記事によれば、全国の小学校~高等学校に異空間?ができ、そこに興味本位で近づいた生徒や教師が消息を絶つ。

数日するとそこから帰還する者もいるが、概ねが廃人のようになり、また特出した能力を持つ者はその未来を絶たれる身体損傷をして帰ってくる。

勿論、行方不明のままになる生徒も多いとのことだった。

学校側は措置として校内進入禁止・調査期間を設けたが、外部の人間が調べると何も起こらないらしい。

これは一足早いエイプリルフールか?と伊上は眉を撫でた。

あまりにも眉唾物で、信じがたい。

その件が起きている学校の評判を下げる?いや、そんな露骨なことはしないだろう。

とにかく不思議だ。

まあ、話の種にはなるだろう。

伊上はテーブルに朝刊を置いて、登校するのだった。




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